三菱樹脂はこのほど、ピッチ系炭素繊維『ダイアリード』を使用した、世界最長クラスのクロムめっきカーボンロールの開発に成功した。
同社は、1990年にロール専門メーカーのサンレイ工機と共同でカーボンロール事業を開始し、以降、より高性能なカーボンロールを開発してきた。産業用ロールはフィルムや紙、不織布の製造ラインなどで使用されるが、中でも比重がアルミの約3分の2と軽く、鉄以上の剛性を有するピッチ系炭素繊維のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用いたカーボンロールは、軽量化や小径化、たわみの低減、慣性モーメントの低減、危険回転数アップ、振動抑制などの点で優れた効果を発揮する。
三菱樹脂が今回開発したクロムめっきカーボンロールは、9.2mもの長さがありながら、外径は350㎜と非常に小径で、総重量を約400kgに抑えることに成功した。また、毎分2,000mの高速回転時でも、ロールの振れ(動フレ)は0.08㎜以下という優れた安定回転性能を実現。同じスピードで安定回転が可能なロールを鉄で製造した場合、通常、その外径は約1mとなり、総重量は4tを超える。今回のような長尺、軽量かつ安定高速回転が可能なロールは、三菱樹脂とサンレイ工機の技術とノウハウが結実した結果。
世界トップクラスのカーボンロール製造技術を持つ三菱樹脂の製品でも、過去最長のクロムめっきカーボンロールは6.5mで、今回はそれを大きく上回る世界最長クラス。このロールを使用することで、回転に必要な消費電力を大幅に削減できるようになる。フィルムや製紙の製造現場では、生産ラインの広幅化は生産効率の大幅な改善につながるため、長尺カーボンロールの需要は今後も伸びると見込まれている。同社では、「ピッチ系炭素繊維およびカーボンロールのトップメーカーとして、今後も生産効率改善につながるカーボンロールの開発に注力する」と述べている。
株式会社 紙業タイムス社 「Future2/25号」より