日本製紙と日本野鳥の会は、日本製紙が北海道釧路地方に所有する森林(約1,986ha)について、国の天然記念物で絶滅危惧種でもあるシマフクロウの生息地保全と同社の木材生産事業を両立させる基準を定めた覚書を締結した。

　日本製紙と日本野鳥の会は2010年10月、北海道根室地方の同社社有林（約126ha）について、「日本製紙野鳥保護区シマフクロウ根室第3」を共同で設置する協定を締結し、シマフクロウの保護を目的とする活動を行ってきた。その過程で相互理解と信頼関係の醸成が進み、今回新たな覚書の締結に至ったもの。

　覚書の対象となる森林は、木材生産を目的に日本製紙が長年所有してきた森で、2005年にはSGEC森林認証を取得している。同社と日本野鳥の会は、2011年に林内の間伐跡地でシマフクロウの繁殖が確認されたことを受け、協働でシマフクロウの行動圏を調査。その結果を元に重要な範囲132haを抽出し、森林施業がシマフクロウの繁殖に影響を与えないよう、覚書に営巣木周辺の施業ついて具体的な基準を明文化した。範囲内での施業規模や時期を限定することで、シマフクロウの繁殖に与える影響を回避する。

　森林施業を継続しながら絶滅危惧種の野鳥を保全するという共同活動は、日本野鳥の会にとっても初めての試みであり、「シマフクロウの生息地を保全しつつ持続可能な林業を行うこの取組みは、今後のシマフクロウ保護の新たな仕組みとなる」と、大きな期待を寄せている。

 

株式会社　紙業タイムス社　「Future5/25号」より