日本紙パルプ紙加工産業労働組合（紙パ連合、宮嵜孝文委員長）は1月21～22日、東京都内で第23回中央委員会を開催。当日は中央委員40名/役員17名をはじめ、総勢107名（女性特別中央委員9名含む）が参加し、2016春季生活闘争方針を全会一致で確認した。
宮嵜委員長は冒頭、2016春闘について「厳しく難しい交渉になるとは思う。しかしながら需要の下げ止まり、回復のためには経済の好循環実現が不可欠であり、労働組合の役割である組合員の生活を守り、向上させるためにも、『各要求の正当性』『生活実態』『組合員の持ち場立ち場での頑張りに報いる』などを主張しながら、交渉を進めていかなければならない。労働人口減少に伴う人材確保といった観点からも、今春闘は大変重要な位置づけにあることから、これまで以上に紙パ連合全体の連携を強化し、組織一丸となって取り組んでいくことが重要」などと述べた。
今回、紙パ連合が打ち出した統一要求の具体的内容は次の通り。
【賃上げ】
①すべての組合は賃金カーブ維持分（定昇）を確保した上で、実質賃金の低下につながらないように、所定内賃金を中心に生活改善に取り組む。
②生活改善の範囲は、月例賃金の改善を念頭に置いた上で所定内賃金を基本とするが、あらゆる労働諸条件を精査し、取り組みを進める。
③生活改善分として、消費者物価上昇分などを加味し2,000円以上とする。
＊賃金カーブ維持分の把握可能な組合…賃金カーブ維持分を確保し、生活改善分2,000円以上。
＊賃金カーブ維持分の算定が困難な組合…賃金カーブ維持相当分として、5,000円（格差是正分含）＋生活改善分2,000円以上の7,000円以上。
④個別賃金要求方式で取り組む組合は、各銘柄個別（ポイント）賃金水準を参考に格差などを追求し、要求に向けた水準を検討した上で具体的な要求額については、生活改善分も念頭に置く。
⑤平均賃上げ要求方式で取り組む組合は、生活改善分を基本に要求額を設定していく。
【一時金】
＊年間集約要求…基準とする賃金の5.0ヵ月を中心とする。
＊期毎要求…基準とする賃金の2.5ヵ月を中心とする。
製紙連労務部会に「真摯な対応」申し入れ
紙パ連合は確立したこの方針に基づき、1月26日に日本製紙連合会労務部会に対する毎年恒例の申し入れを行った。
当日は製紙連労務部会から出席した黒川勝己委員長（王子マネジメントオフィス）をはじめ落合副委員長、生方部長、寺坂部長代理らに対し、紙パ連合の宮嵜委員長、橋本・陣内・山本・清水・佐藤の各副委員長、神田書記長らが要求の趣旨や内容などを説明した。
冒頭、宮嵜委員長は2016春闘の方針決定に至るまでの経過について触れた後、「厳しい産業・企業状況が続いている中、組合員は企業基盤の確立や収益確保に向け、さまざまな会社の諸施策に対して精一杯の協力・努力を行ってきている。その組合員の頑張りに応え、また今後の労働力人口が減少する中で人材確保といった観点からも、今次春闘は大変重要な位置づけにあることを十分認識した上で、経営対応が必要である」などと述べた。
続いて神田書記長が「基本的な考え方として、組合員の日々の懸命な協力・努力に応え今後の働きがいにつなげるために、賃金・一時金をはじめとする労働諸条件の向上を求める。現状の産業・企業を取り巻く環境が厳しく、先行き不透明な状況にあることは認識しているが、この厳しい状況を乗り切るためには企業基盤を支える『人への投資』が必須であり、組合員の働く意欲や活力の高揚を図ることと併せ、マクロの視点からは『デフレからの脱却』『経済の好循環実現』に向けた社会的役割も求められており、経営側の真摯な対応を要請する」などと申し入れた。
これに対して製紙連・黒川委員長は、「当労務部会は交渉する立場にないが、今回の申入れ内容の主旨を会員会社に伝えていく」と前置きした上で、次のように所見を述べた。
☆賃金について；「中国などアジア諸国で賃金水準が上昇しているとはいえ、わが国産業・企業が熾烈な国際競争を勝ち抜いていく上で、賃金水準の高さが依然として大きなハンデイキャップとなっているのは事実。紙パ産業においてもアジア勢との熾烈な競争に打ち勝っていくため、比較競争力の確保が至上命題であり、そうした観点から賃金も含めアジア勢に対する比較競争力をどう確保するのか、労使が互いの立場を尊重し信頼関係を深めつつ、徹底した議論を尽くしていただきたい」
☆一時金について；「従来から申し上げているように、一時金については業績の反映度合いが強く、成果配分の考え方が定着しつつある中で、すでに各社労使がその主旨に則り交渉されてきている。今次交渉においても現状を十分認識の上、賃金との関係も踏まえつつ相互理解のもと、労使が話合いにより円満に解決されることを期待している」
株式会社 紙業タイムス社 「Future2/15号」より
