王子ホールディングスはこのほど、ポリカーボネート樹脂とセルロースナノファイバー(=CNF)を組み合わせることにより、従来よりはるかに高い特性(高弾性率と低線熱膨張係数)を持つ複合材の開発に成功した。
ポリカーボネート樹脂は、軽量かつ優れた透明性と耐衝撃性により、自動車用ライトカバーや電子デバイスの筐体、レンズ材などに用いられている。しかし、外部からの力に影響されやすく、熱で変形しやすい特性から、ガラスのような安定した形状や寸法が厳しく求められる用途では、応用範囲が限られていた。
王子HDは、ポリカーボネート樹脂と高透明度の完全CNF(繊維径3~4nmのCNF)を組み合わせることによって、ポリカーボネート樹脂の透明性を維持したまま、弾性率を従来の約4倍(最大9GPa)まで向上させ、かつ線熱膨張係数を従来の約3分の1(25ppm/℃、アルミニウム並み)まで低減させることを可能にした。これにより、これまで難しかった、ガラスからポリカーボネート樹脂への代替拡大や新規用途への展開が期待でき、軽量化や断熱性向上といったガラスにはない効果が見込める。同社では今後、成形メーカーと協議を進め、数年以内の実用化を目指し、用途開発を進めていく考え。
株式会社 紙業タイムス社 「Future4/2号」より