王子製紙研究開発本部基盤技術研究所はこのほど、画像出力時の波うち現象（コックリング）を抑えた紙基材のワイドフォーマット用インクジェット（＝IJ）用紙を開発した。
　グラフィック用、POP用、写真用、印刷校正用などで大判用紙に出力する場合、ワイドフォーマット用IJプリンターが使われるが、ワイドフォーマット用プリンターは用紙に大量のインクを滴下する。このため、一般に紙基材のIJ用紙ではインク溶媒が原紙まで浸み込み、コックリングと呼ばれる波うち現象が発生、印字中にIJノズルと用紙がこすれるトラブルをしばしば引き起こす。これを防ぐため、従来は出力用にRC（樹脂層コート）品や合成紙品あるいは厚手用紙が使用されてきた。
　基盤技術研究所が開発したのは、紙基材でありながらコックリングを起こさずに画像出力できるIJ用紙。原紙表面のインク受容層でインクを速やかに吸収・定着させると同時に、インク受容層から原紙へのインク溶媒の浸透を抑制する技術の確立により、コックリングを起こさない紙基材IJ用紙の開発に業界で初めて成功した。
　製品は「セミグロス紙」と「マット紙」の２銘柄。これらは紙基材なので、RC品や合成紙品に比べて折加工適性に優れ、取り扱いやすい。また、セミグロス紙は印刷用紙に近い風合いで、印刷校正用紙としても適している。RC品や合成紙と違って紙基材なので、リサイクルが可能な環境に配慮した用紙とも言える。
 

株式会社　紙業タイムス社　「Future　12/6号」より