大日本印刷はこのほど、切る、折り曲げる、引っ掻くなどの圧力を印刷面にかけるとインキが発光する「応力発光印刷」を開発し、世界で初めて実用化。偽造防止効果を高める技術として金券などに応用し、10月から量産を開始した。
偽造防止印刷は、真贋判定を機械で行うものと目視で行うものに大別できるが、機械を使わない目視判定の偽造防止印刷は、どこでも手軽に確認できる一方、悪意の第三者による模倣の対象となりやすく、常に新しい技術が求められる。同社はこれまでも、模倣が極めて困難な人工DNA(デオキシリボ核酸)を含有した人工DNAインキや各種ホログラムなど、さまざまな偽造防止印刷技術を開発し、これらを組み合わせて高い偽造防止効果を備えた商品券やチケット、カードなどを販売してきた。今回の「応力発光印刷」は、目視によって真贋判定する偽造防止印刷の新技術で、堺化学工業の応力発光性(圧力がかかることによって光を発する性質)を持つ顔料を使用したインキを開発することで、世界で初めて実用化に成功した。
応力発光印刷は、ひずみが生じると発光する特殊な分子構造を持つ応力発光体を活用したもので、圧力がかかった時だけ発光し、元に戻せば消えるという特徴を持つ。数分ほど印刷面に光を照射した後、暗い場所で印刷物を切る、折り曲げる、引っ掻くなどの圧力をかけると、緑色の光を発する。また、太陽光や蛍光灯などを照射した後、暗い場所に移動しても、しばらく残光が生じる“燐光性”もある。この応力発光や燐光によって、真贋が判定できるというわけだ。耐水性や紙への加工適性も備えており、印刷色は無色。応力発光印刷の加工コストは、通常の印刷1色分の価格に対して+10%程度を予定している。
大日本印刷は応力発光印刷を、ミシン目を切ったり、折り曲げたりした時の光を確認して真贋判定するチケットや、アイキャッチ効果を高める商業印刷物、雑誌付録などへ提供していく考えで、今後も用途開発と市場開拓を進めていく。また、応力発光や燐光を使って機械で真贋判定する方法と判定機の開発なども検討していく考え。
株式会社 紙業タイムス社 「Future11/3号」より