王子製紙の基盤技術研究所はこのほど、塗工工程における微量な水分量をオンラインで高精度に安定して測定する技術を開発した。
同社では当初、水分量の測定には赤外線方式の水分計を採用していたが、長期的にやや不安定な面があること、周りの熱源の影響を受けることなど、微量な水分を高精度に測定するには問題があった。そこで、基盤技術研究所は水の誘電物性に着目し、独自に開発したマイクロ波共振器とネットワークアナライザを組み合わせることによって、塗工した製品に含まれる微量な水分を安定的かつ高精度で測定することに成功した。
水の誘電損失率は13(3GHz、室温)と非常に高く、PETフィルムの0.012と比べて1,000以上大きいため、僅かな水分の変化でも試料の誘電損失率が大きく変わる。この誘電損失率をネットワークアナライザと独自のマイクロ波共振器を用い、共振カーブのピークレベルの変化として捉えることによって、微量な水分量をオンラインで高精度に検知することが可能となった。
また、当初の赤外線による方法は水分子の水素原子と酸素原子間の振動によって赤外線が吸収される共鳴吸収であるのに対して、マイクロ波による方法は水分子の双極子がマイクロ波電界の変化に追随できなくなって生じる緩和吸収によるものであり、後者の場合は周囲の熱源の影響を受けないので、安定した測定ができる。
株式会社 紙業タイムス社 「Future 11/8号」より