森林総合研究所の調べにより、スギの落葉はコナラやマツと比べて大気中の窒素を50倍以上も多く固定することが分かった。
窒素は生物の成長に不可欠な養分であり、窒素固定は森林の生産性を維持するために重要だ。また、スギは日本の人工林面積の約43%に植栽されており、これは日本の全森林面積2,510万haの17.8%に当たる。
スギの落葉は、その分解のある段階で大気中の窒素を固定する能力が顕著に高くなる。これは、分解するスギの落葉で窒素固定菌が増加するためだが、この現象が他の樹種でも同様に起きるかどうかが不明だった。
そこで森林総合研究所は、低山帯地域で普通に見られるアカマツおよびコナラの落葉についても窒素固定活性を測定し、スギ落葉との比較を試みた。調査は、茨城県東茨城郡城里町にあるスギ人工林とその上部の落葉広葉樹林で、スギ、アカマツ、コナラ落葉をそれぞれ別のナイロン製網袋に入れて林床に接地し、それらを定期的に回収して、窒素固定活性を測定するという方法で行われた。
その結果、スギ落葉の窒素固定活性は、スギ落葉をスギ人工林に設置した場合だけでなく落葉広葉樹林に設置した場合でも顕著に高く、設置後19ヵ月目には、設置後3ヵ月目に比べて約200倍にまで上昇した。一方、コナラやアカマツ落葉は、落葉広葉樹林およびスギ人工林のいずれでも、窒素固定活性は4.4~1.3倍程度にしか上昇しなかった。これらのことから、窒素固定活性の上昇はスギ落葉に特異的な現象であることが分かる。森林総合研究所では、今後さらにさまざまな樹種について、窒素固定活性を測定する予定。
また同研究所では、「本研究によりスギ落葉における窒素固定が森林の生産性の維持と持続的利用に活用できることが分かった。今後はスギ落葉の窒素固定プロセスを解明するとともに、スギ人工林における窒素循環過程を解明して窒素固定による窒素供給への寄与率を評価していく」としている。
株式会社 紙業タイムス社 「Future 12/6号」より