レンゴーの大坪清社長が雑誌『経済界』の巻頭コラムへ定期的に執筆することになり、このほど初回の7月19日号が上梓された(写真)。
「視点 Key Factor for Success」と名づけられた同コラムは毎号、雑誌の顔とも言える本文の1頁目に掲載され、大坪氏のほか海江田万里(衆議院議員)、北川正恭(政治学者)、茂木友三郎(キッコーマン会長)、清田瞭(大和証券グループ本社会長)、平沼赳夫(衆議院議員)の各氏が交代で担当する。
大坪氏の初回原稿は東日本大震災とその復興について言及したもので、タイトルは「『百万一心』で復興、再生を」。百万一心は「戦後時代の武将、毛利元就が吉田郡山城築城の際、人柱の代わりに用いた石碑に書かれていた言葉で、“一日一力一心”とも読め、『皆で力を合わせれば何事も成し得る』という意味である。これは、ケインズの言う“アニマル・スピリッツ”にも通ずると思っている。すなわち明るく、陽気に、逞しく、ということだ」(大坪氏)
そして「東北の人たちの故郷への愛着は非常に強い」としたうえで、ドイツの社会学者テンニースが説いたゲマインシャフト(地域共同体)とゲゼルシャフト(利益共同体)を解説、「東北はゲマインシャフト的な地域、血縁に基づく地域共同体が脈々と息づいており、復興に当たっては、その視点からの配慮が必要となろう。企業経営においてはもちろんだが、政府にはこの点への配慮がいささか欠けているきらいがある」と苦言を呈す。
また被災を受けた自社仙台工場について、いち早く内陸部での再建を決断した理由を次のように説明している。「大震災発生後、何よりもまず人命尊重を第一に復旧、復興に取り組んできたが、人命の次は人心の安定が必要だ。それは何よりも雇用の確保であり、新工場を即座に建設するという決断を下したのも全従業員の人心安定が念頭にある」
このほか震災復興に当たっては「資本生産性、労働生産性といった数値に表せる部分に加え、経営者のマインドや従業員のモチベーションという心に関わる部分がとても重要になってくる」としているが、これは関西生産性本部の会長という自らの立場を念頭に置いた指摘だろう。
株式会社 紙業タイムス社 「Future 8/1号」より