日本製紙と栃木県は、2006年から高品質なニホンナシの安定生産に関する共同研究を進めていたが、このほど、苗が良好に生育し、かつ近年の課題であった果実生理障害を低減させる生産技術を開発した。
ニホンナシの品種は、「幸水」や「豊水」がよく知られており、この2品種で全国のニホンナシ生産量の60%以上を占める。栃木県は主要産地だが、植え付けから30年以上が経過した樹木が多く、高樹齢化による品質と収量の低下が問題となっていた。ニホンナシの苗は接ぎ木で供給されており、野生種であるヤマナシやマメナシの種子由来の苗を台木としている。種子由来の苗は遺伝的に多様なため、「幸水」や「豊水」などの接ぎ木苗の生育がバラついたり、果実生理障害が起こるなどの問題があった。特に近年は、夏の異常気象により果実生理障害が多発するようになり、問題の克服が求められていた。
そこで、日本製紙の発根技術である光独立栄養培養技術を用いてニホンナシの挿し木増殖に取り組んだところ、「幸水」や「豊水」の発根率は60%以上に改善され、挿し木苗を効率的に生産できるようになった。さらに栃木県農業試験場で、これらの挿し木苗を「盛土式根圏制御技術」を用いて栽培した結果、従来の接ぎ木苗と比較して、苗の生育が良好でよく揃っていること、また「豊水」では果実生理障害の発生低減が確認できた。
日本製紙と栃木県は今後、今回開発した技術の適用・拡大を図り、ニホンナシの有用品種の普及を促していく。
株式会社 紙業タイムス社 「Future 10/10号」より