タイで水処理システム受注

　王子ホールディングス（＝王子HD）はこのほど、タイのシンサコン工業団地の淡水化水処理システム（工業用水向け）を受注し、運用を開始した。

　バンコク近郊にあるシンサコン工業団地の水源は、工場排水や緑藻類、塩分など、さまざまな成分の混ざる溜め池。工業用水を製造する際には、汚濁物の除去や淡水化など、いくつものプロセスが必要で、これまではそれぞれのプロセスに大規模な装置を設置していた。しかし今回、独自の薬品処方と王子製品の『OJI－MEMBRANE』（写真）を組み合わせることにより、コンパクトかつ低コストで品質の高い工業用水を製造できるようになった。王子が納入した同システムはこの2月から稼働しており、現在は計画通り3,600/日の処理能力で安定運用されている。

　王子HDは、「今後も同システムの普及を目指すとともに、日本だけでなく新興国の水環境への貢献を通じて、新たな水処理の革新的技術を提案していく」としている。

 

王子製の国産「甘草」が高級化粧品の原料に

　また、王子HDはこのほど、同社が栽培した「甘草（カンゾウ）」が、高級化粧品を製造販売するアルビオン社の化粧品原料として実用化される見通しがついたことを発表した。写真は北海道の王子HD農場（左）と甘草の根（右）。

　王子HDはかねて、資源枯渇の懸念から中国が薬用植物を輸出規制している現状を踏まえ、国内栽培技術の確立に取り組んできた。また、アルビオン社と共同で、国内栽培の甘草から抽出精製された主要成分「グリチルリチン酸ジカリウム」の、化粧品原料としての開発も進めていた。

　グリチルリチン酸ジカリウムは、甘草の根から抽出精製される薬効成分の1つで、漢方薬などの医薬用のほか医薬部外品原料・化粧品原料・甘味料としても幅広く使用されている。アルビオン社では今後、化粧品原料成分のトレーサビリティーを一層強化する活動の一環として、商品化の検討を進めていく予定。

　王子HDは、化粧品だけでなく漢方薬への使用にも取り組んでおり、すでに栽培を進めている甘草以外の薬用植物も含め、「国産の品質や安全性、トレーサビリティーなどを重要視する企業とともに、新たなビジネスを構築していきたい」と述べている。

 

 

株式会社　紙業タイムス社　「Future5/15号」より