印刷学会出版部が発行する月刊誌『印刷雑誌』が、月刊誌としては珍しい創刊100周年を迎え、このほど記念特集号を上梓した。

　現在発行されている『印刷雑誌』は、1891年（明治24年）に発行された初代『印刷雑誌』（1910年廃刊）を引き継ぎ、新たに1918年5月号を創刊号としてスタート、その時代の最新印刷技術を紹介し、国内外の産業動向を伝えてきた。1946年（昭和21年）からは、日本印刷学会の機関誌としても印刷産業の発展に貢献している。

　初代『印刷雑誌』が創刊された1891年は、日清戦争が勃発する3年前、殖産興業・富国強兵をスローガンに日本が世界に向けて発展し、印刷業界も飛躍していこうとする時代だった。そして、現在につながる2代目『印刷雑誌』がスタートした1918年は、3年前に勃発した第1次世界大戦（1918年終結）のため、日本は軍事品の輸出とアジア進出によって空前の好景気に沸いていた。その後、第2次世界大戦を経て1946年、『印刷』に改題されたが、1958年に旧名の『印刷雑誌』に戻り現在まで継続している。

　月刊誌で100年以上続いているものは少なく、『印刷雑誌』以前に創刊され現在も発行されている月刊誌は、『新潮』（1904年創刊、新潮社）、『月刊福祉』（1909年創刊、全国社会福祉協議会）、『週刊ダイヤモンド』（1913年月刊として創刊、ダイヤモンド社）など。

　記念特集号には、印刷業界をはじめ関係各界の有識者が祝辞を寄せた。以下に、馬城文雄・日本製紙連合会会長の祝辞を抜粋して紹介する。

馬城文雄・日本製紙連合会会長…印刷と紙は、15世紀の活版印刷発明以前の木版印刷の時代から、切っても切れない絆で結ばれている。最近は、電子媒体のウェイトが急速に高まり、紙の媒体は押され気味。街にはスマートフォンやタブレット端末があふれ、とりわけ若い世代は新聞、書籍、雑誌といった紙の印刷物から、費やす時間も支出も奪われた感がある。しかし紙に印刷された情報は、一覧性という特性に加え、手にした時の紙の風合いによる印象の深化や、求めていた情報のほかにも興味を誘うといった、電子媒体では得がたい特性を持ち併せている。製紙業界としては、安定的な供給に不断の努力を払うとともに、品質面でも時代のニーズに応えられるよう、開発、研究に取り組んでいる。電子媒体の持つ利便性など、その特性は率直に認めるところであり、そのため、今後両媒体がそれぞれの特性を生かし、人々の暮らしをより豊かにすることが望ましいと考えている。引き続き、よりよい紙を提供することによって、その実現に貢献したい。

■『印刷雑誌』…▽1918年創刊▽B5判・横組み▽カラー64頁、モノクロ32頁▽本体1,400円＋税（定期購読16,800円＋税、送料無料）▽編集人：中村幹▽発行：㈱印刷学会出版部

 

株式会社　紙業タイムス社　「Future１/１５号」より