日本製紙が江津工場（島根県江津市）で製造するセルロースナノファイバー（＝CNF）『セレンピア』が、島根県出雲市の老舗和菓子店「坂根屋」の和菓子に採用された。

　日本製紙は、長い製造・販売実績を持つカルボキシメチルセルロース（＝CMC）を基に、独自のCNF（CM化CNF、製品名『セレンピア』）を開発し、2017年9月の量産開始以降は食品や化粧品で広く採用されつつある。特に食品への添加は、気泡安定性による「ふんわりもっちり」「しっとり」という食感の向上のほか、チキソ性・低曳糸性による作業性の向上、水ようかんなどの沈殿抑制、食品の品質維持期間の延長など、一つの素材でさまざまな効果を発揮するため、今後も採用拡大が期待されている。

　明治5年（1872）創業で約140年の歴史を持つ坂根屋は、代表銘菓「宿禰餅（すくねもち）」のほか、出雲大社の門前町で好評の「ぜんざい餅」などで知られる老舗。厳選した地元産の原材料を使用するお菓子づくりを続けており、江津工場の『セレンピア』は、品質向上効果が認められたことに加え、「地産地消」、「人と人とを結ぶ笑顔の輪を広げる」という商品コンセプトにも合致し採用となった。『セレンピア』が採用された「桜クレープ」と「生どら」は、坂根屋の各店舗で販売中。

 

　なお、日本製紙の『セレンピア』には3タイプがあり、それぞれの製造拠点と主な用途分野は次の通り。同社では、今後も幅広い産業分野での用途開発を進めていくとしている。

◎TEMPO酸化CNF…石巻工場（宮城県石巻市）、工業全般

◎CM化CNF…江津工場（島根県江津市）、食品・化粧品など

◎CNF強化樹脂…富士工場（静岡県富士市）、構造材料（自動車・家電など）

 

株式会社　紙業タイムス社　「Future5/20号」より