奈良県の紙商、ペーパルはこのほど、廃棄されたお米を活用してできた紙『kome-kami』(コメカミ)を開発、4月14日からクラウドファンディングのwebサイト「Makuake」で、『kome-kami』で作られたノートや名刺の販売を開始した。売上げの一部はフードバンクに寄付される。
『kome-kami』は、有償廃棄される直前の災害用備蓄米や、食べられないお米をパルプに配合した紙。独特な質感が特徴で、紙そのものが持つ風合いにお米の質感が加わり、ラフでありつつしっとりとした、相反する表面を実現した。色は、採れたての艷やかなお米をイメージしたナチュラルな白。
現在、日本のフードロスは年間646万tにのぼるが、賞味期限切れで廃棄される災害用備蓄食品は、この646万tにカウントされていない。総務省によると行政機関の63.8%が備蓄食料を廃棄しており、毎日新聞社のアンケートによると、47都道府県と20政令都市で2010年から15年に3億円の備蓄食料が廃棄されている。ペーパルでは、この“廃棄されるコスト”を“価値あるもの”に変え、売上の1%をフードバンクに寄付することでフードロス削減に寄与すべく、『kome-kami』を開発した。
開発に当たっては、まず賞味期限切れの備蓄米、破砕米、くず米、酒蔵などで出る米の削りカスなどを回収。これを「紙」にするため全国の工場に掛け合ったが、否定的な意見が多く難しさを痛感したという。粒を小さくする、米を炊く――など、多くのアイデアを繰り返し試す日々が数ヵ月続いたあと、粉砕のやり方によってはできると信じてさまざまな粉砕工場を回ったところ、かなり細かく粉砕できることが分かった。そして、ようやく米を使った紙の生産に成功し、表面に独特な風合いが浮かんだ、質のよい紙となった。
同社では今後、パンフレットや封筒、名刺、紙袋・箱、ノベルティ用ノートなどを用途に想定し、SDGsの取組みの一環として企業や自治体に拡販していく方針。また、全国のフードバンクへ広く支援できるような仕組み作りも進めていく。
◎Makuake
https://www.makuake.com/project/kome-kamiでkome-kami
◎『kome-kami』製品サイト
https://foodlosspaper.com/kome-kami
株式会社 紙業タイムス社 「Future5/10号」より