大日本印刷（＝DNP）とトーハンは、生活者起点の出版流通改革に向けて具体的な取組みを開始する。返品率を下げて廃棄を極小化し、環境に配慮した出版流通基盤の構築を目指す。

　出版流通界では、各社の収益改善努力などにより、一部に返品削減などの改善効果が表れ始めているが、市場全体の売上減少は続き、またネット通販拡大に伴う物流逼迫と相まって、出版流通全体の変革が求められている。こうした状況に対しDNPとトーハンは、次の4つの改革を実施して出版流通基盤を再構築することで、読者の購読機会を拡大するとともに、出版流通各社の収益改善につなげていく。

《4つの改革》

①製造・物流改革…製造と物流の連携による適時・適量の配本体制の確立

②情報流通改革…読者の需要情報（注文・購買）や書店・出版社の在庫を共有する情報基盤の確立

③商流改革…需要に応じたマーケットイン型販売体制の確立

④販促改革…書店の顧客向けマーケティング力の強化、新たな読者獲得手法の提供

《具体的な取組み》

◆これまでDNPが丸善ジュンク堂書店と共同で整備してきた書籍流通センター（SRC）を、新たにトーハン桶川SCMセンター内に設置し、トーハンの倉庫・物流機能と連携して、①製造・物流改革を推進。設置時期は2022年夏～秋を予定。

◆また、1冊から製造可能なDNPの書籍製造一貫工場（白岡工場）との連携強化や、出版社倉庫との連携拡大により、②情報流通改革として適時・適量の配本を実現。

◆これらの取組みを土台に、③商流改革の一環として、読者ニーズを起点とした共同仕入を進めるとともに、④販促改革として書店での販売力向上を図る。

◆まず、トーハンおよびDNPのグループ書店でテストを実施し、その後、両社グループ以外の書店の参入を促進して全国規模での出版流通改革の実現を目指す。

　DNPとトーハンの取組みには、すでに複数の企業が賛同しており、出版社ではオーム社、偕成社、河出書房新社、新星出版社、ポプラ社、有斐閣などが、書店では三省堂書店が参画の意思を表明している。

 

株式会社　紙業タイムス社　「Future8/9号」より