現在、パルプ製法の主流となっているKP(Kraft Pulp)法では、木材チップを薬品で煮溶かし(蒸解)、木材繊維(セルロース)を取り出す。その際、木材繊維を固めていたリグニン・樹脂成分と蒸解薬品が混じった液体を濃縮したものを黒液と呼ぶ。木材の50%は木材繊維であり、これがパルプ原料となるが、残りの50%を占める黒液は化石燃料の代替エネルギーとして以前から紙パルプ工場で使われてきた。黒液のカロリーは重油の2分の1?3分の1程度あり燃焼させることができるので、回収ボイラーと呼ばれるボイラーで燃焼させて蒸気を発生させる。その蒸気でタービンを回し発電するが、圧力の下がった蒸気は抄紙工程に送られ紙の乾燥にも使われるため、無駄なく効率的な利用が行われている。また燃焼させた後の灰を集めることにより、蒸解時に使った薬品も98%以上が回収され再利用される。
CO2を発生させる化石燃料は地球温暖化の原因とされているが、黒液は太陽エネルギーを蓄えた生物由来のエネルギーであり、燃焼時のCO2排出量は植物生長時の光合成によるCO2吸収量に等しいので、カーボンニュートラルなバイオマスエネルギーとして扱われる。資源エネルギー庁が集計する「総合エネルギー統計」において、黒液は風力や太陽熱、廃棄物などとともに非化石由来の再生可能エネルギーに区分されている。
出典:「知っておきたい紙パの実際2009」株式会社紙業タイムス社