現代美術作家「永田哲也さん」日本の祝いのかたちを和紙に写す「和菓紙」|vol.30 2017 WINTER|TSUNAGU WEB

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vol.30 2017 WINTER 日本の祝いのかたちを和紙に写す「和菓紙」

日本の祝いのかたちを和紙に写す
永田哲也さんの「和菓紙」

艶やかな和紙に浮き上がる、福々しいモチーフたち。
これらは、かつて和菓子づくりに使われていた木型を、和紙でていねいに写し取ったもの。
美術作家・永田哲也さんの「KIOKUGAMI 和菓紙三昧」と名付けられた作品の数々は、
木型職人の優れた意匠、和紙ならではの特性、作家の感性という
3つを組み合わせることで、日本の伝統文化を表現した現代アートです。
往時の職人が木型に込めたアイデアや精巧なノミ跡が活かされた作品の
軽やかな質感と優しい風合いの中には、
古くから大切な人の幸福を願う、日本人ならではの祝いの記憶が詰まっています。

現代美術作家 永田哲也 (ながた てつや) さん
現代美術作家
永田哲也 (ながた てつや)さん

1959年大阪府生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。作品の主なテーマは、「時間」と「空間」。ものごとの現実的な表皮を和紙に採取し、そこに内包された記憶・イメージを視覚的、触覚的に表現する三次元の立体、エンボス作品を制作する。美術館やギャラリー展示のほか、インスタレーション、ディスプレイ展示へと活動領域を広げ、近年は「日本の記憶」をテーマにした「和菓紙三昧」シリーズを発表。インテリアコーディネートやギフトなどへもアートワークを展開することで、日常的に楽しむアートを提案し続ける。第8回現代美術今立紙展佳作賞(1988年)、エンバ賞美術展新人賞(1990)受賞など。
HP:wagashizanmai.s2.weblife.me/resume.html

和菓子と和紙という2つの伝統文化に
込められた祝いの気持ち、
日本人が大切にしてきた
和のこころを表現する
「KIOKUGAMI 和菓紙三昧」。

鯛や鶴亀、松竹梅、富士山、だるまや七福神など、縁起の良いモチーフが重なり合うように組み合わされたコラージュ。これらは、すべて和菓子の木型から型取ったもの。和菓子のように見えますが、じつは“和紙”でできています。今では目にする機会が減ったものの、日本にはかつて七五三や結婚、長寿のお祝いといった人生の節目、正月や桃の節句など四季折々の場面に、落雁や金花糖などの菓子を捧げる風習がありました。その菓子づくりに使われてきた木型の造形を和紙で写し、作家独自の感性を組み合わせることで生み出された作品シリーズが、“KIOKUGAMI 和菓紙三昧”です。

「私が表現するのは、日本各地の祝いの記憶です」。そう話すのは、現代美術作家として国内外の注目を浴びる、永田哲也さん。「同じ鯛でも、まったく造形や表情が違うでしょう?それぞれに時代も違えば、つくられた土地、彫った職人さんも違います。菓子の材料や用途も含めて、一つひとつの木型に個別の記憶があるんです」。永田さんがこれまでに収集した木型は約2000点。いくつかピックアップしていただいた鯛の型を見ると、その顔つきやウロコの細工、尾の曲線など、ひとつとして同じものはありません。「木型は和菓子屋さんごとのオーダーメイドなので、地理的条件や庶民の文化が色濃く残っています。時代によってデザインの流行もあります。

和菓子に使った砂糖の成分が菓子型にしみ込んでいるので、甘い香りがしたり、和紙にうっすらと色がつくものもあります」と永田さん。アトリエに保管されている木型は、北海道から九州までを渡り歩いて和菓子店から譲り受けたものや、骨董市で見つけたもの。個々の木型に宿った記憶を集積させ、時空を超えた物語に仕上げる永田さんの作品には、歴史の変遷と往時の人々の記憶、大切な人の幸せを祝う晴れやかな気持ちが詰まっているのです。

和菓子に使った砂糖の成分が菓子型にしみ込んでいるので、甘い香りがしたり、和紙にうっすらと色がつくものもあります」と永田さん。アトリエに保管されている木型は、北海道から九州までを渡り歩いて和菓子店から譲り受けたものや、骨董市で見つけたもの。個々の木型に宿った記憶を集積させ、時空を超えた物語に仕上げる永田さんの作品には、歴史の変遷と往時の人々の記憶、大切な人の幸せを祝う晴れやかな気持ちが詰まっているのです。

「金花糖は、煮溶かした砂糖を型に流し込み、冷やし固めた和菓子。木型を二枚合わせてつくる際、流し込む材料の容量も正確に決まっています。砂糖だと造形のディテールの精度が少し落ちますが、和紙で型を打つとその精巧さがしっかりとわかる。これも木と和紙の相性が良いからではないでしょうか」。菓子の完成形をイメージしながら版画と同様に左右・凹凸を反転して彫る、当時の木型職人の高い技術に永田さん自身が魅了されているのはもちろんですが、作品を見た和菓子職人さんに「木型がここまで美しく精巧にできていたとは」と、逆に驚かれたこともあるそうです。日本人の暮らしを彩ってきた和菓子文化は、現代にアートとして甦り、私たちの遠い記憶に訴えかけるのです。

菓子の木型を写し取るのに使用する和紙は、茨城県の無形文化財に指定されている西ノ内和紙という手漉き和紙です。「その質感は絹に例えられるほど艶やか。それでいて“千年持つほど丈夫”なことも、作品の材料として選んだ理由です」と永田さん。力強さを感じさせる作品の風合いは、手づくりゆえの品質で、自然とともに時空を超えて存在していける和紙だからこそ表現できるのだそうです。

永田さんの作品は、すべてが手作業。木型の意匠を和紙で型取る工程にも、手間がかかります。「桜鯛であれば、最初に目にあたる金色の和紙を引き、その上から胴体に赤、側面には薄いピンク色に染色した西ノ内和紙を乗せる。その上から白い“晒し紙”を引いた後、木型に定着させていきます。さらに四国産の和紙を使って裏打ちして、ひとつのパーツが完成です。海老などの場合は、グラデーションの異なる色のついた和紙を8枚程度重ねていくんです」。美しく紅白に彩られた一つひとつのモチーフは、それを照らす光によって独特の陰影を放ちます。

永田さんは美術館やギャラリーでの展示のほか、百貨店やホテルでのディスプレイ展示、カタログや雑誌の表紙などへも数多く作品を提供。さらには、虎ノ門ヒルズ内の外資系ホテルや京都恒和ビルなどの複合商業施設のインテリアにも作品が採用されるなど、さまざまな空間を彩るアートとして、日本人だけでなく海外の方からも高い評価を受けています。また近年では“和菓紙三昧”のシリーズとして、熨斗袋やメッセージカード、小箱や団扇、部屋を飾るインテリアグッズにも積極的に作品を展開。和紙ならではの温かさと上品さ、エッジの効いたエンボス効果が生み出す美しさが、感度の高い人々に人気です。「日本には、生活のなかにアートを取り入れる文化が浸透していません。アートは希少性も含めてひとつの価値であり、他人と同じものを好む国民性や小中学校での美術教育にも壁があると感じています。これからも作品に親しみやすい工夫を加えることで、日常的にアートを楽しめる文化をつくっていきたいですね」と永田さん。日本人の美意識の結晶である和菓子とそこに込められた祝いの気持ち、豊かな自然が育んだ和紙。3つの伝統文化を新たな解釈で表現したアートで、新春を華々しく彩ってみませんか?

『和菓紙三昧』小物アイテムの取扱店舗

○スパイラル(東京・青山)1F|MINA-TO 
○伊勢丹新宿店本館5階=ウエストパーク
その他お問い合わせ先=kiokugami@kkd.biglobe.ne.jp