英雄の“覚悟”を描く こうじょう雅之さんの「武人画」|vol.37 2018 AUTUMN|TSUNAGU WEB

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vol.37 2018 AUTUMN 英雄の“覚悟”を描く「武人画」

英雄の“覚悟”を描く
「武人画」

歴史や軍記物などに登場する武将の姿を力強く描いた圧巻の墨絵。
大胆さと繊細さを兼ね備えた筆使いとダイナミックな構図によって、
覚悟を決めた豪傑たちの勇ましさを表現した作品は、
観るものの心を揺さぶる気迫に満ちたオーラを放っています。
これらの作品を生み出すのは、武人画師・こうじょう雅之さん。
多方面からコラボレーションの依頼が絶えない彼の作品には、
型にはまらない信念を貫き通す、強い“覚悟”が宿っています。

こうじょう雅之さん
武人画師
こうじょう雅之さん Masayuki Kojo
1978年生まれ、京都府宇治市出身。2014年より、“覚悟”を持つ武人の姿を墨で描く「武人画師」として活動を開始。水墨画とは異なる独自の技法、躍動感ほとばしる独特のタッチが話題を呼び、国宝二条城「二の丸御殿前」史上初のライブ・パフォーマンス、NHK大河ドラマ「真田丸」カレンダーのデザイン、映画「スター・ウォーズ」のオフィシャル武人画など、数々のコラボレーション作品を発表。2018年より、宇治市観光大使も務める。
■公式ホームページ:www.macfamily57.com
■作品販売サイト:www.collab-japan.jp (コラボジャパン)

野球や社会で経験したことのすべてが
今の活動につながっている

フレームマットにはみ出すほどの荒々しさと生命力ほとばしる躍動感。戦国時代の武将など、歴史や軍記物の英雄たちの気迫に満ちた姿を描く「武人画」には、何事にもひるむことのない芯の通った信念をも表現しているようです。「僕が描くのは、武人たちの“覚悟”なんです」。こうじょう雅之さんは、故郷である京都府宇治市を拠点に創作を続けている武人画師。史実に基づいた活躍を絵画にした武者絵ではなく、モチーフとなる人物の意を決した姿を、墨だけで描いていきます。その迫力ある作風は国内外から高い評価を受け、多方面からのオファーが殺到。大河ドラマ「真田丸」のカレンダーデザインに採用されたのを機に、国宝・二条城「二の丸御殿前」では史上初となるライブ・パフォーマンスを敢行、さらには世界遺産・平等院を舞台に、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』公開記念イベントとして巨大な屏風に同作のキャラクターの武人画を披露するなど、作家の型にはまらない活動が注目されています。

こうじょうさんが武人画師として本格的に活動を始めたのは、約4年前のこと。もともと絵を描くのが好きだったものの、高校野球の強豪・近江高校(滋賀)に進学。レギュラーの夢は叶わなかったものの自ら裏方を志願し、チームを支え続けたそうです。その後、就職した配送会社でも職場環境の改善に取り組み、企業の業績回復にも貢献しました。「野球部ではチームが勝利するためには何が必要か、会社では同僚や部下の不満を解決するにはどうすれば良いかを第一に考えることを心がけていました。時代の流れを読んで社会が求めているものをリサーチする力、協力してくれる仲間との良好な関係をつくる力は、当時の経験がなければ得られないものだと思いますし、作家として活動するうえでとても役立っています」とこうじょうさん。誰かの役に立ちたいというまっすぐな気持ちと、高校球児、サラリーマンという作家としては異色の経歴すべてが、短期間で成功を収める礎となっているのです。

作家としての仕事に未練を残しつつも、配送会社の役員として順風満帆な日々を送っていたこうじょうさん。そんなある日、偶然目にしたテレビCMが、彼にとって人生の転機となりました。「カップ麺のCMに(漫画家の)井上雄彦先生が描いた宮本武蔵の墨絵が使われていて。それを見たときに"同じものが描きたい〟という強い衝動に駆られ、絵描きをめざすことを決めました」。こうじょうさんは翌週、勤務先に辞表を提出。直感を信じる決断力と行動力によって、新たな人生を切り拓く大きな一歩を踏み出しました。

憧れを抱くことが、
夢を実現するための推進力になる

活動を開始した当初は「まだアマチュアの実力だった」というこうじょうさんが、広く世に知られるようになる背景に、浮世絵や江戸木版画の工房「朋誠堂」を主宰する坂井英治さんとの出会いがありました。「本物のアートを観てきた方が、鋭い審美眼を持ってしっかりとジャッジしてくれたことで絵のレベルが上がりました」とこうじょうさん。世界水準のアートを知る心強いパートナーを得たことで作品のクオリティがさらに進化。水墨画の技法に漫画の表現方法をミックスした技法を独学で確立したことで、アートシーンからの評価がさらに高まり、大きな飛躍につながったそうです。

オリジナル武人画 『宮本武蔵 吉岡一門一乗寺下り松ノ刻』
オリジナル武人画 『漢の背中シリーズ伊達政宗』『真田幸村一騎当千乃図』

上/オリジナル武人画 『宮本武蔵 吉岡一門一乗寺下り松ノ刻』(H800×W1100mm)
右下/オリジナル武人画『真田幸村一騎当千乃図』(H660×W850mm) 左下/オリジナル武人画 『漢の背中シリーズ伊達政宗』(H605×W455mm)

「京都東山花灯路2018」

「京都東山花灯路2018」のイベントの一つとして知恩院山門前で行われた、ライブ・パフォーマンスの様子。打ち鳴らされる和太鼓のリズムとシンクロするように、墨の線が描き入れられていく。

こうじょうさんが武人画に使用する道具

こうじょうさんが武人画に使用する道具。なかには甥っこが書き初めに使用した筆も。

こうじょうさんが作品に使用するのは、水墨画などの書画に用いられる画仙紙ではなく、ワトソン紙という水彩用の洋紙。ライブ・パフォーマンスでは、一般的なコート紙を裏返して使用しています。「紙は安価なものを使うと決めています。手漉き和紙だと高すぎて、子どもたちが同じような絵を描きたいと思ってもすぐにはじめられないので意味がないんです」。そのほか創作に必要な筆や水差しも、すべて市販のもの。ライブ・パフォーマンスで着用する衣装も3千円以内のものを選ぶなど、作家を志す後進に道をつくることを指針にしています。「多くの子どもたちに真似してほしいですね」。こうじょうさんは、憧れの存在に一歩でも近づくことを目標にして、幼い頃からの夢を叶えた自身のストーリーを、日々のパフォーマンスによって未来の子どもたちへ伝え続けています。

『独眼竜 伊達政宗公図』

『独眼竜 伊達政宗公図』(H660×W850mm)

麦焼酎「くろうま天駆(あまがけ)」[宮崎県・神楽酒造]

こうじょうさんが描く黒馬がラベルになった麦焼酎「くろうま天駆(あまがけ)」[宮崎県・神楽酒造]。商品の題字も手がけたほか、CM動画にも出演している。