海外情報トピックス
*インドネシアAPP傘下工場でライナー新マシンテスト生産 インドネシアの大手製紙メーカーAPPは、西ジャワ州のIKPPカラワン工場において、 ライナーボード新マシンのテスト生産を開始した。 マシン幅8.46m、速度1,450m/分で、年間70万トンの高品質ライナーボードを生産予定。 テスト生産期間は約6か月。APPのインドネシアにおける段原紙の生産能力は約200万トンで、 そのうちライナーは約半分を占めている。 新マシンの稼働により、ライナーの生産能力は170万トン程度に増加となる。 東南アジア市場では、供給過多と中国市場の不振により市況が低迷しており、 更なる市況の軟化が懸念される。 *インド政府 インドネシアからの輸入白板紙にダンピングの実態調査を開始 インド政府の商工省傘下の貿易救済総局(DGTR)は、 インドネシアから輸入されるバージンパルプベースの多層抄き白板紙に対して ダンピングの疑いで調査を開始した。 昨年10月には、中国とチリからの同品目の輸入についても調査を行っており、 今回の調査はそれに続くもの。 インドネシアのAPRIL社は2024年1月にスマトラ島ケリンチ工場で新しいFBB製造マシンを稼働させ、 インドへの輸出が急増している。 2025年までにインドネシアはスウェーデンを抜いてインドへの輸出第2位となった。 インド製紙同業会(IPMA)は、 インドネシアの国内市場での販売価格がインド国内メーカーの生産コストを下回っており、 輸入増加がインドの製紙業界に甚大な被害を与えていると主張している。 *中国パルプメーカーによるフラッフパルプ生産能力の拡大 米中間の関税問題の応酬の影響から、 中国が主に米国より輸入するオムツ用のフラッフパルプの輸入量が直近では急減しており、 中国の紙パルプメーカーにフラッフパルプ生産への転換、あるいは新たな投資を進める動きが出始めている。 (注;米国政府はブラジルに対し追加関税分を含む50%の関税の発動を主張していたが、 後日パルプについては40%の追加分に関しては除外されることが判明。) 中国の海貨統計(GACC=General Administration of Customs)によると、 2024年度の中国が米国より輸入したフラッフパルプの総数量は104万㌧であったが、 輸入関税及び報復関税の応酬が高まる直近の、今年1-4月の月間平均輸入数量が8万㌧であったのに対し、 5月度は5.8万㌧、6月度は3.2万㌧と急減している。 今後の供給への不安が、中国メーカーのフラッフパルプ国内生産への投資意欲を促しており、 最近では次のような計画が明らかになっている。 1)山東銀河瑞雪紙業: 既存の非木材パルプラインを廃棄、 新たに30万トンの木材パルプ生産設備を設置する計画。 そのうち15万トンがフラッフパルプの予定。 2)岳陽紙業: グループ企業の湖南駿泰紙業を通じ、 40万トンのNBKPラインのうち約5万トンをフラッフパルプに転換予定。 3)保定瑞豊紙業: 既存18万トンの機械パルプ設備を改修、約5万トンのフラッフパルプを生産予定。 4)四川環龍集団: 25万トンの竹パルプの生産ラインを新設、 そのうち20万トン程度はフラッフパルプ生産予定。 5)山東華泰紙業: 今年4月に稼働した70万トンのLBKPラインの一部をフラッフパルプの生産に充てる。 これらにより、輸入依存を軽くし、国内でのフラッフパルプを生産により供給の安定化を図る意図がある。 *米国政府当局 ブラジルSuzano社の輸入コピー用紙に対するアンチダンピング税率見直しに仮裁定 米国商務省(DOC)は2025年7月10日に、 ブラジルのSuzano社から輸入されるコピー用紙がダンピング販売されているとして、 アンチダンピングの仮裁定を下した。 この調査は、2023年3月から2024年2月末までの輸入実績を対象に、 Suzanoのコピー用紙が市場の平均価格より14.42%低い価格で輸入されていると結論づけた。 最終裁定は120日以内に下される予定。 米国最大のコピー用紙メーカーDomtarの申立てを受けて行われたもの。 Suzanoに2016年以来、22.16%のダンピング課税が適用されていたが、 最近の状況に基づき見直しが求められた。 2025年1月から6月までの米国市場の平均価格は$1,625/トンに対し、 ブラジルからの輸入品の平均価格は$931/トン、その差は47%に拡大している。 両国間の輸入関税の応酬に基づき、Suzanoには関税率50%に加え14%が上乗せされ、 合計64%が課されることが結論付けられた。
北米市況(8月度)
[新聞用紙] 1Qの需要は好調だったが、2Qでは輸入関税交渉や在庫調整の影響で減速した。 6月の需要は前年比で特に大幅に減少している。2025年度も前年比▲14%程度の減少が予測される。 輸出は全需要の半分以上を占めるが、1-6月の輸出量もアジア、欧州、南米各主要市場向けが減少した。 カナダのメーカーはインド、欧州で安値オファーを展開している。 国内外の需要減少により、北米メーカーの生産稼働率も前年同月を下回った。 一部メーカーはコスト高に直面し、価格修正を検討している。 [上質紙] 北米市場の上質紙需要は、1Qは輸入関税問題で輸入品中心に在庫が増加したが、 2Qには関税交渉で市場が硬直し、荷動きは鈍化した。 6月には需要が一時的に回復したが、7月以降は再び鈍化している。 関税導入への備えから輸入品シェアがアップする一方、需要は低調で、 北米域内メーカーの出荷は減少している。 IP/Georgetown工場の生産停止は供給を引き締めたが、 需要減と輸入増の陰でその効果は薄れた。 今後、Pixelleの生産停止、関税率の上昇による輸入の落ち着きなどで、 北米メーカーの生産稼働率は更に上昇すると予想される。 米国市場の上質紙価格は年初に値上げされ5月から7月は変動がなく、 年度後半から再値上げが予想される。 [コート紙] 1Qに輸入紙の在庫が増加したが、2Qになると関税交渉の延長により市場が硬直化し、 2Qの輸入は前年比で▲13-14%減となった。 6月の需要と輸入も低調。 1-6月の累計では、コート紙全体で、需要と輸入が前年より減少したが、 輸入の割合は依然として高い。 景気低迷で広告紙の需要が減少し、北米メーカーの出荷も減少している。 それでも北米メーカーの稼働率は改善しており、供給の引き締めが理由である。 今後も夏の非需要期と郵便料金値上げで、需要の回復は難しい。 在庫が積み増されており、市況は軟調な推移が予想される。 北米市場の価格は横ばいだが、欧州品の輸入関税15%が確定し、Sappi/UPMが価格転嫁を発表した。 韓国メーカーの動向が注目される。 [段原紙] 2023年上半期、米国市場での段ボール出荷量は前年比▲2.3%の減少となり、減少率が加速している。 特に6月は、季節的需要の発生遅れ、今後へのインフレ圧力で、消費者・企業ともに物品購入を控え、 前年比▲4.6%と低調。段原紙メーカーの生産量も前年比▲3.0%減で、海外市場も低調で、 段原紙輸出も大幅に減少している。 今年後半も相互関税の影響でインフレ圧力が懸念され、段ボール消費は低調に推移の見込み。 需給対策は急務で、今年3月以降複数の工場で、約240万トンの段原紙生産が停止されている。
欧州市況(8月度)
[新聞用紙] 3Qの新聞用紙価格は、メーカー各社は価格下落要求に応じ、下方傾向での推移が予想される。 需要は概ね想定内であるが、北米市場で苦戦するカナダのメーカーが、 欧州市場で柔軟な価格対応を展開しており、概ね市況は軟調である。 フランスを除く欧州市場では、€5-20の価格下落が見込まれる。 英国では£15-20の下落が予想される。 [印刷用紙/中質系雑誌用紙] SC紙の需要は低調で供給過多が続いており、市場価格は下方圧力を受けている。 UPMのEttringen工場の生産停止予定があるが、これまで実行に関して具体的な発表はない。 一方SappiはKirkniemi工場で非塗工中質紙の生産を開始しており、 今後の市場の見通しは不透明である。 [非塗工上質紙] 上質紙の価格は6月から下落が始まり、7月ではさらに進行している。 特にコピー用紙ではアジアメーカーの積極的な販売が供給過多を招き、 欧州市場の広くで価格が下落している。 ドイツ・フランス・英国などで特に価格の下落が顕著である。 [コート紙] コート紙の価格下落は6月から始まり、7月に加速している。 英国、ドイツ、南部欧州で価格が大幅に下落している。 SappiのKirkniemi工場が非塗工中質紙への生産転換を発表したが、 コート紙の供給過剰状態は依然続いており、市況の安定には生産能力の削減は必要である。 [段原紙] テストライナーは、5月の値上げが7月には古紙価格の下落で元に戻り、4月以前の価格水準となった。 注文促進のため値下げやリベートが見られるが、夏の非需要期で効果は限定的。 英国とスペインは堅調、イタリアでは新マシン稼働で価格がさらに下落。 クラフトライナーは比較的安定しているが、再生品ライナーの市況軟化の影響で、 価格が崩れも一部で見られる。 イタリアでは、ドル安で北米品が欧州の主要メーカーよりも安値で販売されている。
中国・香港・東南アジア市況(8月度)
[印刷用紙] 中国市場のコート紙は、印刷会社は必要な分のみ購入しており、依然として紙商の在庫は高止まりである。 需要の低迷、パルプ価格の下落で、市場価格に改善は見られない。 メーカー側は値上げを意図するものの、需要が脆弱で値上げに正当な理由は乏しく、 実勢価格はさらに下落している。 香港市場も、需要の低迷により市況は軟調に推移している。 中国メーカーが7月生産から値下げを行っており、夏場の非需要期を通じて価格の下落は続くと予想。 米国向け出版物用は、関税政策がはっきりするまでは取引が保留され、需要の動きに影響を与えている。 中国市場の上質紙は、出版用途の需要が低調で、全体的に荷動きは鈍い。 紙商は過剰な在庫を抱え、安値での在庫投げ売りが見られる。 パルプ価格の下落により、先安感が広がっている。 需要の回復は見られず、しばらく様子見の状況が予想される。 価格戦争を食い止めるべく、中国政府は過剰生産を改める政策を打ち出し、 正常な価格レベルに戻そうという雰囲気が業界にも広がっている。 8月に大手製紙メーカーが値上げをアナウンスしており、今後の市場動向が注目される。 香港市場の上質紙は、6月以降も荷動きは鈍化している。 パルプ価格の下落と中国メーカーの生産増強で、供給余力がますます拡大している。 中国メーカーは7月生産から値下げを行っており、夏の非需要期を越えて市況が軟化することが予想される。 [板紙] 中国市場の7月の段原紙市場は、メーカーが価格復元を試みるも、低調な需要により価格はやや下落となった。 大手メーカーの価格政策も様々で、中下旬には中小メーカーも値上げに追随する動きが見られた。 段ボールメーカーの稼働率は50-70%で推移しており、在庫消化が遅れユーザーの購買意欲も依然として低調である。 原料古紙の価格は堅調に推移しているため、コスト上昇が段原紙メーカーの利益を圧迫している。