海外情報トピックス 【米国政府:ブラジル産の紙製品・溶解パルプに25%の追加関税等を課税 北米メーカーの供給動向にも影響】 米国政府は、2026年7月以降、通商法301条などを根拠にブラジル産の紙・板紙製品と溶解パルプ(DP)に対し 25%の追加関税を導入、さらに強制労働調査に基づく12.5%関税も検討し、 最大では37.5%の上乗せ関税が課される可能性もある。 加えて、Bracel社のDPにはアンチダンピング(約6%)と補助金相殺関税(約4%)が予備裁定で設定されており、 一部品目で実質的に4割超の関税負担となる可能性がある。 一方、製紙用木材パルプ(N・L・フラッフ)は追加関税対象外。 この一連の輸入関税の適用で、ブラジルの米国向け紙・板紙輸出は大きく減少し、 2026年上期の北米への紙輸出は、前年同期比約半減となった。 もともとブラジルは米国向けの主要供給国ではないものの、非塗工上質紙は北米輸入需要の重要な供給源であり、 今度の改定関税によりブラジルのシェアが落ち、インドネシア、欧州諸国など、 より低関税の国々が北米市場で競争上有利とみられている。 ティッシュ製品はブラジルの対米輸出比率が小さく影響は限定的だが、 ブラジルメーカーは中南米・欧州など他地域を重視する意向。 北米の主要メーカーにも供給戦略に変化が見込まれており、例えばブラジル大手のSuzanoは、 米国を関税面で不安定と位置づけ、カナダ・アフリカ・中東・アジアなどへ販路をシフト、 米国向けのブラジルからの供給を相対的に縮小すると予想される (特にSuzanoの非塗工上質紙に対しては、別途14.4%のアンチダンピング税が課されている)。 Sylvamoもこれまではブラジル工場から米国需要を賄ってきたが、 25%(或いは37.5%)関税によりそのモデルは採算悪化が予想され、 欧州或いは他地域からの調達に切り替える可能性も出ている。 溶解パルプ市場では、Bracelへの高関税で、北米メーカーのレオニアなどが、 米国内・域内生産が相対的に競争力を増す一方、 北米の紙・板紙ユーザーは、ブラジル以外の供給国へ分散調達を進めるとみられ、 総じてブラジルの北米市場でのプレゼンスは中長期的に縮小傾向となるとの予想がある。 【スペイン:Saica社による段ボール製品メーカーThimm Groupの買収をECが承認】 スペインの板紙・包装大手SAICAは、 5月に買収合意していたドイツの段ボール・ディスプレイ製品メーカーThimm Groupについて、 EC(欧州委員会)から独禁法上の承認を取得した。 この動きは、欧州段ボール業界で進む“段原紙+段ボール製造加工”の垂直統合を象徴する動きと言える。 Saicaは今回の買収で、中東欧を中心とする段ボール工場9カ所とプリプリント施設1カ所を獲得し、 約120万㌧の年産能力と約2,500人の従業員を自社ネットワークに組み込む。 これにより、自社の段原紙をグループ内の段ボール加工拠点へ安定的に振り向ける体制を強化し、 欧州段ボール有力メーカーとしての地位を一段と高める狙いが窺える。 背景には、欧州段原紙市場の構造的な供給過剰がある。 2023年以降、欧州各地で新設・転抄プロジェクトが相次ぎ、 2023~25年だけで少なくとも200万㌧超の段原紙能力が純増したうえ、 2026年以降も新マシンの立ち上がりが続くことが見込まれている(下記注)。 一方で、消費財出荷やEC物流など最終需要は、インフレ・金利高・景気低迷の影響で伸び悩み、 段ボール実需は脆弱である。 この結果、段原紙価格は一時的な値上げ局面の後に急落し、 稼働率も80%台にとどまるなど、市況は軟調が続いている。 このような環境下では、段原紙専業でスポット市場に依存する企業ほど、 価格下落の影響を直撃しやすい。 そのためSaicaをはじめ大手各社は、段原紙供給を自社の段ボール製造・加工事業と結び付ける垂直統合を進め、 販売量とマージンをグループ内で確保できる“防御的な構造”へと転換を図っている。 SaicaによるThimm買収は、供給過剰と市況低迷が続く欧州市場で、 長期的な価格競争に耐えうる事業基盤を固めるための戦略的な一手と位置づけられる。 →(文中注 参考) ドイツのPalmは英国Kings Lynn工場(PM7)の新聞用紙マシン(年産40万㌧)を、 年産70万㌧の軽量再生段原紙(米坪60gsm以上)に転抄、2027年3月の稼働を目指す。 欧州ではこの10年間に、新聞用紙の需要は60%減少しており、構造的な需要減少への対応となる。 再生段原紙は、今後9カ月ほどの間に新たに約175万㌧の能力増強が見込まれている。 IP(+DS Smith)ノPorcari工場PM3(イタリア、純増30万㌧)が本年末稼働予定。 またトルコのEren Paperは、英国Shotten工場(70万㌧)を2027年初に稼働させる予定。 またNorske Skog/Golbey工場PM1(フランス、55万㌧)は既に稼働済みだが、 これは2027年初までにフル稼働となる公算。 *今月の中国品の輸入に対する、各国(地域)によるアンチダンピング、相殺関税等の動きは次の通りです。 【EU(欧州委員会):中国製軽量感熱紙への暫定相殺関税】 EUは、中国製軽量感熱紙につき反補助金調査を行い、 中国メーカーが政府補助金によりEU産業に重大な損害を与えていると認定、 暫定的な相殺関税を導入する決定を下した。 調査に全面協力したGuangdong Guanhao High-Tech Co(広東豪華)には28.8%、 他の中国メーカーには70.5%の暫定関税を適用。 対象は米坪65gsm以下の軽量熱感紙で、幅20cm以上・ロール直径40cm以上・ロール重量50kg以上。 中国からの輸入量は2022年の2,865㌧から14,983㌧へ急増、EU市場シェアは1.4%から8.2%に拡大、 平均輸入価格は33%低下しEUメーカー価格を約10.4%下回った。 EUメーカーの市場シェアは93%から81.4%に低下している。 最終決定は2026年末までに下される予定。 EUは韓国製軽量感熱紙に対しても、既に反ダンピング税を導入済み。 米国・カナダも中国製の軽量感熱紙に対し課税措置を取っている。 【メキシコ:中国製箱用白板紙への反ダンピング関税】 メキシコ経済省は、中国から輸入される箱用白板紙に付き、 2026年7月8日を基準日として5年間の反ダンピング関税導入を最終決定した。 関税額は中国メーカー別に1㎏当たり約0.28~0.49ドルの範囲で設定、第三国経由で輸入される場合も、 中国原産ではないことが証明されない限り対象となる。 対象はHS4810.13.07、4810.29.99、4810.32.01、4810.39.99、4810の白板紙。 同省は既に2025年10月に暫定税として370.2ドル/㌧の課税を決定済みで、 別途、オーストリア・フィンランド・スウェーデン産の白板紙についてもダンピング調査を進めている。 主要海外市況(7-8月度) 中国・香港市況 [印刷用紙] 中国市場のコート紙・上質紙は、5月以降の需要減少を背景に、 7月も印刷会社の買い付けが低調で、小幅な値下がりが続いた。 一方で、出版向けの集中出荷や一部中国メーカーの操業停止により在庫は減少したことが、 相場の下支えとなり、値下がり幅は前月より縮小している。 紙板紙需要の弱さからパルプ価格も下落しており、 メーカーはコスト面から大幅な値上げを打ち出しにくい状況にある。 月末に一部メーカーが8月からの値上げを表明したものの、川下は様子見で個別交渉が中心となっており、 8月は需要オフシーズンにより横ばいでの推移が見込まれる。 9月以降、出版向けの新規入札を狙った一時的な値上げは期待できるが、 全体の需要回復が弱く、その後は再び軟化となる可能性が高い。 香港向け上質紙は、APRILが香港及び東南アジア向けに値上げを継続して検討しているものの、 依然不安定な中東情勢、中国内需の低迷が重なり、実質的な値上げは保留されている。 コート紙では、APPが香港市場で需要低迷のため長らく価格横ばいとしていたが、生産コストの高騰を受け、 6月からは$25~30程度の値上げを実施し、価格転嫁を図っている。 東南アジア市場の印刷用紙は、オフィス・商業印刷用途の需要縮小が続いている。 シンガポールでは7月は概ね、市場全体で低調となったものの、 足元では年末印刷物需要を見据えた引き合いも動き出している。 上質紙需要はなお低調で、中国品の参入で市場は混乱しているが、受注環境が厳しくメーカー側は、 個別案件への対応は行いつつも、現行価格の維持を慎重に行っている。 マレーシアは、市場価格は総じて安定し、製紙メーカーの多くが現状水準を据え置いている。 印刷用紙の需要自体は低迷しており、供給は依然として潤沢である。 このため製紙メーカーは、価格面で柔軟な姿勢に転じやすく、 大口案件では追加値引きも含め条件提示には前向きである。 [板紙] 7月の中国段原紙(中芯・ライナー)市場は、中国大手メーカーが主導して値上げを打ち出し、 在庫も低水準であったため月初は上昇となった。 しかし、月後半に出荷が鈍化すると、中小メーカーによる値下げ競争が顕在化し、相場は下落に転じた。 結果として価格は前月比では中芯+6.32%、ライナー+3.18%と上昇したものの、足元では調整色が強い。 原料古紙も連動して下落しており、段ボールメーカーは在庫消化を優先し新規調達を抑制したため、 需給は一時緩んだ。 8月上旬は一部で追加値下げの可能性もあるが、 大手メーカーは6日からの再値上げを予告し、中小工場も追随が見込まれている。 中旬以降は中秋節・国慶節に向けた秋商戦需要と一部工場の休転による供給減で反転上昇も予想され、 9~10月は年末に向けた需要拡大への期待から、中国メーカー主導での上昇基調が強まると見込まれる。 香港向け白板紙では、アイボリーが中東情勢の影響から4~5月に需要・市況ともに軟化し値下がりした。 その後、中国・海外メーカーともに値上げを試みているが、需要が脆弱で、価格の浸透は限定的である。 コートボールは、原材料の古紙価格の上昇を受けて値上げが実施されており、段ボール原紙同様に、 悪天候による古紙回収減と需要期入りで価格は上昇した。 その後も中国系メーカーは、香港向け市況の維持を重視し、コスト上昇分の価格転嫁を行いながら、 過度な値下げを避ける慎重な動きが続いている。 北米市況 [新聞用紙] 1-6月累計の北米需要は前年比約1割減、生産は同3割超の減少となった。 一方で昨年来続く大規模な設備停止や減産の影響から供給は極めてタイトな状態が続いている。 メーカー各社は輸出を大幅に削減し、北米域内向け供給を優先している。 昨年末以降の累計値上げ幅は既に$160/㌧に達しており、 さらに主要メーカー各社は9月以降に追加で$60/㌧の値上げを表明している。 需要は低調ながらも供給不足が価格を支える構図に変化はない。 [上質紙] 1-6月累計需要は前年比4%減となったが、昨年来の設備停止や他品種への転抄に加え、 今年の設備トラブルや定修の影響もあり供給は依然タイトである。 第2四半期以降の値上げと先高感を背景に在庫積み増し需要が発生し、 市場価格は年初から概ね$100~120/㌧上昇した。 足元では需要の勢いはやや鈍化しているものの、市場価格は高値で推移している。 今後はブラジル品を中心とする輸入紙への追加関税動向が市場に大きな影響を与える可能性がある。 [コート紙] 上質コート紙は春先以降、値上げ前の前倒し需要に支えられ比較的堅調な荷動きとなった。 供給面では昨年以降の設備停止に加え、生産障害も発生しており需給は引き締まっている。 第2四半期には原油高や海上運賃上昇を背景に合計約$60/㌧の値上げが浸透した。 足元の価格は概ね横ばいで推移しているが、 輸入関税の動向や米国大統領選関連印刷需要の増加などが今後の焦点となる。 [中質紙] 需要の構造的縮小は続いているものの、塗工紙からの代替需要や食品包装用途など一部用途は比較的堅調である。 昨年以降の設備停止や今後予定される印刷用紙設備の閉鎖により供給面は改善方向にあり、 市況は徐々に安定化している。 高白色中質紙については年内に複数回の値上げが実施され、足元ではその価格が維持されている。 [段原紙] 第2四半期は食品・飲料向けを中心に需要が回復し、段ボール出荷も前年を上回った。 価格面では年初以来累計約$100/㌧以上の値上げが浸透している。 昨年以降累計約400万㌧に及ぶ設備削減により供給は極めてタイトで、メーカー在庫も低水準で推移している。 このため北米メーカーは輸出を制限し域内市場を優先しており、 主要メーカーは9月以降さらに$80~140/㌧の追加値上げを打ち出している。 欧州市況 [新聞用紙] 7月の欧州市場では新聞用紙価格が各国で上昇した。 供給面では工場閉鎖や生産上の問題が続き、需給は概ね均衡している。 英国では20~25ポンド、大陸欧州では20~25ユーロ程度の値上げが実現した。 サプライヤー側では第4四半期以降も追加値上げを模索しており、 中東情勢やエネルギーコスト動向が今後の市況を左右する見通しである。 [上質紙] 春先に実施された40~50ユーロ程度の値上げ後、市場価格は横ばいで推移している。 欧州域内の供給過剰や輸入紙流入、需要低迷により追加値上げは実現していない。 業界内では輸入関税導入や設備削減の必要性が議論されているものの、現時点で具体的な施策は見えていない。 需要回復の兆しは乏しく、当面は現行価格の維持が最大の課題となっている。 [コート紙] 塗工紙市場も非塗工上質紙と同様に概ね横ばいで推移した。 需要が夏季休暇入りで減速するなか、メーカーは価格維持を最優先としている。 短期的な値引きの動きもみられるが、価格下落による市場悪化への警戒感が強い。 エネルギー費や輸送費の上昇、中東情勢による先行き不透明感は依然として市場の懸念材料である。 [段原紙] クラフトライナーを中心に欧州市場では値上げが進展している。 ドイツやイタリアでは60ユーロ程度の値上げが浸透し、英国でも値上げが実施された。 北米の大規模減産による輸出減少や欧州域内メーカーのトラブル・定修が重なり、 クラフトライナー市場は供給逼迫が続いている。 一方で再生ライナーでは値上げが十分浸透しておらず、品種間で市況に差がみられる。 【統計】6月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本) 2026年6月の紙・板紙合計輸出は15万2,131㌧(前年比0.6%増)、輸入は7万9,674㌧(同22.2%増)となった。 国内需要は156万8,724㌧(前年比3.3%増)となった。 【統計】6月 米国紙・板紙輸入 2026年6月の米国紙・板紙合計輸入は60万7,856㌧で前年比2.7%増となった。 金額は6億8千9百万ドル(同8.2%増)となった。 カナダからが前年比減、フィンランドは同急増。 日本から同横ばい。







