海外情報トピックス
*北米・欧州で相次ぐNBKP生産削減
2026年はDomtarに象徴されるように、北米・欧州でNBKPを中心として、市販パルプの供給調整が加速している。
Domtarは、カナダBC州Crofton工場(NBSK年産約38万㌧)を1月に永久閉鎖したのに続き、
米アラバマ州Coosa Pines工場(フラッフパルプ約28万㌧)を5月に停止、
さらに8月にはカナダBC州Howe Sound工場(NBKP約38万㌧)とBayview Fibreチップ工場の操業を無期限停止とした。
アジア向け需要の減少、世界的なパルプ価格の低迷、原料木材の供給不足などを理由に収益性が大きく悪化したためで、
市況や原料供給が改善すれば再開の可能性はあるが、約400人の従業員に影響が及び、北米NBSK供給へのインパクトも大きい。
欧米ではBSKの過剰供給と価格低迷、原木・エネルギーコスト高を背景に、生産削減・停止が相次いでおり、
市販パルプ能力はNBKP/NBSKを中心に、合計約250万トン規模の削減が見込まれる。
各社の動きは以下の通り。
・Canfor:BC州プリンスジョージNorthwood工場(約32万㌧)
2026年末永久閉鎖予定。
・Millar Western:BC州Quenel River工場(約37.5万㌧/BCTMP)
2026年11月まで一時停止。
・UPM:フィンランドKaukas工場(NBSK約70万㌧)を約6週間停止
Pietarsaari工場も4週間の停止を検討。
・Stora Enso:スウェーデンSkutskär工場のNBKPライン(約10万㌧)
2026年3Qに閉鎖、NBKPからフラッフパルプへの重点シフトを加速。
*UPM・Sappiによる印刷情報用紙分野の合弁事業にECが異議申し立て
UPMとSappiによる印刷情報用紙分野の合弁計画は、現在EC(欧州委員会)の競争法審査において重要局面にある。
両社は2025年12月に非拘束的な基本合意書を締結、本年前半正式契約、年末までの合弁完了を目標としてきたが、
ECは2026年8月、合弁により欧州のコート紙市場でJVが強い市場支配力を持ち、
価格上昇や品質低下につながるおそれありとして異議を申し立てた。
合弁によるコスト削減や環境面・供給安定性のメリットは、
現時点では競争制限リスクを打ち消すには至らないと判断している模様。
(注)この計画は、UPMの情報用紙事業全体とSappiの欧州における印刷用紙事業を統合し、
両社50%ずつ出資の対等な合弁会社を設立するもの。
フィンランド、ドイツ、英国、米国、オーストリア、オランダの計12工場を一体運営し、
製品ポートフォリオと物流の最適化、経営合理化により年間約1億ユーロのシナジー創出を目指している。
背景には印刷用紙需要の構造的な縮小があり、両社は合弁によってコスト競争力と供給安定性を高め、
衰退市場の中で事業を持続可能な形に再編を目指す。
一方でECは、その再編過程での競争制限リスクを重視して条件交渉が続く見通しで、最終判断は2026年11月までに示される予定。
*米国政府:カナダへの50%の輸入関税がカナダ品重量系中質コート紙の供給に影響
米国がカナダ品中質コート紙、特に50ポンド超の重量品(HS 4810.29)に課した50%の輸入関税は、
北米の雑誌・カタログ・商業印刷向けを中心とした用紙の供給に影響を大いに与えることが懸念されている。
北米に存在する中質コートメーカー2社(Kruger、Domtar)は、対象品のコスト急騰に、
米国向け出荷に付き関税分を価格に転嫁せざるを得ないとして、ユーザーが輸入継続の場合、
インボイス上では関税分を別建て明細として計上する動きも見られる。
米国が2025年にカナダから輸入した中質コート紙は200,205トンで、
50%輸入関税が対象の50ポンド超の重量品はそのうち39,758トンと約20%。
ユーザーにはメーカー側から、48ポンド以下品への切り替えが促されているものの、
紙厚や剛度など高付加価値印刷用途への対応などで、仕様の変更は容易ではない。
また既に北米市場では設備削減が進んでおり、重量品中質コートの代替供給の余地は少ないこともあり、
今後は、コストの上昇と供給不足の点で、サプライチェーンの混乱が懸念される。
主要海外市況(8-9月度)
中国・香港市況
[印刷用紙]
中国市場のコート紙は、8月も前月横ばいで底堅く推移。
出版向け入札の遅延、一般商印の低迷で需要は乏しいが、一部メーカーの減産・在庫削減が相場の下支えとなった。
上質紙は8月初にメーカーが値上げを試みたが、実需は脆弱で月末には軟化した。
9月以降も出版向けの一部入札需要を除いて全体の需要回復は鈍く、福建聯盛紙業による60万トン規模の新規設備稼働などもあり、
今後10〜11月にかけて値下がり圧力が強まることが予想される。
パルプ価格は銘柄ごとに同行は斑模様で、原材料コスト上昇を販価に転嫁が難しく、メーカーの採算は悪化している。
香港向け上質紙は、APRILが市場の7割を占めており、紙商の在庫取引も減少していることから、
メーカーは比較的安定した営業活動が可能となっている。
しかし今年は中東情勢の悪化や華南地区顧客の他への生産移管など、需要の減少は加速しており、
各紙商は在庫削減を優先し、市況の低迷が続いている。
コート紙はAPPが香港市場で7割以上のシェアを占め、需要低迷にもかかわらず生産コスト増を背景に、
6月から$25~30の値上げを実施している。
中国本土市場が、需要悪化で市況低迷が続いていることから、香港でも今後の価格維持には苦戦が予想される。
東南アジアは、オフィス・商業印刷用途の縮小と供給増を背景に、8月は上質紙を中心に軟調となった。
中国ではアイボリーや上質紙で値上げの動きが見られるが、供給過多と実需の低迷により強い抵抗にあっており、
その影響を受け、東南アジア域内でも値引きが散見される。
9月時点も川下の受注はなお弱く、メーカー・商社は在庫圧縮と現行価格維持を基本方針としつつも、
大口案件に対しては、個別に柔軟な対応姿勢が続いている。
[板紙]
中国の段原紙市場は、8月初は大手メーカーの値上げと在庫水準の低さで上昇となったものの、
月後半は大口案件割引や販売奨励金など、個別対応が進み再び下落となった。
原料古紙価格もひと頃の高値も落ち着きを見せたことで、コスト面からの下支えも弱まり、
下流の段ボールメーカーは慎重な調達姿勢をとり続けている。
6~7月に約180万トンの新規段原紙設備が稼働し、上質紙マシンの板紙転換、輸入紙の流入から供給は十分で、
8月の工場在庫は急増となった。
このため9月末~国慶節前後にかけて再生段原紙メーカーでは合計約35万トンの計画休転が予定されている。
11月の独身の日向け需要、また古紙再反騰の予想から期待から10~11月は緩やかに上昇基調が見込まれるものの、
依然として供給過剰で、上昇ペースが抑制される構図はしばらく続くと見られる。
香港向け板紙では、アイボリーは中東情勢の影響で4~5月に需要・市況ともに軟化し値下がりした後、
メーカー主導で値上げが試みられたが需要は弱く、夏場に再び下落した。
白板紙は古紙価格上昇を受けた値上げ後に一時安定していたものの、夏場の需要減少に伴い足元では若干値下がりしている。
段ボール原紙も白板紙同様、悪天候による古紙回収減と需要期入りで一時値上がりした後、
8月後半からは出荷鈍化を背景に調整局面に入っている。
中国系メーカーは香港向け市況の維持を重視し、コスト上昇分の価格転嫁を行いながらも、
過度な値下げを避ける慎重な動きを継続している。
東南アジアの板紙市況は、中国の動向に左右されている。
8月後半からは、中国市場の調整局面入りで需要は低調、市況は更に軟化している。
中国からは東南アジア向けに、KLBで安値でのオファーが限定的ながら見られるものの、
世界的にも広まっているKLB供給タイト化と他地域への高値の提示、海上運賃の高止まりもあって、
域内のユーザーは輸入品・国産品ともに在庫の圧縮を優先しており、
購入は必要最小限でのスポット調達にとどめる慎重なスタンスを続けている。
北米市況
[新聞用紙]
北米新聞用紙市況は、8月も東部920(45gsm)、西部930と価格は概ね横ばいだが、
9月以降はメーカー各社が予定する一律$60-の値上げが焦点。
需要は減少傾向にあるが、2026年にかけてWhite Birch/F.F. Soucy、Thunder Bay、
NORPACなど操業停止・転抄により累計50万トン超が恒久的消失となり、需給はタイトな状態が続く。
7月の北米需要・生産・総出荷はいずれも前年比大幅減で、1-7月累計も生産・総出荷は30%以上減少。
欧州での段原紙への転抄など、世界的な新聞用紙供給減少が、北米メーカーの輸出機会を支える。
[上質紙]
8月の上質紙の北米市場価格は安定し、今年前半の値上げ基調は一服している。
需給はおおむねバランスだが、数量確保を狙った値引きも散見される。
夏休み明けの学参需要が8月後半以降目立ってきており、9-11月にかけて受注は改善している。
供給面では、メーカー各社の定修に加えて、Sylvamo/Eastover工場の改修が長期化、11月末まで停機が続く。
一方、ND Paper/Rumford工場の改修は完了し、構造的な供給不足懸念は限定的との見方もある。
輸入は今後の関税環境が不明にも拘らず増加しており、7月度・年初来累計共に前年プラスだが、
関税負担や供給不安を嫌い、国内品への切り替える動きもある。
今後は供給縮小に加えて、秋需と定修が相場を支える一方で、
輸入品との価格競争や関税政策が上値を抑える要因となる。
市況は急激な価格の上昇というよりは、むしろ需給動向の見極め局面が続くものと見られる。
[コート紙]
北米の上質コート紙は、8月も価格は安定し、年初の供給逼迫感は緩和した。
配給制もほぼ解消し、在庫水準も改善しつつある。
7-8月の需要は軟調だが、紙商の慎重な在庫管理で市況は維持されいる。
秋は季節的な印刷需要の回復が期待。
供給面はBillerudのEscanaba・Quinnesecの両工場で定修を予定、タイト化の可能性もある。
一方、輸入品は需要の約35%を占め関税政策の影響を受けやすく、特
に米加間の輸入関税発動により動向は不透明である。
発動前に前倒し購入も見られる一方で、両国の貿易障壁の長期化で、
今後欧州・アジア等他の地域からの代替輸入の可能性もある。
7月の生産・需要は前年並みで、出荷は減少、輸入は増加し、1-7月累計では需要は小幅減に留まった。
全体的に供給は改善し価格も安定しているが、定修及び関税の動向次第で、局地的にタイト化のリスクも残っている。
[中質紙]
北米の中質紙は、高白色度品は供給がタイトで、5月の約$50-値上げが8月までに段階的に浸透した。
メーカーは受注残が多く、ユーザー側からも供給制限ありの声が続くなか、生産・出荷は前年を大きく上回り、
7月は稼働率も前年72%から83%へ改善した。
一方SC紙は軟調で、カタログ印刷需要の減少、郵便料金上昇が需要を圧迫し、供給過剰感が強い。
値上げには更に生産削減が必要である。
但しUSPSによる次回値上げが2027年7月まで延期となっており、需要悪化の懸念はやや遠のいた。
1-7月累計では中質紙全体で生産・出荷・需要ともに前年割れで、輸入も大幅減となった。
[段原紙]
8月の北米段原紙価格は前月比横ばいだったが、9月に入り主要メーカー6社が$80−140の大幅値上げを発表し実施局面に入っている。
背景には2025年2月~26年3月に約390万トン(能力の約10%)が恒久的に削減されたことがあり、供給は極めてタイト。
2Qは段ボール需要に改善がみられたが、足元の相場は生産能力削減で価格形成を支える構図である。
輸出でも供給制約は強まり、米国KLB輸出は1-7月で前年比▲23.2%と減少、中南米向けは全体では減少の一方、
メキシコ向けは堅調、アジア・欧州向けは大幅減となった。
9月の値上げは経済的根拠に乏しいとの反発があるが、能力削減の恒久性から価格の下支えは強く、
年末に向け包装需要が上向くこと、在庫積み増し需要も重なり、実需が伸びなくとも価格は高止まりの展開が予想される。
欧州市況
[新聞用紙]
中東情勢の不透明感や原油高に伴う輸送コスト上昇懸念が続くが、
8月度は非需要期に入りつつも価格は概ね横ばいで推移。
4Qの契約更改に向けて、更にタイト化を見込んで値上げの観測もあるが、現状は前四半期契約が保たれている。
供給面では、Palm社Kings Lynn工場PM7の再生段原紙への転換で供給余力が縮小、
需給はサプライヤー側有利に傾斜している。
メーカー各社は受注が堅調で、高い稼働率を保っている。
[非塗工上質紙]
2Q初めの値上げ実現以降、8月度の非塗工上質紙価格も概ね安定推移となった。
夏季休暇期で需要は減少、また受注が鈍化していることから、一部でディスカウントも見られるが、
生産操業コストの上昇を背景に、大幅な下落には至っていない。
生産・物流・サービス関連コストは継続的に上昇しており、
一部サプライヤーは9月初旬以降の追加値上げを表明している。
今後の価格交渉の行方が注目される。
[塗工紙]
8月の塗工上質紙市場は受注が低調で、一部でディスカウントが見られたが、
シート・ロールとも契約価格は概ね横ばいとなった。
市場では、UPMとSappiによる印刷情報用紙分野での合弁事業計画が引き続き注目されているが、
EC(欧州委員会)は、市場支配力の強大化と価格上昇、品質の低下の可能性を懸念している。
合弁の行方が不透明ななか、他社も自社の生産調整は様子見している状況で、供給面での大きな動きは見送られている。
[段原紙]
8月度のクラフトライナーは仏・独・ポーランド各市場で価格が据え置かれた。
一方、伊・スペイン市場では追加値上げが浸透している。
北米からの輸入減や定修による供給制限もあり、供給・受注は総じて堅調である。
伊・スペインでは、中芯や白ライナーも値上げが実現している。
またSCAは9月出荷分からクラフトライナーの価格を、更に€100値上げする方針を打ち出しており、
4Qにかけて、段原紙市況は更に上昇基調が強まる可能性がある。
【統計】7月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
2026年7月の紙・板紙合計輸出は14万1,5251トン(前年比4.1%増)、
輸入は7万504トン(同5.4%減)となった。
国内需要は163万9,492トン(前年比0.5%減)となった。
【統計】7月 米国紙・板紙輸入
2026年7月の米国紙・板紙合計輸入は59万3,986トンで前年比7.5%増となった。
金額は6億8千9百万ドル(同15.7%増)となった。
カナダからが前年比減、フィンランド、スウェーデンは同急増。
日本から同大幅減。







