海外情報トピックス
中国の輸入関税延長 中国政府は、主要な紙板紙および紙加工品に対する輸入関税の免除措置を2025年末まで延長した。この措置は、2023年から始まり、2024年末まで延長されていたもの。対象は67種類の紙板紙で、KLB、クラフト紙、新聞用紙は従来のMFN税率が継続適用となる。中国国内の供給過剰、市況の低迷が続く中、輸入量への影響が注目される。 ロシアの輸出補助 ロシア政府は、非友好国への輸出に対する輸送費の60%を補助することを発表した。対象国にはEU、米国、日本などを含む。この措置は、2022年のウクライナ侵攻後の経済制裁に対抗するために始まり、2025年も継続となる。ロシアから中国への紙板紙とパルプの輸出が大幅に増加している。 米国:中国、ベトナム、タイからの輸入紙皿製品に対するアンチダンピング(AD)および相殺関税(CVD) 米国商務省は、それぞれ2024年6月と9月に仮裁定された暫定課税率の決定を受け、その後の審査を経て最終確定を行なった。 具体的な課税率は以下の通り: 1)アンチダンピング(AD) 中国: 267.63%~515.40%、ベトナム: Go-Pak Paper Productsに30.42%、その他のメーカーに165.27%、タイ: 5.57%~73.17% 2)相殺関税(CVD) 中国: 4.47%~295.08%、ベトナム: 5.53%~225.90% 対象HSコードは、4823.69.0040、4823.61.0040、9505.90.4000、9505.90.6000 EC(欧州委員会):中国産輸入化粧板原紙に対するアンチダンピング税暫定税率が確定 欧州委員会(EC)は、中国製の輸入化粧板原紙に対するアンチダンピング(AD)税の暫定税率を確定した。 調査の結果、Hangzhou Huawang New Material Technology社に34.9%、Kingdecor (Zhejiang)には31%の税率が課され、Sunshine Oji (Shouguang) Specialty、Zibo Ou – Mu Specialty、Winbon Technocell New Materialsの3社にも34.9%が適用となる。 Koehler、Felix Schoellerなどの主要メーカーからの申し立てに基づいて調査が行われたもの。 対象となる化粧板原紙は、基準米坪30-150gsm、配分5-50%、樹脂吸収量20-200%、樹脂透過度3-80秒/100ml、幅300㎝以下のリール形状。 EUへの中国からの輸入量は2020年の4,618トンから2023年には24,436トンに急増しており、一方でEU内の需要は2021年の50.1万トンから2023年には37万トンに減少している。 フィリピン;輸入中芯の急増にセーフガード導入の是非を調査開始(フィリピン通商産業省) フィリピン通商産業省の関税委員会は、海外からの中芯輸入急増につき、セーフガードの導入を検討するため調査を開始した。この調査はフィリピン製紙連合会(PULPAPEL)の申立てに基づいて行われ、対象HS Codeは4805.19.10、4805.19.90、4805.12.00等。調査は2019年から2023年の輸入実績に対して行われる。 フィリピンの輸入中芯は、2019年の74,984トンからコロナ禍で一時的に減少した後、2023年に89,311トン、2024年1月から6月までで93,000トンに達し、通年で185,910トンの見通し。主要な輸入国は日本、インドネシア、オーストラリア、ベトナムで、約40%が日本から。 (注)セーフガードの適用は、特定国からの輸入が急増し、国内産業に甚大な影響を与える、またはその恐れがある場合に、輸入制限や暫定的な課税措置を導入するもの。今回の中芯に対する調査は、関税委員会が昨年10月、輸入再生ライナー(2011年にセーフガードが初適用後、2020年6月に適用解除となった)に対し、その後の動向を追跡する中で、セーフガードの再適用の可能性を示唆して調査再開を行なっており(調査は継続中)、今回の輸入中芯に対する調査検討は、それと並行して進められることとなる。 欧州市場;段原紙の新マシンの稼働で市況への影響が懸念 欧州市場における段原紙の供給状況は、このところの新マシンの稼働により、大きな変化を迎えている。昨年春から秋にかけて、メーカー主導で段原紙の市場価格が€100以上上昇したが、その後需要低迷と供給過多を背景に、本年1月までに上昇分とほぼ同額の下落となっており、先行きも極めて不透明な状況となっている。 本年度中には更に複数の新マシンが稼働を迎える予定で、段原紙市況への影響が懸念される。本年の主な新マシンの稼働予定は以下の通り: Norske Skog/Golbey工場(フランス) - 年産55万トン、1Q稼働予定・Heinzel Group/Laakirchen Papier(オーストリア) - 年産55万トン、4月稼働予定・Mondi/Duino工場(イタリア) - 年産21.5万トン、2Q稼働予定 これらの新マシンの稼働に先立ち、2023年にはNorske Skog/Bruck工場(オーストリア、21万トン)、VPK Packaging/Alzay工場(フランス、50万トン)等が稼働しており、低迷する市況の中で、今後も暫くは価格の下方圧力が意識せざるを得ない状況。 欧州では新聞印刷用紙の需要減少で、多くの製紙メーカーが段原紙へ転抄、新規参入を行なってきた。しかし計画の中には、コロナ禍による需要回復の遅れなどから、稼働時期の見直し、計画内容の変更、中止を余儀なくされるケースもあった。 スケジュールが後ろ倒しとなったものの中には、稼働が更に来年以降に持ち越されているものもあり、欧州市場では段原紙市況の軟化が今後も暫く続くであろう。 DS Smith、IP/Porcari工場(イタリア、純増分30万トン)・Eren Paper(Modern Karton)/Shotton工場(英国、70万トン)・Hamburger Container(トルコ)・Stora Enso/Langerbrugge工場(ベルギー)
中国香港市況(2-3月度)
[上質紙、コート紙] 中国市場では、コート紙は春節前後に各メーカーが例年よりも長めの停機を行なったことで、需給バランスは幾分改善した。パルプ価格が底を打ち、各メーカーは2月で値上げ(+200元/㌧)を打ち出した。市場価格には幾分底上げも見受けられるが、商業印刷物・雑誌出版需要は依然として低調で、供給過多の状況は変わっていない。上質紙は 春節明け後も目立つ需要は見られず、2月から3月にかけても市場に改善が見られていない。需要の回復ペースは緩慢で、メーカーの示す価格修正は、受け入れの態勢が全く整っていない状況である。 上質紙では、ナインドラゴンが湖北省荊州工場で60万㌧(3月末)、広西チワン族自治区北海工場で70万㌧(第2四半期)の新マシン増産を控えており、今後は更に供給過多の状況が加速することも懸念される。一方コート紙は、ここ数年にわたり増産が行われておらず、構造的な需要の縮小は続いているものの、上質紙と比較すると、需給のバランスはまだ安定している。 香港市場では、上質紙はチェンミン紙業の生産停止の影響で、他の主要メーカーも年末から値上げの動きを見せてはいたが、春節を挟み不需要期も重なったことから、末端価格に動きは見られなかった。3月に入ってからも状況に目立った変化はなく、実需の回復を待つ以外他に方策を見い出せない状況である。コート紙も上質紙同様に、チェンミン紙業の操業停止をきっかけに、他の中国メーカーが年末から値上げが打ち出されてきたが、香港市場ではこれまでのところ、ほとんど受け入れられていない。中国メーカーは引き続き値上げを模索しており、韓国の主要メーカーなど一部の海外メーカーは、パルプ価格の上昇を受けて$20-程度の値上げを打診し始めた。 アジア市場全般には、主要メーカー側それぞれ、値上げの姿勢は変わらないものの、需要の回復ペースは遅く、回復に期待するほかない状況で、今しばらくは、市況に大きな変化が期待できないと見込まれる。 [段原紙ほか板紙] 中国市場では、昨年末にかけて春節に向けた段ボールの荷動きが活発化したことから、段原紙の価格も、昨年9月頃と比べて、1月までの間に300元程度の上昇となった。しかし、春節(1月末)が近づくと荷動きは低調となり、メーカー各社が1月初に発表していた段原紙価格の値上げ(50-100元)は中旬には撤回された。2月の春節明け後も、需要の立ち上がりが遅く、更に原料古紙(OCC)価格の下落もあって、ナインドラゴンはメーカーの先陣を切って値下げを断行した。その後も数度にわたり値下げを余儀なくされている状況で、値下げの動きは、その後3月に入ってからも続いている。特に華南地区の市場では、昨年末に東莞建暉紙業/広西チワン族自治区北海の新工場で、再生段原紙の新マシン2機(計70万㌧)が稼働しており、今後は供給過多が更に加速し、値上げが一層困難となることが予想される。 香港市場では、アイボリーは11月頃までは、価格にも幾分か回復の様子が見られ、その後も断続的に値上げが模索されてきたが、春節前後での低調な市況は春節明けてその後も長引いており、メーカーの意向に沿った値上げが出来ずに推移している。中国のメーカーはいずれも採算が厳しく、生産コストを価格への転嫁が必須であるが、需要には盛り上がりが一向に見られず、実現は極めて難しい状況である。コートボールは、昨年後半に古紙価格が上昇したこと、アイボリーの価格回復もあり値上げの機運も高まったが、一部のメーカーでは増販を優先するところもあり、顧客からの数量条件によっては値下げ対応を行っている
欧州市況(2-3月度)
新聞用紙は、多くの契約が3か月や6か月であり、2月度で価格に変動は見られない。米国による輸入課税を避けるため、カナダのメーカーは、代替仕向け先として欧州市場にも安価な条件でアプローチしており、今後欧州メーカーとの更なる価格競争が予想される。 上質紙は、パルプ価格の再上昇にもかかわらず、各市場では低迷する需要により、価格の下落が進んでいる。一部のメーカーは、限られた需要に増販の意欲を示し、市場価格は下落が進みやすくなっている。メーカーは生産コスト圧力が厳しい中、Burgoは4月からすべての上質紙の価格の7%値上げを発表、Lecta等も追随している。 コート紙も需要が非常に低調で、供給過剰の状態が長く続いている。コート紙全体では稼働率は約75%程度と低水準に留まっており、生産コストの高騰がメーカー側の利益を圧迫している。需要には回復の兆しが見られず、生産能力の更なる削減が、需給バランスを保つ唯一の方法であるが、今のところ生産削減の動きはほとんど見られない。 段ボール原紙は、メーカー主導で、昨年春先から10月頃まで間に累計€100-140程度上昇したが、需要の低迷によりそれ以降は一転し、価格は1月までの間にで▲€100-程度急落となった。Smurfit Westrockをはじめとする段原紙メーカーは、採算性の改善を目的とし、2月より再び€80-90程度の値上げを発表、ユーザー側を驚かせた。欧州ではKLBからTLBへの需要のシフトが進んでおり、ライナーの増産計画も、ここのところTLBが中心となっている。段原紙市況もTLBの動向が左右する状況となっており、TLBの価格の受け入れ状況がKLBへの影響も含めて注目されるところである。 全体的に、欧州市場では価格競争や生産コストの圧力が続いている。各製品とも市況が弱含みで推移する中、市場価格の維持に努めている。
北米市況(2-3月度)
新聞用紙 2024年度の北米市場の新聞用紙域内需要は前年比▲8.9%の100.6万㌧となった。北米メーカーの輸出は同+8.4%の101.4万㌧で、域内出荷を初めて上回った。カナダの工場が北米の新聞用紙生産能力の85%を占めており、米国市場については、カナダへの25%の輸入関税の行方が注目される。関税導入の場合、コストアップ分を価格に転嫁する見込み。カナダメーカーは欧州、アジア市場等への交渉を活発化させている。 上質紙 1月度の米国市場の上質紙需要は前年比▲2.3%の43.5万㌧。輸入は同+42.2%の9.7万㌧で、国内供給を補っている。昨年末のIP/Georgetown工場閉鎖で需給バランスが安定。主要メーカーが1月以降打ち出した値上げは、2月になって$30-程度受け入れられた。 コート紙 1月度の米国市場の上質コート紙需要は前年比▲6.7%の16.6万㌧。景気低迷やインフレで広告ほか商業印刷物の削減が予想され、需要減退がさらに進む可能性がある。一方で、Sappi/Somerset工場の生産停止(1月末)で、上質コートの稼働率の改善は期待される。 カナダへの輸入関税導入で、価格は上方圧力(値上げ、サーチャージ)がかかりやすくなると予想。主要メーカーが2月以降の値上げを発表し、徐々に受け入れられている模様。 中質紙 1月度の需要は昨年1-2月以降で最高レベルとなった模様。北米の中質紙生産の80%以上はカナダの工場からの出荷。2月以降の上質紙・コート紙の値上げ浸透で、中質紙への代替需要が続くことが期待されるが、中質紙の生産稼働率は、昨年末時点で77%と未だ低率にあり、カナダへの輸入関税の行方は不透明で、今後も都度、生産調整を行いながら進められると予想。 段原紙 段原紙メーカーは、昨年度の2度に亘る値上げ(合計$80-100)に続いて、値上げを打ち出し、2月度でライナー、中芯ともに概ね$40-程度の値上げとなった。2月度の段ボール需要は立ち上がりが遅く、3-4月の需要の盛り上がりに期待している。IP/Red River工場(約80万㌧)の生産停止が4月末に予定されており、需給バランスの改善に期待がかかる一方、北米の全生産量の17%を占める輸出は、各市場の景気低迷により減少傾向。1月度の輸出は前年比▲8%の減少となった
【統計】出荷・輸出入・国内需要状況(日本)
2025年1月の紙・板紙合計輸出は12万289トン(前年比5.8%減)、輸入は6万3,181トン(同1.1%減)となった。国内需要は151万7,130トン(同1.2%増)となった。 国内需要の増加が輸出を押し下げる結果となった。
【統計】米国輸入状況
米国の2024年における紙・板紙主要品種の輸入は合計631万6,124トンとなった。そのうちカナダからの輸入は368万4,561トンで金額は349億603万4千ドルとなった。 試算によると、カナダからの輸入額に関税が25%追加された場合、税額は8億7,400万ドルとなり、数量換算で92万1千トンとなる。(数量換算=関税額/輸入単価) 数量換算はあくまでも現在の輸入数量、動向に変化がない場合というのが前提。 実行された場合に、逆に品種によっては米国内のメーカーあるいは工場が稼働率を高め、あるいはカナダから輸入するコスト増に対してコストを抑えることでシェアを増加する、という動きも考えられる。
日本紙類輸出組合・日本紙類輸入組合 紙類海外動向レポートより