海外情報トピックス
インド/保護主義的通商政策について
インド政府当局による、最近見られる保護主義的な通商政策に次のようなものがある。
貿易救済措置(AD・CVD)の積極的活用;
*中国産化粧板原紙に対する既存AD(2026年末が適用期限)につき、サンセットレビューを開始。措置の継続・強化を視野。
*米国・中国・韓国製の感熱紙に対し新たなAD調査を開始。
*インドネシア製白板紙(コートアイボリー/FBB/SBS等)に対し、最大376ドル/㌧のAD税を5年間課すべく勧告。
*白板紙については、中国・インドネシアに対し、政府補助金による相殺関税(CVD)導入の調査も別途進行。
白板紙については、AD/CVD最終決定前の暫定的措置として、最低輸入価格(MIP)を設定し、
少なくとも本年9月末まで適用。
正式な関税措置発動まで時間がかかることを前提に、MIPで“ブリッジ”的に国内市場を防御する政策。
「MIPによる即時防御」+「AD・CVDによる中長期的な恒久措置」という二段構えで、
1)国内紙・板紙メーカーの収益・シェア防衛
2)市場価格の急落や財務悪化の回避
アジア品紙類(特に中国)の欧州への流入増/EU(欧州連合)の懸念と対抗措置
【状況】
欧州紙・板紙(P&B)産業は、2025年生産:前年比▲1.6% (2021年ピーク比▲7%)
EU消費に占める輸入比率:過去最高の7.7% となった。
依然として設備過剰+需要低迷のなか
アジア(主に中国・インドネシア・トルコ)からの安価輸入が急増。
2026年1-4月の輸入伸び(前年比):
中国から+26%、インドネシアから+23%
中国の紙・板紙生産:
2025年に約1.41億トン(過去最高)、内需は伸び悩み → 過剰能力を輸出で消化
米国の中国産紙類への関税→ 中国の輸出がEU市場へ迂回流入
EU⇔米国間の紙類貿易も縮小(EU→米国▲4.2%、米国→EU▲7.6%)
【EU及び業界の懸念】
中国等のダンピング販売が欧州市場価格を押し下げ
→「産業基盤の緩やかな侵食」 をもたらす。
影響の大きな品目:
板紙(FBB/カートンボード)、ティッシュ、上質紙、感熱紙(軽量感熱紙)等
EUは対外的なAD・SG措置は少ない
EU産の紙類に対する他国からの措置:45カ国
EUが他国に対し行ったケース:6件のみ (以上過去25年間)
→対中措置の強化は、中国側の報復に結び付く可能性あり、欧州側の措置は「諸刃の剣」
(対中板紙輸出量は年間30万㌧超)
【EU側の対抗措置・検討中の対応】
1)貿易・投資対話の強化
2026年6月、EU通商担当欧州委員と中国商務相が「EU・中国貿易・投資協議(TIC)」で合意:
①貿易・投資バランス
②輸出管理(レアアースなど重要資源を含む)
③知的財産権
④WTO改革 の4分野で作業を進めることで一致。
一方、中国は、EUが一方的に貿易防衛措置をとれば報復も辞さない と牽制。
2)貿易防衛措置の強化要求(業界側の動き)
欧州製紙産業連合会(Cepi)はEUに対し:
・AD/SG等貿易防衛措置の迅速化・強化
・過剰生産能力(overcapacity)に特化した、新たなEU制度の創設
・貿易防衛措置決定のルール見直し(採択しやすくする)
を要求。
・中国製FBB板紙につき、対中AD調査の開始を、EC欧州委員会に要請
(業界内の足並みはまだ完全にはそろっていない)。
・欧州感熱紙協会(ETPA)が、中国製軽量感熱紙に対し、反補助金(Anti-subcidy)の調査を正式に要請。
3)EU内で新たな貿易ツールの検討
中国との地経学的不均衡 に対応すべく、既存のAD/SG措置に加えて、過剰生産能力の是正、
輸入急増を抑える新たな制度(ツール)の導入が検討中。
中国/依然旺盛な再生段原紙の増産状況
*数量面の増産の流れ
2024年:約560万トン/年
2025年:約475万トン/年
2026年:現時点で約350万トン/年+αが判明しており、最終的には500〜600万トン/年に達する見込み
*設備投資の特徴
個社で100万トン/年前後の段原紙能力を持つケースが増加。
五洲特種紙のように、もともと特種紙・上質紙等主体のメーカーが段原紙に本格参入の動きが顕著。
*市場環境と構造変化
段原紙市場は数年前から既に供給過多が指摘されていたが、依然として増設が続く。
白ライナー、白板紙(再生)は、食品・飲料向け需要の減少、包装形態の変化で需要が伸び悩み、競争激化・販売苦戦を予想。
旧式・小型マシンの停止・更新の動きもあるが、増設ペースを吸収しきれない。
周辺消費市場向け「地域密着型」の投資が増加、各地で地場向け再生段原紙供給を狙う新設マシンが設置されている。
国産抄紙機の価格低下で、中小メーカーも低コストで投資しやすく、参入障壁が下がった。
*今後の焦点
2024年以降の大規模増産の累積で供給過剰懸念が一層強まっており、
需要回復と旧式設備の淘汰・統廃合が、今後の市場バランスを左右する主要ポイントである。
主要海外市況(7月度)
中国・香港市況
[印刷用紙]
上質紙は、中国メーカーAPRILが香港市場向けに春先にUS$20/mtを2度ほど値上げ実施。
4月以降も値上げが検討されていたが、需要の状況は、中東情勢の影響からさらに不透明としており、値上げは保留となった。
中国市場は、長引く需要の低迷で市況は5月から更に軟調となっている。
7月は出版需要のピークのため一時的に下げ止まることも期待するが、夏場以降は荷動きの鈍化で、概ね下落傾向は続くと見込まれる。
一方コート紙は、香港市場向けは年明けからも需要低迷が続き、APP等の主要メーカーが値上げの意向を示すも、
実現までに至らなかった。
しかし生産コストの上昇もあり、6月には$25-30程度の値上げを打ち出した。
中国市場は需要の低迷から、コート紙市況も依然下落が続いているが、香港を含む輸出市場向けには値上げを行っている。
東南アジア市場は、一部の高付加価値品には堅調な動きが見られるものの、競合品同士の低価格攻勢、
顧客からのコスト削減要求は依然として強く、供給過剰を背景に、メーカーは価格面での柔軟な対応を行っている。
従って値崩れが依然として起きやすい環境にある。
[板紙]
アイボリーは、旧正月休暇で調整停止をしていたマシンが稼働を開始して供給が拡大していることや、
中東情勢の影響で需要が低迷しており、香港市場で見る市況は、4-5月に下落した。
その後、6月にはメーカー主導で値上げが若干行われた。
また白板紙は、原材料の古紙価格が上昇しており、値上げが行われてきたが、需要は概ね低調で、
大きな価格修正には繋がっていない。
一方で段原紙は、古紙価格の上昇を受けた大手段原紙メーカーの値上げが主導、中小メーカーも追随して、
4月以降中国市場では値上げが続いている。
また値上げを予測、先高観により、段ボールメーカーも在庫積み増しを行ない、6月も段原紙価格が著しく上昇した。
今後は8月に夏場の需給の攻防から、幾分かの揺り戻しが予想されるものの、
中秋節・国慶節に向けた需要の前倒しなどによる、9月の需要拡大への期待を背景に、概ね上昇基調が続くと見込まれる。
北米市況
[新聞用紙]
1-5月累計の北米生産は51.5万㌧(前年比▲33.4%)、
域外輸出は19.0万㌧(同▲54.4%)とともに大幅な減少となった。
昨年来、各社からの大幅な生産停止、供給減により、現在供給は非常にタイトで、ユーザーは数量確保を、
サプライヤー側も輸出を大幅減少させ、北米域内を優先せざるを得ない状況。
昨年末から急速な値上げが行われ、その間の上げ幅は$160-に及び、
現在価格(東海岸$920-)は、過去20年間で最高値に近いレベルである。
[上質紙]
1-5月累計の北米需要(見かけの消費)は198万㌧(同▲5.6%)、
輸入は同▲4.7%。2Q以降の価格上昇を意識した在庫積み増し需要で、
値上げも受け入れやすい状況となったが、其の反動により、6月の荷動きは幾分スローダウンとなった。
昨年来、北米メーカーの生産停止・他品種への転抄、
今年も春先のメンテナンス定修や4月末にIP/Riverdale工場16号機の停機などあり、
供給はタイトである。
原油価格・輸送費等の高騰で、価格は年初からこれまで概ね$100-120/㌧程度上昇した。
輸入は昨年8月の追加輸入関税の発動以降、大きく減少し、今年1-5月累計の輸入は同▲4.7%、
最大の輸入国ブラジルからは、わずか1.0万㌧(同▲77.3%減)に留まった。
今後導入が検討される新たな関税の実効税率次第では、上質紙の輸入環境も左右されるため、
今後の動向が注目される。
[コート紙]
1-5月累月の上質コート紙の北米需要は74.9万㌧(同▲3.8%)、輸入は26.2万㌧(同▲5.6%)となった。
中質コート紙の1-5月累計は、需要が27.2万㌧(同▲10.4%)、輸入が6.8万㌧(同▲21.8%)。
今年に入り2月以降市況は持ち直しを見せ、2Q以降の値上げ・先高観による前倒し需要で、荷動きは堅調である。
昨年度のSappi/Somerset工場の生産停止、今年も生産障害の発生などあり、
構造的に需要は低調ながら、供給は非常にタイトである。
価格は中東紛争に端を発した原油・海上運賃等の急騰で、メーカーが打ち出した価格修正(5-10%)は、
7月頃までに受け入れられる見通し。
今後需要面は、年後半の大統領選関連特需が期待されるも、企業の広告費の削減、昨年10月導入の、
カタログ印刷物への時限的総量特別割引(10%)の終了等マイナス要因もあり、市況動向は不透明である。
供給面は、北米需要の30-35%を占める輸入紙は、今後導入される輸入関税実効税率の行方がポイントである。
[中質紙]
*1-5月の累月では、北米需要が同▲8.4%、生産は同▲12.5%、域内出荷は同▲10.9%となった。
依然として需要・生産・出荷いずれも非常に低調である。
供給は、White Birch/F.F.Soucy工場の生産停止、NORPAC/Longview工場がIP買収により、
印刷用紙の生産停止の可能性があり、これらは需給を引き締めることが期待される。
需要面は、SC紙の需要が特に低調、Domtar/Kenogami工場(ケベック州)は、
市況対策で数週間臨時休業を行なった。
高白色度の中質紙は比較的需要は安定し、新聞用紙・上質紙と同様、2月以降値上げが行われている。
[段原紙]
*今年に入ってからも暫くは、昨年同様、段ボールの低調な荷動きは続いていたが、3月後半から、
Wカップ関連の観光関連需要、飲料・食品需要が盛り上がった。
段原紙価格は、今年初め以降、3-4月でネット$50-の価格修正が行われ、
更に原油・国内外の輸送費用高騰で、6月以降も$50-の値上げを行ない、6月中にもほぼ受け入れられた模様である。
昨年2月以降これまでに、累計390万㌧(生産能力の約10%)の原紙の生産能力が削減され、
加えて需要の回復から、供給は現在非常にタイトである。
段ボールメーカーは原紙の確保を、段原紙メーカーも輸出を大幅に削減して、
北米市場を最優先とせざるを得ない状況である。
段原紙の輸出は、1-4月累計で105万㌧(同▲22.0%=▲約40万㌧)に留まっている。
輸出向けの価格も上昇しており、値上げ幅は3月以降$50-100となった。
欧州市況
[新聞用紙]
6月の新聞用紙価格は、第2四半期の契約価格がほぼそのまま適用され、前月から横ばいとなった。
第3四半期の価格交渉では値上げ観測が根強い一方、中東情勢の動向次第で先行きが大きく変わると見られており、
市況は不透明な状態が続いている。
供給面では、UPM・SappiのJV審査の遅延可能性や、
CL Groupへの売却が決まったスペインPapresa社の生産継続可否など、今後の供給構造の変化が注目されている。
[非塗工上質紙]
パルプなど原材料費の上昇と、中東情勢に伴うエネルギー高を価格に転嫁した結果、
欧州市場では4月に€40-50($34-46)の値上げが広く実現した。
しかし、一部サプライヤーが5~6月に追加値上げを狙ったものの、駆け込み需要の反動による需要減退、供給過多、
アジアなどからの輸入品の攻勢が続いているため、5月に続き6月も価格は横ばいで推移した。
夏場に向けて需要は閑散期入りするが、コスト上昇圧力は依然強く、価格水準の維持がサプライヤーの最大の関心事となっている。
[塗工紙]
塗工紙は、中東情勢による市場の不透明感を背景に、4月に欧州市場で€40-50($34-46)の価格修正が実施された。
その後、非塗工上質紙と同様にサプライヤーが5~6月にも追加値上げを試みたが、需要低迷、欧州域内での供給過剰、
アジアを中心とする輸入品の攻勢により、市場は値上げを受け入れず、5月に続き6月も価格は横ばいとなった。
サプライヤー側にはコスト上昇が重くのしかかっており、アジア勢も中東情勢に伴う海上運賃の上昇から、
値上げやコストの価格転嫁姿勢を強めている。
今後も需要回復が見られず値上げが困難な場合、将来的には生産設備の削減や再編などの動きが視野に入る可能性がある。
[段原紙]
再生ライナー(RCCM)では、一部南欧で€20の追加値上げが試みられたものの、
大手サプライヤーが追随せず不発に終わった。
SaicaやHamburgerによる€60の値上げ提案も、市場の支持を得られなかった。
一方、クラフトライナー(KLB)の不足が続いており、再生ライナーへの代替需要はなお多い。
KLBは4~5月の€60の値上げに続き、6月中旬からさらに€60の値上げが打ち出されている。
北米では昨年以降400万トン近い生産能力削減により欧州向け輸出が大幅減少し、
欧州域内メーカーでも生産トラブルやメンテナンス停止が重なったことで、欧州のKLB市場は供給逼迫の状態にある。
【統計】5月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
2026年5月の紙・板紙合計輸出は14万7,987トン(前年比5.1%増)、
輸入は5万6,231トン(同23.1%減)となった。
国内需要は143万6,082トン(前年比5.7%減)となった。
【統計】5月 米国紙・板紙輸入
2026年5月の米国紙・板紙合計輸入は60万3,424トンで前年比3.1%増となった。
金額は6億9千4百万ドル(同8.1%増)となった。
カナダからが前年比減、フィンランドは同急増。
日本から同倍増。







