前号に引き続き、紙パ各社の第1四半期(12年4~6月期)決算を紹介する。景気の低迷や国内紙・板紙市場の縮減を背景に、全体として減収減益基調が鮮明になっている(以下、数値は連結、単位:100万円、カッコ内は前年度比)。
●大王製紙
〔第1四半期業績〕(連結)
売上高 96,127 (▲4.2%)
営業益 1,566 (▲38.2%)
経常益 1,048 (+18.9%)
当期益 377〈前期▲1,291〉
〔通期業績予想〕(連結)
売上高 418,000 (+2.2%)
営業益 13,500 (+28.8%)
経常益 8,000 (+68.5%)
当期益 5,000〈前期▲5,321〉
紙・板紙部門は、売上高が前年度比▲2.9%、利益は同+50.8%。新聞用紙と印刷用紙は販売数量・金額とも前年を下回ったが、段ボールは自動車関連や食品などで上回った。
ホーム&パーソナルケア部門では衛生用紙の販売数量が前年を上回ったものの、単価のダウンで金額は減少。紙おむつはベビー用が数量・金額とも前年を下回ったのに対し、大人用はいずれもプラス。生理用ナプキンは数量・金額が前年比マイナスだった。
なお筆頭株主となる北越紀州製紙を通じて、創業家から子会社・関連会社などの株式を取得することで、連結子会社は第2四半期から18社増加して昨年9月末時点の37社体制に戻り、また新たに連結子会社が増加することも見込んでいる(関連記事6頁)。この結果、通期の業績は微増収ながら大幅な増益となる見通し。
●北越紀州製紙
〔第1四半期業績〕(連結)
売上高 52,929 (▲7.8%)
営業益 1,212 (▲53.1%)
経常益 2,424 (▲39.0%)
当期益 1,426 (▲71.3%)
〔通期業績予想〕(連結)
売上高 231,000 (+0.2%)
営業益 11,000 (+1.6%)
経常益 13,500 (▲2.9%)
当期益 7,500 (▲41.4%)
売上高の減少は前年の大震災に伴う代替需要増加の反動、また輸入紙の流通量増加などによるもの。同様の理由で営業および経常利益も大幅な減益となり、さらに四半期純利益は紀州製紙吸収合併時の税金軽減効果があった前年との対比で、7割超のマイナス。セグメント別の売上高は全体の9割弱を占める紙パルプ事業が9.4%の減収、同1割のパッケージング・紙加工事業が3.1%の増収だった。
●三菱製紙
〔第1四半期業績〕(連結)
売上高 50,905 (+21.1%)
営業益 629〈前期▲661〉
経常益 420〈前期▲851〉
当期益 ▲313〈前期▲4,107〉
〔通期業績予想〕(連結)
売上高 215,000(+10.3%)
営業益 6,500(+200.3%)
経常益 4,000(+350.4%)
当期益 3,000(+430.3%)
長期化する円高や国内景気の低迷の影響を受け、厳しい商況が続いているが、第1次中期経営計画のもとで昨年秋以降、収益基盤強化を図っている。
セグメント別に見ると、紙・パルプ部門は主力の八戸工場が全面復旧したこともあって、売上高が前年同期比66億1,600万円増(+19.5%)の405億2,900万円、営業利益が同13億5,100万円増の3億5,900万円となり、著しい回復力を見せている。
昨年10月にKJ特殊紙が子会社として加わった機能材事業部門は、同じく17億3,300万円増(+106.5%)の33億6,000万円と売上高が倍増。ただし営業利益は8,500万円と微減(▲1.2%)。
イメージング事業部門は売上高が10億400万円増(+11.1%)の100億6,600万円と増収だったが、営業利益は6,600万円減(▲33.7%)の1億3,200万円。写真感光材料などが健闘したものの、インクジェット用紙は国内需要の不振から前年割れだった。
●特種東海製紙
〔第1四半期業績〕(連結)
売上高 19,063 (▲2.5%)
営業益 1,411 (+9.4%)
経常益 1,461 (+6.9%)
当期益 202 (▲70.3%)
〔通期業績予想〕(連結)
売上高 78,000 (+0.4%)
営業益 4,200 (+28.4%)
経常益 4,000 (+0.3%)
当期益 2,200 (約58倍)
震災復興需要などによる景気回復の兆しも一部に見られるが、全体としては先行きの不透明感が拭い切れず、それが業績にも反映されている。また当期売上高の減少には、連結子会社だった大一コンテナーが、トーモクへの株式70%譲渡で3月から持分法適用関連会社に移行した影響も現れている。
セグメント別に見ると、産業素材事業部門では主力の段ボール原紙が、飲料関係の堅調な需要にもかかわらず、全体としては前年同期にあった前倒し需要の反動減などから販売数量が減少。特殊素材事業部門ではファンシーペーパーや高級印刷紙が、ともに前年並みの販売数量を確保した。生活商品事業部門は、主力のペーパータオルやトイレットペーパーが前年を上回る販売数量だったが、競争激化のため利益面では厳しい結果となっている。
●巴川製紙所
〔第1四半期業績〕(連結)
売上高 8,587 (▲8.1%)
営業益 163 (▲66.6%)
経常益 245 (▲51.0%)
当期益 232 (▲22.1%)
〔通期業績予想〕(連結)
売上高 36,000(+3.7%)
営業益 700(+135.5%)
経常益 700(+147.7%)
当期益 450(+138.0%)
主力事業の一つであるプラスチック材料加工事業では、前年度の第2四半期頃からプラズマTV向けのFPD(フラットパネルディスプレイ)需要が大きく落ち込み、これが結果的に今4~6月期の決算内容にも影を落としている。ただしFPDについては前期から生産調整を含むコスト削減に取り組んでおり、すでに1~3月期には微減収・増益まで持ち直している。
一方、製紙・塗工紙関連事業では塗工紙の減少が続く中、機能紙分野の新製品が売上げのリード役となって、売上高は前年同期比+1.8%の32億9,000万円、営業利益は同+31.9%の1億4,200万円と健闘した。
株式会社 紙業タイムス社 「Future9/3号」より