日本製紙は、木材を原料とする養牛用「高消化性セルロース」を開発、このほど乳成績の向上などの効果を確認した。
高消化性セルロースは、木材チップを脱リグニン処理した純度の高いセルロース繊維の集合体。牛が消化しやすいセルロース繊維だけを取り出すことで、繊維量が多くかつ栄養価が高い、新しい素材となる。国内製造なので、年間を通じて一定品質で供給できるという特長もある。
日本製紙は、この養牛用高消化性セルロースを開発して特許を取得し、2015年から国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)畜産研究部門と共同で基礎検討を重ねてきた。そして、今年4月から民間の牧場で乳牛に給与した結果、乳成績の向上などの検証結果が得られたもの。
高消化性セルロースの消化率の上昇速度は、同じ繊維質飼料である牧草と類似しており、給与直後の消化が遅い一方、最終的には栄養価の高い濃厚飼料(トウモロコシ)並に高い消化率となる。
また、高消化性セルロースは牧草同様、ルーメン(第一胃)内で穏やかに発酵するため急激なpH低下が見られず、ルーメン内のpHが高めに安定する。これにより、ルーメンアシドーシスの予防効果が期待できる。ルーメンアシドーシスとは、ルーメン内が酸性に傾くことを言い、酸性化によって乳房炎、繁殖障害、食欲減退などを引き起こすことがある。
日本製紙は、10月9~11日に幕張メッセで開催された「第1回 国際畜産資材EXPO」に、「高消化性セルロース」を出展し、その有用性をPRした。同社では、「今後も“木”を総合的に利用する事業を幅広く展開していく」と述べている。
株式会社 紙業タイムス社 「Future10/28号」より