日本製紙は、CO2吸収能力が高く成長に優れ、花粉量が少ない「エリートツリー等」の苗生産事業を全国に拡大する。
エリートツリー等とは、森林のCO2吸収固定能力向上のため、成長に係る特性が優れたものとして、農林水産大臣により指定された特定母樹由来の苗木(特定苗木)。
同社はすでに熊本県と北海道でエリートツリー等の苗生産を開始しているが、新たに今回、林業種苗法に基づくスギ種苗配布区域(国内7区域)のうち、三区(静岡県)、四区(鳥取県、広島県北部)、五区(広島県南部)、六区(大分県)の4地域でスギ・ヒノキのエリートツリー等の増殖に係る特定増殖事業計画を申請し、各県で特定増殖事業者として認定を受けた。同社は2024年から、これらの区域でエリートツリー等のコンテナ苗を生産する。
日本製紙は今後、苗生産に必要な種子や穂木を生産するため、当該各地に採種園・採穂園を造成するとともに、地元の山林種苗協同組合員や新規生産者と協業体制を構築していく。採種園については、ビニールハウス内で人工交配を行う閉鎖型の施設とすることで、エリートツリー同士を確実に交配する。これにより、従来の露地での開放型に比べ、エリートツリーの特徴が充分に引き継がれた種子の早期生産と生産量の増加が可能になる。なお、これら採種園・採穂園の造成にあたっては国補助(早生樹等優良種苗生産推進対策)を申請する予定。
計画では、60万本規模のエリートツリー等の苗増産を見込んでおり、採種園・採穂園の造成地を拠点として都道府県を跨ぐ広域的な種苗の流通についても検討を進める。さらに、将来に渡る需要動向を見極めながら、規模拡大と残る区域への展開も図る。
このほか、社有林の再造林地に、自社で生産したエリートツリー等の苗を順次植林していく。林野庁は、林業用苗に占めるエリートツリー等の割合を30年までに3割、50年までに9割以上を目指すとしており、日本製紙ではこの方向性に沿って社有林のエリートツリー化を目指す。
株式会社 紙業タイムス社 「Future2/14号」より