王子ホールディングスは、国内に保有する社有林の経済価値を算定し、その結果を公表した。
近年は、企業活動による自然へのインパクトやリスクなどを評価し開示することが求められている。同時に、森林、土壌、水、大気、生物資源などの自然資本を経済価値としてとらえた自然資本会計の制度化の動きも始まっている。
王子HDは東京都の約3倍の大きさの森林を保有し、その社有林を「王子の森」と呼んでいる。国内では民間企業最大級の面積であり、海外分も合わせるとその規模は約63.5万haにのぼる。同社が今回、経済価値を評価したのは国内に保有する「王子の森」約18.8万haで、林野庁が公表している「森林の公益的機能の評価額について」の手法をもとに算出した。
それによると、王子の森の価値総額は年間約5,500億円で、内訳は、①土砂流出・崩壊防止2,750億円、②水源涵養2,040億円、③生物多様性保全430億円、④大気保全・保健休養280億円。ちなみに王子の森の水源涵養量は約510万で、これは1日当たり1,690万人分の生活用水を蓄え、作り出す能力に相当する。
また、王子の森には3,000種以上の生物が生息し、うち約1,400種が希少種であることも推定された。特に北海道猿払村の王子の森は、世界の北方林の南限に位置し、泥炭が蓄積する湿地帯を有する。絶滅危惧種の淡水魚イトウが生息するなど、生物多様性の重要度が高いと考えられるため、王子HDは北海道大学や生物多様性可視化の技術を持つスタートアップと協働し、自然資本の価値を測り定量的に評価するプロジェクトを開始した。
株式会社 紙業タイムス社 「Future10/7号」より