三省堂書店は今秋、「三省堂書店オンデマンド出版」を東京都千代田区の神保町本店で開始する。
　「三省堂書店オンデマンド出版」の最大の特徴は、店頭でのオンデマンド出版だということと、１部からでも出版できる点。これまでにもオンデマンド印刷サービスはあったが、印刷所内の大型オフセット印刷機や大型デジタル印刷機で制作するため、顧客の目の前で短時間に印刷するスタイルはなかった。また、注文数が最低ロットに達するまでに日数がかかり、なかなか印刷できなかったり、あるいは出版されないことも多かった。「三省堂書店オンデマンド」は、最低１部からの出版が可能であり、店頭で注文すればコーヒータイムほどの短い待ち時間で本が出来上がる。ほぼ目の前で印刷、無線綴じ、三方裁断された本を、その場で受け取れるわけだ。
　店頭で注文できる書籍の第１陣としては、300万点超の学術書を中心とする洋書のほか、日本語の書籍ではデジタル化済みのものについて各出版社の協力を得る予定で、今後ラインアップの充実を図っていく。また実施店についても、当初は神保町本店のみだが、順次サービス店舗を拡大する計画。
　この無在庫・品切れなしの「店頭オンデマンド出版」は、アメリカの著名出版人として名高いジェイスン・エプスタインによって提唱され、オンデマンドブックス社（ニューヨーク）が販売する「The Espresso Book Machine」によって実現したシステム。三省堂は、「今後、このサービスを通じて、古今の日本語書籍を日本市場はもちろん海外市場でも手軽に流通させるに当たり、国内出版各社の協力を広く求めていく」としている。
 

株式会社　紙業タイムス社　「Future　9/27号」より