新エネルギー・産業技術総合開発機構(=NEDO)は、木質バイオマスからバイオエタノールを低価格で効率よく生産する技術を確立するため、王子製紙・呉工場内に国内最大級の試験用パイロットプラントを建設して実証試験を開始する。NEDOが2009年度から王子製紙、新日鉄エンジニアリング、産業技術総合研究所に委託して研究を進めている「セルロース系エタノール革新的生産システム開発」の一環として行われるもの。
バイオエタノールは再生可能エネルギーであり、地球温暖化対策の観点から非常に重要なエネルギー源。しかしバイオエタノールの開発・導入に当たっては、十分な温室効果ガス削減効果と、生物多様性、経済性や供給安定性の確保、食料との競合回避などに配慮しなければならない。
ブラジルや米国では、すでにサトウキビやとうもろこしから製造したバイオエタノールをガソリンと混合して自動車用燃料に使用しており、今後は世界各国でバイオエタノールの使用量が増加すると考えられているが、サトウキビやとうもろこしなどからエタノールを生産すると、食料と競合し食料価格が高騰する恐れがある。このため、バイオエタノールのさらなる普及には、食料と競合しない木質バイオマス(未利用の枝や葉、製紙用原料として利用できない残材、短期伐採した早生樹など)を活用したエタノールの生産技術開発が必要となる。今回の実証試験は、こうした木質バイオマスからのエタノール生産を目指すもの。
株式会社 紙業タイムス社 「Future 1/16号」より