丸紅のプラント・産業機械部門は新規の植林地を保有するアンガラ製紙との間で、年産120万tのパルプ工場をロシアのクラスノヤルスク地域に建設する準備を進めている。
丸紅がパルプ工場を建設する契約は、9月8日にウラジオストックで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)会議で、ロシアのプーチン大統領と日本の野田首相が会談した後、正式に取り交わされた。
関係者によれば、機材調達と建設に関する2社間の合意に基づき、丸紅が35億㌦のパルプ工場を完成後に引き渡す契約だという。つまりプラント輸出であり、今のところ丸紅が事業に出資したりパルプの販売に関わる計画はない。このプラントは年産90万tのNBKPラインと同30万tのDPラインから成る。
工場の建設予定地はシベリア中部地方、クラスノヤルスク近郊の都市レソシビルスク。エニセイ川の河畔に広がる土地で、同地方における木材産業の中心地である。2017年の稼働開始を目指しており、建設工事は来年初めに着工の予定。
プロジェクトが進展することを前提にスウェーデンのセドラが昨年4月、アンガラ製紙との間でパルプ販売の代理店契約を結ぼうとしていた。PPIヨーロッパ誌によれば、この契約条件で、セドラはアンガラ製紙株式の10%を保有するか、またはパルプの販売に応じた口銭を受け取れるようになっていた。だが理由は不明ながら、最終的な契約は両社の間で調印されなかった。
したがって丸紅は現時点で、パルプ販売代理店の有力候補でもあるが、同社の紙パ部門はこのところ、材の生長スピードの速い南半球での事業機会拡大に注力しており、ロシアのNBKPは必ずしも視野に入っていなかったと思われる。設備が稼働する2017年時点での国際的なパルプ市況など不透明な部分は多いが、南のLと北のNをうまく組み合わせて、より付加価値の高い事業を形成していけるかどうか注目される。
株式会社 紙業タイムス社 「Future10/1号」より