三菱製紙は、産業用インクジェット印刷機向けに、オフセットコート紙の風合いを持つインクジェット用紙を開発、業界に先駆けて商品化した。製品名は『SWORD iJET』（ソードアイジェット）。刀剣（＝sword）の“刃”を思わせる高光沢感と画質の切れ味のよさから名づけた。同製品は、5月にドイツのデュッセルドルフで開催された世界最大の印刷機材展『drupa2012』で発表され、非常に大きな反響を呼んだ。
　『SWORD iJET』の設計コンセプトは、インクと印刷機を選ばない「ユニバーサルペーパー」。この実現のため、日欧米系ハードメーカー、ヘッドメーカー、インクメーカーの協力を得て、それぞれの印刷システムに最適化すべく開発を進めた。高砂工場と京都工場で生産している高級IJ専用紙の廉価版ではなく、基幹工場である八戸工場で、“オフセット紙にIJ適性を付与する”という発想のもと、独自技術である「Pore-Arch Technology」を構築してIJ適性と後加工適性を両立させた。価格とのバランスを取りつつ、なおかつオフセット紙の風合いを備える製品に仕上げている。
　プリンター適性も非常に幅広い適合性を示しており、大日本スクリーン製造のTruepress Jet520、Truepress JetSX、リコープロダクションプリントソリューションズ・ジャパンのInfoPrint 5000、KodakのProsper5000XLなど、数多くのIJ印刷機で、水性顔料インクだけでなく水性染料インクでも高い発色性を発現。品揃えは、4.3グロス（104.7g/㎡、127.9g/㎡、157g/㎡、186g/㎡）、4.3マット（127.9g/㎡）で、全銘柄ともFSC森林認証紙の対応が可能。
　なお『SWORD iJET』は、Eastman Kodak CompanyのProsper Press評価システム（＝PPRS）で、5段階の最高品位であるFive-Diamondを受賞。Kodakの産業用IJ印刷機Prosper Pressで、産業用IJコート紙としては最高レベルの発色性を実現し、オフセットコート紙に匹敵する品質を持つと認められたことになる。
　三菱製紙は『SWORD iJET』を、震災で甚大な被害を受けながらも昨秋全面復旧した八戸工場の復興のシンボルの一つとして、世界市場に向けて販売していくとしている。
 

株式会社　紙業タイムス社　「Future11/19号」より