王子ホールディングスと(公社)生態系トラスト協会(高知県高岡郡四万十町、中村滝男会長)は、絶滅危惧種に指定されているヤイロチョウなどの生息環境を保全するため、8月23日に「ヤイロチョウ保護協定」を締結した。
協定の対象地は、王子HDが高知県四万十町に保有する木屋ヶ内(こやがうち)社有林約260ha。生態系トラスト協会が2014年に同社有林内を調査したところ、ヤイロチョウが複数つがい生息していることが明らかになった。そこで両者は、将来にわたってヤイロチョウが生息できる環境を保全するため、保護協定を締結することにしたもの。
ヤイロチョウは体長18~20㎝ほどの渡り鳥で、「八色鳥」とも書くように複数の体色を持つ美しい鳥(写真)。高知県の県鳥および四万十町の町鳥にも指定されており、日本には春から初夏にかけて飛来し、九州、四国などの照葉樹林で繁殖した後、秋にタイやボルネオ方面へ渡って冬を越すと言われているが、まだ詳しい生態は分かっていない。環境省レッドリストでは「絶滅危惧ⅠB類(近い将来における野生での絶滅の危険性の高いもの)」に指定されている。
このほど王子HDが協定を締結した生態系トラスト協会は、ヤイロチョウなど多様な生物の生息環境の保全を目的として活動している環境保護団体。これまでにヤイロチョウや森林生態系の保全を目的として約280haの山林を取得しているほか、四万十町などの協力を得て、ヤイロチョウ保護を主な目的とした研修施設「四万十ヤイロチョウの森ネイチャーセンター」を開設、運営している。
王子グループは、国内外に約47万ha(東京都の面積の約2倍に相当)の森林を有しており、「持続可能な森林経営」を環境行動目標として掲げている。その一環として、森林の持つ生物多様性保全の取組みを進めており、国内最大の淡水魚イトウの保護(北海道猿払山林)、高山植物の保全(北海道様似山林)などの活動を行ってきた。同社は「今後も、森林の持つ多様な機能の維持推進に取り組んでいく」としている。
株式会社 紙業タイムス社 「Future9/12号」より