=紙パの第3四半期②=
前号に続き、紙パルプ関連各社の2022年3月期第3四半期(21年4~12月)決算を紹介する。以下、連結ベース、単位100万円、%表記は対前年同期比、〈 〉内は前年同期の実績値。
【製紙】
■日本製紙
〔第3四半期〕
売上高 773,976 (+4.8%)
営業益 10,423 (△2.6%)
経常益 11,285 (+279.3%)
当期益 2,387 (+2.2%)
〔通期予想〕
売上高 1,030,000 (+2.2%)
営業益 14,000 (△27.2%)
経常益 14,000 (+14.0%)
当期益 1,000 (△68.7%)
前1Qで印刷用紙の需要が大幅に落ち込んだ反動増や、豪州・ニュージーランドでの板紙パッケージ事業の譲受けなどにより増収となった。営業利益は、世界的な原燃料価格の高騰などにより減益。
○紙・板紙事業…売上高△6.0%、営業損失△2,221百万円(前年同期比△2,051百万円)。新聞用紙は地震による抄紙機の一部操業停止などで販売量が減少。印刷用紙と板紙の販売量は増加。
○生活関連事業…売上高+24.0%、営業利益△51.9%。家庭紙は、需要の回復に加え、㈱トライフとの営業統合効果もあり増収。液体用紙容器は、給食牛乳向け容器の需要は回復したものの家庭用牛乳向け容器が減少し、販売量は減少。海外事業は板紙パッケージ事業の譲受により大幅増収。
○エネルギー事業…売上高△5.5%、営業利益△75.0%。
○木材・建材・土木建設関連事業…売上高+9.4%、営業利益+44.5%。
通期予想は、21年11月公表の業績予想から変更なし。
■大王製紙
〔第3四半期〕
売上高 447,528 (+8.5%)
営業益 27,636 (+6.8%)
経常益 25,973 (+9.9%)
当期益 17,015 (+1.8%)
〔通期予想〕
売上高 600,000 (+6.6%)
営業益 38,000 (+3.1%)
経常益 35,000 (+1.5%)
当期益 21,000 (△5.0%)
紙・板紙の販売は数量・金額ともに増加。ホーム&パーソナルケア事業は、ペーパータオルやソフトパックティシュなどが好調な中で、新設備稼働が販売増加に寄与。海外事業はタイ、インドネシア、ブラジルでコロナ禍の行動制限が続いていることや、パルプ・荷資材価格の高騰により減益。なお、3Qは売上高、営業益、経常益、当期益のすべてで過去最高を記録。
○紙・板紙…売上高+8.7%、セグメント利益+39.7%。新聞用紙、洋紙、板紙・段ボール、いずれも販売量・金額が増加。原料の古紙、石炭などの価格高騰はあるが、生産性改善などによって利益も増益。
○ホーム&パーソナルケア…売上高+7.4%、セグメント利益△32.7%。衛生用紙、ベビー用紙おむつ、マスクは販売量・金額ともに増加。大人用紙おむつとフェミニンケア用品は販売量が増加し、金額は前年並み。ウエットワイプは販売量・金額ともに減少。海外事業は、子会社増加もあり販売金額が増加。紙・板紙全体の利益は、海外事業の環境悪化で減益。
○その他…売上高+16.7%、セグメント利益+18.8%。
通期予想は、21年5月公表の業績予想から変更なし。
■北越コーポレーション
〔第3四半期〕
売上高 193,984 (+20.0%)
営業益 16,473 〈△2,890〉
経常益 23,113 (約13.3倍)
当期益 22,580 (+205.9%)
〔通期予想〕
売上高 260,000 (+16.9%)
営業益 18,000 (+957.6%)
経常益 25,000 (+156.2%)
当期益 21,000 (+48.2%)
コロナ禍で落ち込んだ20年に比べ、21年は持ち直しの動きが出た。
○紙パルプ事業…売上高+23.7%、営業利益15,406百万円(前年同期比+19,159百万円)。特に洋紙、白板紙の販売量が増加し増収増益。
○パッケージング・紙加工事業…売上高△12.7%、営業利益△84.6%。液体容器の形状変更による受注減少などにより減収減益。
○その他…売上高△1.1%、営業利益+134.8%。一部事業の営業が終了したことなどにより減収。損益面はコストダウン効果で増益。
通期予想は、21年11月公表の業績予想から変更なし。
■中越パルプ工業
〔第3四半期〕
売上高 65,850 (+12.5%)
営業益 1,931 〈△2,076〉
経常益 2,424 〈△2,221〉
当期益 1,190 〈△2,596〉
〔通期予想〕
売上高 88,500 (+8.0%)
営業益 2,000 〈△347〉
経常益 2,500 〈△319〉
当期益 900 〈△1,052〉
稼働率の向上やコスト削減により、損益面が大きく改善。
○紙・パルプ製造事業…売上高+14.7%、営業利益1,162百万円(前年同期比+4,349百万円)。新聞用紙は販売量・金額ともに減少。印刷用紙、包装用紙、特殊紙・板紙・加工品、パルプは販売量・金額ともに増加。
○発電事業…売上高△7.5%、営業利益△48.3%。紙生産量増加に伴う売電量減少や燃料価格上昇により減収減益。
○その他…売上高+13.6%、営業利益+518.1%。
通期予想は21年5月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は、売上高+3,500、営業益+350、経常益+750、当期益+200。経済活動の持直し、工場稼働率の向上やコスト低減などにより、当初計画を上回る見込み。
【製紙関連】
■リンテック
〔第3四半期〕
売上高 191,245 (+11.3%)
営業益 17,770 (+51.9%)
経常益 18,558 (+62.0%)
当期益 13,373 (+68.5%)
〔通期予想〕
売上高 255,000
営業益 22,000
経常益 22,500
当期益 16,000
半導体・電子部品関連製品が順調に推移したことに加え、他の製品も前年に比べて需要が回復した。
○印刷材・産業工材関連…売上高+15.0%、営業利益1,312百万円(前年同期比+1,829百万円)。シール・ラベル用粘着製品は粘着紙、粘着フィルムともに堅調。海外は米国、中国、アセアンが好調。自動車用粘着製品やウインドーフィルム、装飾用フィルムも大きく回復。
○電子・光学関連…売上高+6.9%、営業利益+39.8%。半導体関連粘着テープと関連装置、積層セラミックコンデンサ関連テープが好調。光学ディスプレイ関連粘着製品も堅調に推移した。
○洋紙・加工材関連…売上高+10.1%、営業利益△9.3%。洋紙、加工材ともに増収。
通期予想は、21年11月公表の予想を修正した。修正額(単位100万円)は、営業益+1,000、経常益+1,000、当期益+1,000。3Qで半導体・電子部品関連が好調だったことなどから上方修正した。
■巴川製紙所
〔第3四半期〕
売上高 24,254 (+10.8%)
営業益 1,641 〈△681〉
経常益 1,992 〈△513〉
当期益 1,458 〈△1,478〉
〔通期予想〕
売上高 34,000 (+10.5%)
営業益 1,800 〈△15〉
経常益 2,200 〈145〉
当期益 1,800 〈△1,152〉
半導体関連やトナーが堅調な中、円安も追い風。なお、1Qから収益認識会計基準を適用しており、従来基準による売上高は+17.0%。
○トナー事業…売上高+27.0%、セグメント利益871百万円(前年同期比+1,348百万円)。従来基準による売上高は+39.6%。
○電子材料事業…売上高+14.2%、セグメント利益+162.5%。従来基準による売上高は+21.5%。半導体関連が好調を維持した。
○機能紙事業…売上高+1.6%、セグメント損失△79百万円(前年同期比+354百万円)。従来基準による売上高は+3.8%。
○セキュリティメディア事業…売上高△8.5%、セグメント利益+94.0%。従来基準売上高は△8.0%。
○新規開発事業…売上高+47.9%、セグメント損失△328百万円(前年同期比△51百万円)。
○その他の事業…売上高+3.0%、セグメント利益+129.0%。
通期予想は21年10月公表の予想を修正した。修正額(単位100万円)は、売上高+1,000、営業益+400、経常益+600、当期益+600。半導体やトナーの好調などを踏まえて上方修正した。
株式会社 紙業タイムス社 「Future2/28号」より