大日本印刷(=DNP)と取次大手のトーハンは、トーハン桶川センター(埼玉県桶川市)への書籍製造ライン導入に向けた協議を開始する。取次の流通拠点内で書籍を製造するのは国内初の取組み。製造ラインは、DNP久喜工場(埼玉県久喜市)のデジタル製造機械の一部を移設する予定で、2025年度中の運用開始を目指す。
DNPとトーハンは、需要に応じた商品供給を強化し、書店などでの欠品を減らして販売機会の増大に繋げるため、21年から出版流通改革に向けた協業を進めてきた。返品率が10%以下と言われるドイツの出版流通構造を参考に流通基盤を整備し、現状30%を超える返品率の低減を目指すと同時に、返品書籍の輸送や断裁に伴う環境負荷の低減も視野に入れている。
今回の書籍製造ライン導入では、POD(Print on Demand)技術を用いた「桶川書籍デジタル製造ライン」の新設を目指す。出版社と連携して書籍製造用のコンテンツデータを預かり、少部数にも対応した印刷・製本を行い、注文から短時間で出荷・販売する。書店への配送拠点であるトーハン桶川センターで書籍を製造することで、製造と流通の連動を強化し、デジタル印刷を取り入れた柔軟な供給体制を構築する。これにより、読者の満足度を高めつつ、書店や出版社の販売機会を拡大すると同時に、返品の削減にもつなげる。
なお、両社は今後、「桶川書籍デジタル製造ライン」の実現に向け、先行的に一部の出版社・書店と連携し、DNPの既存製造ラインで試験的な製造と検証に取り組む。また、デジタル印刷用データのラインアップ拡大に向けて「コンテンツデータバンク」を構築していくため、出版社や書籍製造会社との連携を強化する。コンテンツデータバンクでは、紙の書籍に加えて音声や動画など、多様なコンテンツのデータを一元管理し、ワンストップで製造・流通させるためのデータベース構築を目指す。
株式会社 紙業タイムス社 「Future11/20号」より