リンテックはこのほど、次世代半導体の微細回路形成に欠かせないEUV露光機用ペリクル(防塵材料)の要素技術を確立した。
通信システムの高機能化・高速化に伴い、半導体回路パターンの微細化が進んでいる。微細回路の形成にはEUV(Extreme Ultraviolet:極端紫外線)露光機が用いられるが、露光機の性能向上に伴って、より高耐久のペリクルの開発が求められるようになってきた。
ペリクルとは、フォトマスク(回路パターンの原版)への異物の付着を防ぐ防塵膜となる部材で、半導体の生産性を向上させる役割を果たす。性能として、5nm(ナノメートル)以下という微細な回路を形成するEUVに対する透過性や耐熱性、耐久性が要求される。
従来、ペリクルにはポリシリコンなどをベースにした部材が採用されてきたが、より高耐久の新たな部材が必要になったことから、近年はカーボンナノチューブ(=CNT:筒状炭素分子)製のペリクルが注目されている。リンテックグループでは、CNTシートの開発を手がける米国・テキサス州の研究開発拠点「Nano-Science & Technology Center(=NSTC)」において、以前からCNTの新たな用途展開を模索してきた。その一つとして2018年から、CNT製ペリクルの開発に着手し、より高度の要素技術を確立するに至ったもの。
CNTは直径がnmレベルの非常に細い炭素材料でありながら、高温環境で使用しても化学変化や強度低下を引き起こしにくく、厳しい環境下でも利用しやすい特性を持つ。さまざまな用途での応用が期待されており、リンテックグループは、特にこの半導体関連分野での用途展開を見据え、25年度までに新たに約50億円を投じて、第一次量産体制の構築を進める。
株式会社 紙業タイムス社 「Future1/1号」より