=2024年3月期①=
紙パ関連各社の2024年3月期決算(23年4月~24年3月)の発表が始まった。今号より順不同で紹介していく。以下、連結ベース、単位100万円、%表記は対前期比、〈 〉内は前期の実績値。
【製紙】
■王子ホールディングス
〔2024年3月期〕
売上高 1,696,268 (△0.6%)
営業益 72,600 (△14.4%)
経常益 85,987 (△9.5%)
当期益 50,812 (△10.0%)
〔2025年3月期予想〕
売上高 1,950,000 (+15.0%)
営業益 95,000 (+30.9%)
経常益 100,000 (+16.3%)
当期益 75,000 (+47.6%)
ニュージーランドのPan Pac Forest Productsのサイクロン被災やパルプ市況悪化により減収となった。利益も、主に海外でのパルプ市況悪化により減益。海外売上高比率は前期を2.7ポイント下回る34.9%。
○生活産業資材…売上高+2.3%、営業利益212億円(前期比+225億円)。多くの品種で販売量が減少したが価格修正で増収。紙おむつ売上高は、子ども用は前年並み、大人用は増収。海外事業は、段原紙と段ボールが減収、紙おむつは増収。利益は、国内の市況好調で増益となったが海外事業は減益。
○機能材…売上高+3.5%、営業利益△41.4%。国内事業は特殊紙、感熱紙ともに価格修正などにより増収。海外事業の感熱紙も価格修正で増収。利益は、国内外ともに値上げ効果はあったものの、数量減と原料価格差などにより減益。
○資源環境ビジネス…売上高△15.2%、営業利益△71.4%。国内事業は、溶解パルプの堅調やバイオマス発電所稼働開始による増収はあったが、木材事業で建設・梱包用の木材が低調に推移し、売上高は前年並み。海外事業はパルプ市況悪化に加え、ニュージーランドのサイクロン被害で減収。利益は被災と市況悪化で減益。
○印刷情報メディア…売上高+6.5%、営業利益168億円(前期比+216億円)。国内は価格修正により増収。海外は江蘇王子製紙で経済回復が鈍く、売上高は前年並み。利益は国内の市況好調で増益。
■日本製紙
〔2024年3月期〕
売上高 1,167,314 (+1.3%)
営業益 17,266 〈△26,855〉
経常益 14,550 〈△24,530〉
当期益 22,747 〈△50,406〉
〔2025年3月期予想〕
売上高 1,200,000 (+2.8%)
営業益 23,000 (+33.2%)
経常益 19,000 (+30.6%)
当期益 3,000 (△86.8%)
価格修正が寄与して増収となり、これにコストダウン効果が加わり営業益が黒字に転じた。また、Opal社のグラフィック用紙事業撤退に係る特別退職金など10,268百万円の特別損失が発生したが、固定資産売却益26,637百万円を特別利益に計上し、最終損益も黒字転換。
○紙・板紙事業…売上高+1.2%、営業利益11,685百万円(前期比+40,906百万円)。国内販売量は新聞用紙、印刷・情報用紙、板紙いずれも減少したが、価格修正で増収。
○生活関連事業…売上高△0.7%、営業損失△8,062百万円(前期比△244百万円)。家庭紙は価格修正により増収。液体用紙容器は、販売量は若干減少したが価格修正や充填機販売台数増加により増収。溶解パルプも増収。海外事業はOpal社のグラフィック用紙事業撤退で大幅減収。
○エネルギー事業…売上高+7.6%、営業利益1,599百万円(前期比+3,333百万円)。勇払のバイオマス専焼発電設備の運転開始などにより増収。
○木材・建材・土木建設関連事業…売上高+9.6%、営業利益+10.1%。燃料チップの需要増加などにより増収。
25年3月期は、設備メンテナンスが上期に集中し、Opal社の生産体制最適化の効果発現は通期で段階的に進むと見込んでいることから、上期業績は落ち込むものの、下期には回復すると見ている。このほかOpal社の構造改革に伴う特別損失を計上する見込み。
■大王製紙
〔2024年3月期〕
売上高 671,688 (+3.9%)
営業益 14,367 〈△21,441〉
経常益 9,622 〈△24,050〉
当期益 4,507 〈△34,705〉
〔2025年3月期予想〕
売上高 700,000 (+4.2%)
営業益 15,000 (+4.4%)
経常益 7,000 (△27.3%)
当期益 1,000 (△77.8%)
紙の市場縮小やホーム&パーソナルケア事業の中国での苦戦はあったが、収益力の復元が一定程度進み、またブラジル子会社の収益貢献もあって全段階の利益が黒字転換した。在外子会社への外貨建て債権に対する為替差益が想定以上だったことも増益に寄与。
○紙・板紙…売上高+5.0%、セグメント利益15,974百万円(前期比+28,343百万円)。紙・板紙事業は、新聞用紙、洋紙、包装用紙いずれも販売量は減少したが価格改定で金額は増加。板紙・段ボールは、国内需要が低迷し、輸出も中国をはじめとする国際市場の停滞により販売量が減少したが、国内の価格改定浸透により金額はプラス。
○ホーム&パーソナルケア…売上高+5.1%、セグメント損失△4,087百万円(前期比+8,521百万円)。除菌関連やマスクの販売量は減少したが、価格改定の浸透で金額はプラス。海外事業は、中国では主力のベビーケアが減速し販売金額が減少。ブラジルは価格改定の浸透に加えて付加価値品の販売が増加し、販売金額が増加。損益は、中国での収益悪化の影響で赤字。
○その他…売上高△19.2%、セグメント利益△30.8%。売電事業の外部向け販売減などで減収減益。
25年3月期は、ペットケア事業の規模拡大や衛生用紙の価格改定に取り組むほか、海外事業では市場ニーズに沿った商品の展開と複合事業化を進める。
■北越コーポレーション
〔2024年3月期〕
売上高 297,056 (△1.4%)
営業益 15,267 (△11.7%)
経常益 17,766 (+54.9%)
当期益 8,396 (+0.9%)
〔2025年3月期予想〕
売上高 310,000 (+4.4%)
営業益 17,000 (+11.3%)
経常益 19,000 (+6.9%)
当期益 14,000 (+66.7%)
価格改定効果はあったが、国際的なパルプ価格下落などで減収となり、営業利益も減益。経常利益は、主に持分法による投資利益の改善により増益。当期純利益は、連結子会社の株式一部譲渡に伴う特別損失の計上および関連した法人税等合計の減少があった。
○紙パルプ事業…売上高△2.2%、営業利益△15.0%。パルプ販売価格の下落、原燃料価格の高騰などにより減収減益。品種別では、洋紙は需要減少に加えて新潟工場の落雷と地震による操業停止があり、販売量は減少したが価格改定で増収。板紙も価格改定で増収となったが、販売量は特板、コート白ボール、段原紙が減少し、高板は増加。機能材も増収。パルプは減収。
○パッケージング・紙加工事業…売上高+14.2%、営業利益282百万円(前期比+285百万円)。価格改定と紙容器・包材事業の受注拡大で増収増益。
○その他…売上高+0.4%、営業利益+24.8%。主に木材事業で外部受注が増加し、増収増益。
25年3月期は、原燃料高や国内販売量の減少が予想されるが、パルプ販売価格の回復を見込むほか、輸出事業強化を計画している。
【製紙関連】
■レンゴー
〔2024年3月期〕
売上高 900,791 (+6.5%)
営業益 48,855 (+88.2%)
経常益 47,984 (+67.3%)
当期益 33,025 (+61.7%)
〔2025年3月期予想〕
売上高 1,000,000 (+11.0%)
営業益 50,000 (+2.3%)
経常益 52,000 (+8.4%)
当期益 35,000 (+6.0%)
○板紙・紙加工関連事業…売上高+5.6%、営業利益+144.3%。販売量は減少したが製品価格改定により増収増益。生産量は、板紙製品が△3.8%、段ボールが△2.7%、段ボール箱が△2.1%だった。
○軟包装関連事業…売上高+5.0%、営業利益+59.7%。製品価格改定により増収増益。
○重包装関連事業…売上高△1.6%、営業利益△19.4%。石油化学関連需要の減少により減収減益。
○海外関連事業…売上高+13.7%、営業利益+12.8%。連結子会社の増加などにより増収増益。
○その他の事業…売上高△0.9%、営業利益△12.6%。運送事業の採算悪化などにより減収減益。
25年3月期は、物流費や労務費の上昇、環境対策や労働環境改善のための設備投資に伴う減価償却費の増加が見込まれるが、段ボール、紙器製品の価格改定および連結子会社の増加が業績に寄与すると見込んだ。
株式会社 紙業タイムス社 「Future6/3号」より