=紙パの2022年3月期②=
前号に続き、紙パ関連各社の2022年3月期(21年4月~22年3月)決算を紹介する。以下、連結ベース、単位100万円、%表記は対前年度比。
【製紙】
■中越パルプ工業
〔22年3月期〕
売上高 90,104 (+10.0%)
営業益 2,352 〈△347〉
経常益 3,077 〈△319〉
当期益 1,268 〈△1,052〉
〔23年3月期予想〕
売上高 101,000 (+12.1%)
営業益 1,500 (△36.2%)
経常益 1,700 (△44.8%)
当期益 1,100 (△13.3%)
○紙・パルプ製造事業…売上高+12.2%、営業利益1,301百万円(前年度比+3,451百万円)。新聞用紙は販売量・金額ともに減少。印刷用紙の国内販売は販売量・金額ともに増加し、輸出も増加。包装用紙は自動車関連を中心とした需要の回復基調と輸出強化で販売量・金額ともに増加。特殊紙・板紙・加工品、パルプも販売量・金額ともに増加。
○発電事業…売上高△9.5%、営業利益△54.1%。紙生産量増加に伴う売電量減少や燃料価格上昇により減収減益。
○その他…売上高+11.8%、営業利益+77.3%。
23年3月期は、適正価格の確保、製造工程の効率向上、安定操業による製造コスト圧縮に取り組む。「既存事業の構造転換」・「環境投資・環境ビジネスの推進」を柱とする中計2025の達成を目指す。
■特種東海製紙
〔22年3月期〕
売上高 80,711 (+5.6%)
営業益 4,231 (+31.1%)
経常益 5,733 (△4.0%)
当期益 5,251 (△6.1%)
〔23年3月期予想〕
売上高 87,000 (+7.8%)
営業益 3,100 (△26.7%)
経常益 4,000 (△30.2%)
当期益 3,900 (△25.7%)
需要が改善し、営業利益も原価低減や固定費削減の効果が出た。一方、期後半は原燃料価格の高騰などにより、増益のペースが鈍化。なお、当期純利益が当初予想を上回ったため、期末配当金を前回公表の1株当たり50円から20円増配して70円とする。年間配当は、中間配当の50円とあわせて1株当たり120円となる。
○産業素材事業…売上高+6.0%、営業利益△2.0%。段ボール原紙は国内外向け販売が堅調。クラフト紙も国内向け販売が順調。利益は、水力発電による売電事業が渇水の影響などを受け減益。
○特殊素材事業…売上高+13.5%、営業利益+102.9%。特殊印刷用紙はコロナ禍の影響が大きかった前年に比べて増収。高級印刷用紙は厳しい状況が続いているが、ファンシーペーパーは堅調。特殊機能紙は増収。利益は原価低減で大幅増益。
○生活商品事業…売上高+1.7%、営業利益△31.0%。ペーパータオルは、需要は高水準だが市場への供給量が増加し販売量は減少。トイレットペーパーはほぼ横ばい。ラミネートなどの加工製品は、新規受注の成果もあり、販売量が大幅に増加。利益は原燃料高、固定費増加により減益。
○環境関連事業…売上高△6.8%、営業利益△96.2%。
23年3月期については、販売面では増収を見込んだが、原燃料価格の高騰で特に製紙3事業の限界利益を大幅に圧迫すると予想した。
【製紙関連】
■レンゴー
〔22年3月期〕
売上高 746,926 (+9.7%)
営業益 33,279 (△16.7%)
経常益 36,641 (△15.2%)
当期益 28,188 (△1.4%)
〔23年3月期予想〕
売上高 850,000 (+13.8%)
営業益 35,000 (+5.2%)
経常益 38,000 (+3.7%)
当期益 26,000 (△7.8%)
○板紙・紙加工関連事業…売上高+3.7%、営業利益△20.2%。販売量の増加により増収となったが、原燃料価格の上昇や固定費の増加により減益。板紙製品は景気持ち直しの動きに支えられ、生産量は+7.2%。段ボール製品は食品や通販・宅配向けなどの底堅さに加えて、工業製品、電気・機械器具向けが堅調に推移し、生産量は段ボール、段ボール箱ともに+2.9%
○軟包装関連事業…売上高+12.8%、営業利益△48.1%。連結子会社の増加で増収となったが、原料価格の上昇により減益。
○重包装関連事業…売上高△2.1%、営業利益△22.3%。業務用食品関連の需要減および原料価格の上昇などにより減収減益。
○海外関連事業…売上高+44.0%、営業利益+46.6%。需要の回復で増収増益。
○その他の事業…売上高+4.9%、営業利益△3.9%。
23年3月期予想は、製品価格改定および連結子会社の増加が寄与するものの、原燃料価格高騰によるコスト増を見込んで算定した。
■リンテック
〔22年3月期〕
売上高 256,836 (+8.9%)
営業益 21,584 (+26.7%)
経常益 22,698 (+35.3%)
当期益 16,641 (+45.9%)
〔23年3月期予想〕
売上高 285,000 (+11.0%)
営業益 21,500 (△0.4%)
経常益 21,500 (△5.3%)
当期益 15,500 (△6.9%)
○印刷材・産業工材関連…売上高+14.4%、営業利益1,373百万円(前年度比+1,613百万円)。シール・ラベル用粘着製品は食品、通販関連が増加し粘着紙、粘着フィルムともに堅調。海外は中国、アセアンが好調だったほか米国も買収効果で大きく伸長。ウインドーフィルムや自動車用粘着製品の需要も回復し、装飾用フィルムも好調。
○電子・光学関連…売上高+2.7%、営業利益+27.3%。半導体関連粘着テープと関連装置、積層セラミックコンデンサ関連テープは5G対応スマホやカーエレクトロニクス、パソコン用などの需要増加により好調。光学ディスプレイ関連粘着製品も堅調に推移した。
○洋紙・加工材関連…売上高+5.9%、営業利益△54.6%。洋紙、加工材ともに増収。
23年3月期については、経済の持ち直し継続を期待する一方、サプライチェーンの混乱や国際情勢の緊迫化が見込まれる。原燃料価格や物流コストの上昇が継続し、大きな影響を及ぼすと予想した。
■巴川製紙所
〔22年3月期〕
売上高 32,785 (+6.6%)
営業益 1,982 〈△15〉
経常益 2,310 (約16倍)
当期益 1,650 〈△1,152〉
〔23年3月期予想〕
売上高 33,500 (+2.2%)
営業益 1,000 (△49.6%)
経常益 1,100 (△52.4%)
当期益 1,000 (△39.4%)
半導体関連やトナーが大きく回復したほか、スマホ向け光学フィルムの新規受注が加わり、増収となった。収益認識会計基準適用の影響は1,911百万で、従来基準による売上高だと+12.8%。利益は、コスト削減の進捗や大幅な増収に加え、円安も追い風となったほか、コストアップを最小限にとどめられたことなどから大幅に改善した。
○トナー事業…売上高+20.1%、セグメント利益1,198百万円(前年度比+1,489百万円)。従来基準による売上高は+31.6%。
○電子材料事業…売上高+8.9%、セグメント利益+67.7%。従来基準による売上高は+17.3%。
○機能紙事業…売上高△0.1%、セグメント損失△162百万円(前年度比+208百万円)。従来基準による売上高は+2.3%。
○セキュリティメディア事業…売上高△12.2%、セグメント利益△19.1%。従来基準売上高△11.7%。
○新規開発事業…売上高+0.9%、セグメント損失△438百万円(前年度比△88百万円)。
○その他の事業…売上高+6.0%、セグメント利益+92.8%。
23年3月期は、原燃料高を見込むほか、主力のトナー事業で原材料調達難に加え、製造拠点のある中国・上海地区ロックダウンによる物流網の混乱も発生しているため、一時的な悪化が予想される。
株式会社 紙業タイムス社 「Future6/6号」より