=紙パの第2四半期②=
前号に続き、紙パ関連各社の2023年3月期第2四半期(22年4~9月)決算を紹介する。以下、連結ベース、単位100万円、%表記は特に記載がない限り対前年同期比、〈 〉内は前年同期の実績値。
【製紙】
■王子ホールディングス
〔第2四半期〕
売上高 837,502 (+18.2%)
営業益 40,395 (△36.6%)
経常益 60,232 (△12.5%)
当期益 37,927 (△16.8%)
〔通期予想〕
売上高 1,800,000 (+22.4%)
営業益 105,000 (△12.6%)
経常益 110,000 (△18.6%)
当期益 70,000 (△20.0%)
需要の回復やパルプ市況の上昇、価格修正により増収となった。海外売上高比率は前年同期を6.1ポイント上回る38.5%。営業利益は原燃料価格高騰で減益。経常利益も、外貨建債権債務の評価替えによる為替差益の発生はあったが減益。
○生活産業資材…売上高+13.8%、営業利益△94.1。段ボール原紙・段ボール、白板紙など全体的な需要回復や価格修正により増収。紙おむつは減収だったが家庭紙は堅調。海外事業も増収。
○機能材…売上高+17.7%、営業利益△0.6%。国内事業、海外事業ともに増収。
○資源環境ビジネス…売上高+41.4%、営業利益+24.1%。パルプ事業は増収、エネルギー事業は堅調。海外事業は増収。
○印刷情報メディア…売上高+14.1%、営業損失△2億円(前年同期比△110億円)。新聞用紙は減少傾向が継続、印刷用紙は増収。海外は江蘇王子製紙で増収。
通期予想は、8月公表の業績予想から売上高を上方修正した。修正額は+1,000億円。
■日本製紙
〔第2四半期〕
売上高 550,918 (+8.4%)
営業益 △11,981 〈8,113〉
経常益 △7,376 〈9,696〉
当期益 △22,076 〈2,196〉
〔通期予想〕
売上高 1,100,000 (+5.3%)
営業益 △20,000 〈12,090〉
経常益 △20,000 〈14,490〉
当期益 △25,000 〈1,990〉
主に生活関連事業での売上増や、価格修正により増収となった。一方、増収効果を上回る原燃料価格の高騰で損益は赤字。また、グラフィック用紙需要減の対応策として、秋田工場N1抄紙機の停機(23年6月末)を決めた。これに伴い減損損失32億円を計上している。
○紙・板紙事業…売上高+3.8%、営業損失△9,905百万円(前年同期比△9,755百万円)。価格修正が寄与して増収となったが、販売量は新聞用紙、印刷・情報用紙ともに減少。板紙は増加した。
○生活関連事業…売上高+12.0%、営業損失△5,346百万円(前年同期比△7,118百万円)。家庭紙は長尺トイレ紙やペーパータオルの好調に加えて業務用品の需要が回復し、販売量が増加。液体用紙容器の販売量も増加。溶解パルプと海外事業は価格修正により増収。
○エネルギー事業…売上高+33.7%、営業損失△1,923百万円(前年同期比△3,047百万円)。電力価格の上昇などにより増収。
○木材・建材・土木建設関連事業…売上高+16.9%、営業利益+10.3%。
通期予想は、8月公表の業績予想から変更なし。
■大王製紙
〔第2四半期〕
売上高 308,679 (+4.0%)
営業益 △7,265 〈19,235〉
経常益 △7,792 〈17,688〉
当期益 △8,301 〈11,456〉
〔通期予想〕
売上高 660,000 (+7.8%)
営業益 △14,000 〈37,569〉
経常益 △18,000 〈37,696〉
当期益 △30,000 〈23,721〉
価格改定に取り組んできたがコストアップ分を補いきれず、利益が前年同期を大幅に下回った。最終損益は、9月に発生した子会社のボイラー爆発事故による災害損失費用1,921百万円を特別損失に計上したため赤字幅が大きい。
○紙・板紙…売上高+4.4%、セグメント損失△3,933百万円(前年同期比△16,132百万円)。販売量は、板紙・段ボールは堅調だったが、新聞用紙、グラフィック用紙は減少し、全体の販売量も減少。一方、価格改定により販売金額はプラス。利益は製造コストの上昇で赤字化。
○ホーム&パーソナルケア…売上高+4.3%、セグメント損失△4,552百万円(前年同期比△10,399百万円)。国内事業は販売量、金額ともに減少したが、海外事業は増収。利益は製造コストアップで赤字化。
○その他…売上高△3.3%、セグメント利益+3.0%。
通期予想は、8月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は営業益△17,000、経常益△18,500、当期益△26,000。製造コスト上昇を見込むほか、当期益には前述のボイラー撤去費用や、構造改革費用を特別損失として織り込んだ。大王製紙は、「経験したことのない厳しい経営環境が続くと想定し、製品価格への転嫁を急ぐとともに構造改革を加速させる」と、強い危機感を示している。
■北越コーポレーション
〔第2四半期〕
売上高 136,187 (+7.8%)
営業益 3,997 (△63.0%)
経常益 4,828 (△67.5%)
当期益 1,959 (△87.8%)
〔通期予想〕
売上高 300,000 (+14.7%)
営業益 12,000 (△41.3%)
経常益 8,000 (△72.9%)
当期益 3,000 (△85.9%)
○紙パルプ事業…売上高+8.5%、営業利益△65.8%。国内品の価格改定と輸出品の価格上昇で増収となったが、原燃料価格高騰で減益。
○パッケージング・紙加工事業…売上高△5.2%、営業損失△99百万円(前年同期比△91百万円)。事業譲渡や原材料高で減収減益。
○その他…売上高+9.2%、営業利益+3.7%。主に木材事業で外部受注が増加し増収増益。
通期予想は、5月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は、売上高+20,000、営業益+1,000、経常益△6,000、当期益△7,000。海外市場での紙・パルプ販売価格上昇と国内での価格修正により、売上高は前回予想を上回る見込み。営業益も、海外のパルプ販売事業が順調なため前回予想を上回る見込み。一方、持分法適用関連会社が前回業績予想を下回る見込みとなったため、経常益と当期益は前回予想を下回る見込み。
■中越パルプ工業
〔第2四半期〕
売上高 49,289 (+14.0%)
営業益 1,502 (+35.6%)
経常益 2,542 (+79.8%)
当期益 1,779 (+121.8%)
〔通期予想〕
売上高 106,500 (+18.2%)
営業益 1,300 (△44.7%)
経常益 2,500 (△18.8%)
当期益 1,500 (+18.2%)
販売量の確保とともに、価格修正や円安により売上高は前回予想を上回った。収益面も、コスト削減や棚卸資産の払出により営業益が予想を上回ったほか、円安に伴う為替差益の計上もあり、経常益と当期益が大きく増加した。
○紙・パルプ製造事業…売上高+14.5%、営業利益+62.1%。新聞用紙は販売量・金額ともに減少。印刷用紙は、国内は減少したが輸出でカバーして全体の販売量は増加し、金額も増加。包装用紙は、東南アジアを中心とした需要に支えられ販売量・金額ともに増加。特殊紙・板紙・加工品、パルプも販売量・金額ともに増加。
○発電事業…売上高+16.6%、営業利益+15.6%。
○その他…売上高△9.1%、営業損失△44百万円(前年同期比△89百万円)。文具事業の事業整理と原燃料高により減収減益。
通期予想は5月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は、売上高+5,500、営業益△200、経常益+800、当期益+400。原燃料・薬品価格の高騰や円安により営業益は前回予想を下回る見込みだが、2Qで計上した為替差益により経常益と当期益は上方修正した。
【紙流通】
■日本紙パルプ商事
〔第2四半期〕
売上収益 266,324 (+28.0%)
営業益 9,537 (+51.0%)
経常益 10,273 (+54.2%)
当期益 17,830 (+110.9%)
〔通期予想〕
営業益 19,000 (+35.1%)
経常益 19,000 (+26.2%)
当期益 23,000 (+100.0%)
固定資産の一部売却などにより当期益は大幅増益。
○国内卸売…売上収益+4.0%、経常利益+17.6%。紙の販売量は増加したが、板紙と電子部品関連機能材は減少。価格修正により紙・板紙ともに増収。利益は、人件費などの販管費減少もあり増益。
○海外卸売…売上収益+55.4%、経常利益+298.0%。販売量の増加に加えて、価格修正が浸透し販売価格も上昇。日本からの輸出も販売量・金額ともに上昇。さらに為替換算の影響もあり大幅増収。利益は、増収の影響に加えて特に米国と英国で大幅な増益となった。
○製紙加工…売上収益は+9.8%、経常利益は原燃料高とベトナムでの販売量減少により△19.0%。
○環境原材料…売上収益+35.8%、経常利益+41.9%。
○不動産賃貸…売上収益△15.4%、経常利益△27.2%。
通期予想は、6月に公表した業績予想を上方修正した。修正額(単位100万円)は営業益+5,500、経常益+5,000、当期益+3,500。海外卸売事業の利益の押上げにより、各段階利益が当初予想を大幅に上回る見込み。
株式会社 紙業タイムス社 「Future11/28号」より