新・家庭紙生産設備2018年10月稼働
大王製紙は本誌6月13日号既報の通り、最新鋭の家庭紙生産設備の新設を、10月25日開催の取締役会で正式に決議した。
設置場所は、現在休止中の川之江工場と埼玉県行田市(製品加工工場)で、年産能力は約5万4,000t。ティシュ、トイレットペーパー、キッチンペーパーなどを生産する。稼働時期は2018年10月の予定。川之江工場は、世界最大級の純臨海工場である三島工場に隣接しているので、三島工場から供給されるコスト競争力の高いパルプ・エネルギーを使用できる。また、最も需要の多い首都圏については、行田市に製品加工工場を新設し、クイックデリバリー体制を構築する。
投資額は、当初計画では約210億円だったが、高付加価値品の生産体制強化と首都圏への加工工場新設を計画したため、約240億円に増額となった。設備新設に関する資金は借入金などでの調達を計画しているが、第2次中期事業計画(2015~17年度)で公表した経営目標に変更はない。
同社は近年、高付加価値品の需要伸長に応じてローションティシュや消臭機能をプラスしたトイレットペーパーなどを増産してきた。今回の設備新設により、需要が拡大し多様化する市場ニーズに対応できる体制づくりを進めていく。
CNF高配合の成形体の開発に成功
大王製紙はこのほど、セルロースナノファイバー(=CNF)とパルプ繊維を複合化したCNF高配合の成形体の開発に成功した。
同社が開発したCNF成形体は、CNFの配合率を50~95%まで高め、軽量かつ高強度というCNFの特徴を活かした高性能材料。汎用プラスチック材料との物性比較では、CNF配合率80%の場合で(厚さ100~500μm)、引張弾性率と引張強度が約5倍(23℃で比較)となった。さらに、高温領域(90℃)では汎用プラスチック材料の約20倍の弾性率と約8倍の強度を示し、熱特性に優れていることが確認できた。こうした特性から、これまでプラスチック材料が利用できなかった高強度用途や耐熱性を必要とするものなどへの展開が期待される。同社では、自動車部材、建材、家電筐体、電子基板、スポーツ・レジャー用品など、多岐にわたる用途展開を見込んでいる。現在サンプル提供の準備を進めており、来年3月には開始する予定。
東北大学大学院との共同研究成果を発表
また大王製紙は、東北大学大学院と共同で進めている「摩擦特性を考慮したティシュの評価」の研究により、ティシュの肌触り感向上には、保湿ティシュでは水分量、非保湿ティシュでは圧縮剛性が極めて有効なパラメータであることを新たに実証。研究結果は、10月8日に開催された日本設計工学会2016年度秋季研究発表講演会で発表された。
同社はかねて、東北大学大学院工学研究科の堀切川教授らと共同研究を行っており、昨秋の日本設計工学会研究発表講演会では、ティシュの摩擦係数低減が肌触り感の向上に極めて有効であることを発表している。
株式会社 紙業タイムス社 「Future11/14号」より