日本製紙は、繊維幅がシングルナノサイズのTEMPO酸化セルロースナノファイバー（＝CNF）を、同じく木材成分由来の天然ゴム中に均一分散することで弾性率と燃費性能を両立させたゴムマスターバッチ『Cellenpia Elas』（セレンピアエラス）を開発し、サンプル提供を開始した。
　伸縮性や耐摩耗適性に優れ、かつ柔らかい特性を持つ天然ゴムは、タイヤ、ホース、ベルトなどに使用され、世界で年間約1,400万t生産されている。ゴムは通常、カーボンブラックなどを配合して強度を高めるが、近年は化石燃料由来素材であるカーボンブラックの代わりに、再生可能な天然素材のCNFをゴム添加材として使用する研究が盛んに行われている。
　ゴムとCNFの混合物に関しては、日本製紙は2019年に住友ゴム工業、三菱ケミカルと共同で、シングルナノサイズの水分散体であるTEMPO酸化CNFを配合したタイヤ用ゴムを開発し、住友ゴム工業の高性能タイヤ「エナセーブ NEXTⅢ」に採用された。また現在は、NEDOの助成事業プロジェクトに参画し、CNF配合エラストマー製造プロセスのコスト低減に取り組んでいる。そして今回、CNFとゴムを均一分散し、マスターバッチの形で提供する『Cellenpia Elas』を開発した。
　セレンピアエラスは、直接ゴムとドライ混練ができ、ハンドリングよくゴム製品の物性を向上できる。カーボンブラックを充填材とした天然ゴムに対して、セレンピアエラスは弾性率（硬さの指標）を同等とした場合にtanδ（損失正接）が約20％低下し、タイヤやゴムベルト用途で使用した場合に燃費性能の向上が期待できる。
　日本製紙は現在、TEMPO酸化CNFを産業用途向けに、カルボキシメチル化CNFを食品、化粧品用途向けに、ビジネスベースで生産・販売している。また、富士工場ではCNF強化樹脂『セレンピアプラス』を実証生産しており、サンプル提供を開始した。これらに加えて、CNF配合天然ゴム『セレンピアエラス』のサンプル供給体制を整えることで、CNFの市場創出を加速させる。

ブルボン、カネカと共同で環境配慮型紙包材を開発
　日本製紙がブルボンおよびカネカと共同で開発したカネカ生分解性バイオポリマー『Green Planet』を使用したヒートシール紙が、ブルボン菓子製品の外装で採用された。
　採用された包材は、日本製紙が2020年に上市したヒートシール紙『ラミナ』で培った塗工技術と、カネカが提供する『Green Planet』のエマルジョン化技術により誕生した、新しい環境配慮型紙包材。日本製紙は今後、生産・販売体制を整備し、2023年春から『ラミナ』の新ラインアップとして加える予定。開発品の特徴は次の通り。
①ヒートシール塗工層で主に使用されているGreen Planetは、カネカが開発した100％植物由来の生分解性バイオポリマーで、幅広い環境下で優れた生分解性を持つ。
②循環型資源である「紙」が基材のため、環境適合性に優れる。
③従来のフィルムラミネート品と比較し、石油由来プラスチックの使用量が大幅に削減できることに加え、ラミネート工程の省略が図れる。
④食品の二次包装や日用雑貨・文具など、多用途で検討可能。
 

株式会社　紙業タイムス社　「Future12/26号」より