=紙パの第3四半期③=
前号に続き、紙パルプ関連各社の2022年3月期第3四半期(21年4~12月)決算を紹介する。以下、連結ベース、単位100万円、%表記は対前年同期比、〈 〉内は前年同期の実績値。
【製紙】
■三菱製紙
〔第3四半期〕
売上高 131,927 (+10.9%)
営業益 192 〈△2,626〉
経常益 1,200 〈△2,226〉
当期益 442 〈△3,240〉
〔通期予想〕
売上高 175,000 (+7.8%)
営業益 1,000 〈△1,770〉
経常益 2,000 〈△636〉
当期益 500 〈△2,532〉
国内外で外出やイベントの制限が緩和され、緩やかに需要の回復が見られた。損益面は、生産販売量の回復や固定費削減により改善した。なお、電気絶縁紙事業を王子エフテックスに譲渡し、譲渡益として840百万円を特別利益に計上したほか、休止設備の減損処理で492百万円を特損計上している。
○紙・パルプ事業…売上高+7.2%、営業損失△2,291百万円(前年同期比△666百万円)。国内は、前年に比べると印刷用紙を中心に販売量、金額ともに一定程度回復した。輸出は販売量、金額ともに増加。欧州子会社、市販パルプも販売量、金額ともに増加。一方、国内、欧州ともに原燃料価格急騰でコスト面が影響を受け、増収減益となった。
○イメージング事業…売上高+27.3%、営業利益810百万円(前年同期比+2,828百万円)。内外ともに写真感光材料やIJ用紙の需要が回復。また、業務用IJ用紙、エレクトロニクス関連製品の新規開拓が進み、増収増益となった。
○機能材事業…売上高+22.5%、営業利益+65.0%。エアフィルター、水処理膜支持体などが堅調で、化粧板原紙やテープ原紙の需要も引き続き旺盛。生産性向上によるコストダウン効果もあった。
○倉庫・運輸事業…売上高+5.3%、営業利益+54.5%。
通期予想は21年11月公表の業績予想から変更なし。
■特種東海製紙
〔第3四半期〕
売上高 59,794 (+5.9%)
営業益 3,366 (+67.9%)
経常益 4,728 (+18.2%)
当期益 4,610 (△37.8%)
〔通期予想〕
売上高 81,000 (+6.0%)
営業益 4,000 (+23.9%)
経常益 5,000 (△16.3%)
当期益 4,000 (△28.5%)
事業環境が大幅に改善して増収となった。営業益も、全般的な販売量の回復に加え、原価低減や固定費削減で大幅増益。ただし、原燃料価格高騰などの先行不透明感から、増益のペースは緩やかなものとなっている。
○産業素材事業…売上高+5.8%、営業利益+4.3%。段ボール原紙は、日本東海インダストリアルペーパーサプライを通じて国内外向け販売が堅調。クラフト紙も国内向け販売が順調に推移した。
○特殊素材事業…売上高+17.3%、営業利益+210.8%。特殊印刷用紙はコロナ影響が大きかった前年同期と比べると増収。特殊機能紙は海外向け一部製品の需要が旺盛で増収。利益は原価低減で大幅増益。
○生活商品事業…売上高+1.1%、営業利益△10.5%。ペーパータオルは、需要は高水準だが市場への供給量が増加し、販売量は若干減少。トイレ紙の販売量は減少。ラミネートなどの加工製品は、経済の回復基調に加えて新規受注の成果もあり、販売量が大幅に増加。
○環境関連事業…売上高△10.6%、営業損失△151百万円(前年同期比△67百万円)。
通期予想は、21年5月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は、営業益+400、当期益+400。海外向け一部製品を含む特殊機能紙が好調なほか、経費削減と原価改善により、営業益と当期益が当初想定を上回る見込み。
【紙流通】
■日本紙パルプ商事
〔第3四半期〕
売上収益 321,941
営業益 10,362 (+48.5%)
経常益 10,918 (+53.7%)
当期益 8,536 (+198.4%)
〔通期予想〕
営業益 13,500 (+51.8%)
経常益 14,000 (+56.5%)
当期益 10,000 (+174.0%)
コロナ禍で連結子会社RADMS Paper Limitedの収益が悪化し、同社に係るのれんの減損損失1,779百万円を特別損失に計上したが、1Qで退職給付制度改定益5,969百万円を特別利益に計上したため、当期益は大幅増益となっている。なお、収益認識会計基準等の適用に伴い、売上高を売上収益に変更しており、これにより売上収益は57,017百万円減少した。
○国内卸売…売上収益△30.0%(130,411百万円。収益認識会計基準等適用による影響は△63,732百万円)。紙は緩やかな回復が継続して販売量が増加。板紙も通販関連や加工食品向けが堅調で販売量が増加。経常利益は、販売増と持分法投資利益の増加により+32.1%。
○海外卸売…売上収益+19.1%(140,219百万円。同影響額△1,964百万円)。需要の回復、販売単価上昇、日本からの輸出増により増収。経常利益も大幅に改善して2,907百万円(前年同期の約116倍)。
○製紙加工…売上収益+89.8%(31,679百万円。同影響額+14,247百万円)。経常利益△11.0%。
○環境原材料…売上収益△23.9%(15,662百万円。同影響額△5,568百万円)。経常利益+87.4%。
○不動産賃貸…売上収益は+1.6%(3,971百万円。同影響なし)、経常利益+7.7%。
通期予想は、21年5月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は、営業益+3,700、経常益+4,700、当期益+600。海外卸売事業の収益増加などを踏まえて上方修正した。
■国際紙パルプ商事
〔第3四半期〕
売上高 410,343
営業益 5,995
経常益 6,379
当期益 5,415
〔通期予想〕
売上高 555,000
営業益 9,000
経常益 8,500
当期益 7,200
収益認識会計基準等の適用に伴い、前年同期比を記載していない。
○国内拠点紙パルプ等卸売事業…売上高191,311百万円、営業利益+44.5%。紙は、グラフィック用紙を中心に一部需要の回復が見られたが、その効果は限定的。紙器用板紙は若干回復。段ボール原紙は飲料用包装資材向けが堅調なほか、中国を中心とした輸出増などにより増収。古紙の販売量は横ばい。
○海外拠点紙パルプ等卸売事業…売上高218,105百万円、営業利益4,156百万円(前年同期比+15,612百万円)。地域戦略、事業ポートフォリオ改革・利益構造改革が奏功し、売上高・利益ともに大幅増。地域別では、欧州は大幅改善、豪州は業績急拡大、中国は回復基調、ASEANも業績拡大が進捗。
○不動産賃貸事業…売上高△1.0%、営業利益△73.4%。
通期予想は21年8月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は、売上高+10,000、営業益+3,100、経常益+3,500、当期益+3,000。主に欧州や豪州での業績伸長により、前回予想を上回る見通しとなった。
■平和紙業
〔第3四半期〕
売上高 11,509 (+8.3%)
営業益 117 〈△83〉
経常益 111 〈△88〉
当期益 70 〈△87〉
〔通期予想〕
売上高 16,500 (+12.9%)
営業益 94 (+975.1%)
経常益 142 〈△19〉
当期益 93 〈△34〉
新たに需要が見込める領域にフォーカスを当てた提案・販売活動を強化した結果、増収となった。なお、1Qから収益認識会計基準等を適用しており、前年同期との比較は、新会計方針を過去の全期間に遡及適用して比較・分析した。
○和洋紙卸売業…売上高+8.3%、営業利益97百万円(前年同期比+199百万円)。ファンシーペーパーは、コロナ禍での需要減少は続いているが出版、紙製品用途や東アジア向け輸出は堅調で、また菓子パッケージ向けが持ち直し、売上高は+9.2%。ファインボードは、インバウンドや各種イベントの需要減少は継続するも、カレンダー用途、高級パッケージや土産用パッケージ向けが徐々に回復し、売上高は+9.6%。高級印刷紙も商業印刷物や紙製品需要が持ち直し、売上高+8.1%。ベーシックペーパーは商印用途が若干上向き、また紙製品や出版、各種パッケージ向けも安定して売上高は+4.5%。技術紙は、耐水系機能紙や医療用パッケージ用途が堅調なほか、衆院選ポスター用の合成紙の販売が上乗せとなり、売上高+3.3%。その他(家庭紙、紙加工品、製紙関連資材等)は売上高+13.8%。
○不動産賃貸業…売上高+3.2%、営業利益+29.2%。
通期予想は、21年5月公表の業績予想から変更なし。
■共同紙販ホールディングス
〔第3四半期〕
売上高 9,690 (+0.2%)
営業益 △54 〈△61〉
経常益 △45 〈△44〉
当期益 △67 〈△66〉
〔通期予想〕
売上高 13,500 (+2.1%)
営業益 50 〈4〉
経常益 70 (+312.3%)
当期益 50 (+27.0%)
主力の印刷用紙の販売は、イベント関連やチラシ類の復調により前年を上回ったが、情報用紙の販売は、デジタル化進展に伴う帳票類の需要減などにより販売重量・金額ともに前年を下回った。セグメント別の売上高は、洋紙卸売事業が+0.5%の9,636百万円、物流事業が+4.9%の213百万円、不動産賃貸事業が△35.9%の58百万円。通期予想は、21年5月公表の業績予想から変更なし。
株式会社 紙業タイムス社 「Future3/7号」より