=紙パの第3四半期②=
前号に続き、紙パ関連各社の2023年3月期第3四半期(22年4~12月)決算を紹介する。以下、連結ベース、単位100万円、%表記は特に記載がない限り対前年同期比、〈 〉内は前年同期の実績値。
【製紙】
■日本製紙
〔第3四半期〕
売上高 849,400 (+9.7%)
営業益 △22,766 〈10,423〉
経常益 △19,541 〈11,285〉
当期益 △25,700 〈2,387〉
〔通期予想〕
売上高 1,150,000 (+10.0%)
営業益 △24,000 〈12,090〉
経常益 △23,000 〈14,490〉
当期益 △48,000 〈1,990〉
主に生活関連事業での売上増や、価格修正により増収となった。一方、増収効果を上回る原燃料価格の高騰や円安で損益は赤字。
○紙・板紙事業…売上高+5.1%、営業損失△21,975百万円(前年同期比△19,754百万円)。価格修正が寄与して増収となったが、新聞用紙、印刷・情報用紙の国内販売量は減少、板紙は前年並み。
○生活関連事業…売上高+14.0%、営業損失△6,619百万円(前年同期比△9,851百万円)。家庭紙は長尺トイレ紙やペーパータオルの好調に加えて宿泊向けなどが回復し、販売量が増加。液体用紙容器の販売量も増加。溶解パルプと海外事業は価格修正などにより増収。
○エネルギー事業…売上高+41.8%、営業損失△2,243百万円(前年同期比△3,535百万円)。電力価格の上昇などにより増収。
○木材・建材・土木建設関連事業…売上高+11.8%、営業利益+13.5%。
通期予想は、2022年8月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は売上高+50,000、営業益△4,000、経常益△3,000、当期益△23,000。売上高は生活関連事業の増加や価格修正で前回予想を上回る見込みだが、利益面は、製造コストが想定を上回り、また価格修正の遅れもあったため、赤字幅が膨らむ見通し。これらに加え、海外連結子会社のグラフィック用紙事業撤退(詳細23頁)に伴い、約200億円の特別損失を4Qで計上するため当期益は大幅下方修正。
■北越コーポレーション
〔第3四半期〕
売上高 215,702 (+11.2%)
営業益 9,604 (△41.7%)
経常益 7,059 (△69.5%)
当期益 3,923 (△82.6%)
〔通期予想〕
売上高 300,000 (+14.7%)
営業益 12,000 (△41.3%)
経常益 8,000 (△72.9%)
当期益 3,000 (△85.9%)
○紙パルプ事業…売上高+12.1%、営業利益△44.0%。国内品の価格改定と輸出品の価格上昇で増収となったが、原燃料価格高騰で減益。
○パッケージング・紙加工事業…売上高△1.1%、営業利益+359.2%(70百万円)。中国のゼロコロナ政策の影響で減収となったが、各種コストダウン効果により増益。
○その他…売上高+6.1%、営業利益△9.7%。主に木材事業で外部受注が増加し増収となったが、運送・倉庫業のコストアップで減益。
通期予想は、2022年11月公表の業績予想から変更なし。
■三菱製紙
〔第3四半期〕
売上高 154,522 (+17.1%)
営業益 △1,325 〈192〉
経常益 653 (△45.6%)
当期益 △4,818 〈442〉
〔通期予想〕
売上高 210,000 (+15.4%)
営業益 500 〈△248〉
経常益 2,500 (+27.3%)
当期益 △2,000 〈1,096〉
価格改定により増収となったが、原料価格高騰で営業損失となった。経常損益は為替差益の計上などにより黒字を維持。当期純損益の赤字化は、ドイツでの事業売却に伴い事業譲渡損失引当金繰入額約32億円が発生したことなどによる。
○紙素材事業…売上高+18.6%、営業損失△4,258百万円(前年同期比△2,106百万円)。国内は、販売量は減少したが金額は増加。輸出も販売量は減少したが金額は為替効果もあり増加。ドイツ事業も販売量は減少したが金額は増加。以上のように価格改定で増収となったが、原燃料価格高騰のコスト増を補いきれず減益。
○機能商品事業…売上高+19.7%、営業利益+22.4%。水処理膜支持体、化粧板原紙、テープ原紙の販売は増加。フィルター、壁紙用裏打紙は前年割れ。エレクトロニクス関連製品はバッテリーセパレータや電子工業材料の海外向けが増加し、前年を上回った。イメージングメディア関連は販売量が減少したが金額は前年並み。全体としては、原燃料高の影響は受けたものの、価格改定や成長商品の拡販により増収増益。
通期予想は、2022年11月公表の業績予想を修正した。修正額(単位100万円)は売上高△5,000、営業益△2,000、経常益△1,000、当期益△3,500。コスト上昇に加え、中国のゼロコロナ政策の影響による輸出の低迷、価格改定の遅れなどから3Qの経営成績が想定を下回ったことを踏まえ、下方修正した。最終損益は、前述のドイツでの事業売却に伴う特別損失が影響。
■特種東海製紙
〔第3四半期〕
売上高 63,104 (+5.5%)
営業益 1,397 (△58.5%)
経常益 3,171 (△32.9%)
当期益 3,680 (△20.2%)
〔通期予想〕
売上高 87,000 (+7.8%)
営業益 1,600 (△62.2%)
経常益 4,000 (△30.2%)
当期益 3,900 (△25.7%)
○産業素材事業…売上高+11.9%、営業利益△39.5%。主力の段ボール原紙とクラフト紙は販売が堅調。台風15号の影響で赤松水力発電所の運転が停止したため電力事業は減収減益。
○特殊素材事業…売上高△2.9%、営業利益△64.3%。特殊印刷用紙は価格改定が進みつつあることやパッケージ用途の需要回復により増収。特殊機能紙は電子化の進展などにより減収。利益は原燃料の価格上昇で減益。
○生活商品事業…売上高+2.7%、営業利益△97.8%。ペーパータオルと、ラミネート等加工品の売上げは前年並み。トイレットペーパーは販売量の増加と価格改定で増収。利益は原燃料高で減益。
○環境関連事業…売上高+10.5%、営業利益71百万円(前年同期比+222百万円)。
通期予想は、2022年11月公表の業績予想から営業益を修正した。修正額は+300百万円。価格改定が浸透しつつあることに加え、販売量が堅調に推移しているため上方修正した。経常益と当期益は、持分法による投資利益を見直したことなどにより据置きとした。
【紙流通】
■日本紙パルプ商事
〔第3四半期〕
売上収益 421,854 (+31.0%)
営業益 16,338 (+57.7%)
経常益 17,186 (+57.4%)
当期益 21,934 (+156.9%)
〔通期予想〕
営業益 19,000 (+35.1%)
経常益 19,000 (+26.2%)
当期益 23,000 (+100.0%)
固定資産の一部売却などにより当期益は大幅増益。
○国内卸売…売上収益+4.2%、経常利益+19.7%。紙の販売量は前年並みだったが、板紙と電子部品関連機能材は減少。価格修正により紙・板紙ともに増収。利益は人件費などの販管費減少もあり増益。
○海外卸売…売上収益+60.9%、経常利益+259.8%。需要回復に加えて、価格修正が浸透し販売金額が増加。日本からの輸出も、中国のゼロコロナ政策の影響は見られたものの、板紙の販売量が増加するとともに紙・板紙の販売価格が上昇。また為替換算の影響もあり大幅増収。利益は、増収の影響に加えて特に米国と英国で大幅増益。
○製紙加工…売上収益は+12.7%。インドネシアの段ボール事業と国内再生家庭紙製造事業で販売量が増加したことと、販売価格上昇により増収。経常利益は原燃料高とベトナムでの販売量減少により△21.6%。
○環境原材料…売上収益+36.7%、経常利益+30.7%。
○不動産賃貸…売上収益△19.4%、経常利益△21.7%。
通期予想は、2022年11月公表の業績予想から変更なし。
株式会社 紙業タイムス社 「Future3/13号」より