海外情報トピックス
中国;ナインドラゴン 北海・荊州の大規模増産計画 非塗工上質紙の新マシン稼働 中国最大の紙板紙メーカー、ナインドラゴン(Nine Dragons)は、湖北省の荊州工場と広西チワン族自治区の北海工場で新しい非塗工上質紙の大型マシンを稼働予定。荊州工場では3月末に合計60万トン、北海工場では6月末に70万トンの生産能力を持つマシンが稼働する。この新マシンの稼働により、中国の印刷用紙市場の供給過剰がさらに悪化する懸念があります。 市場では、春節前後に各メーカーが長めの停機を行ったことで需給バランスが改善し、パルプ価格の底打ちに伴い2月に約200元の値上げが行われた。しかし、需要は低調で、市況の回復は遅く、価格修正はユーザーに受け入れられていない状況。市場価格の下方圧力が続く懸念がある。 中国;山東晨鳴紙業グループ 2工場でマシンが再稼働(コート紙及び高級板紙) 山東晨鳴紙業は、財政悪化と過剰生産の影響で、昨年11月に生産能力の70%以上を停止していたが、3月中旬に山東省寿光工場(コート紙マシン)と江西省南昌工場(コートアイボリー)を生産再開した。南昌工場は昨年12月に一時再開したものの、すぐに停止していた。また湖北省黄岡工場のパルプ生産は継続中で、吉林省吉林工場と広東省湛江工場は依然停止している。 インド;ITC社 Century Pulp & Paperの買収 インドの複合事業体企業グループ、ITC Ltd.は、Aditya Birla Real Estate Ltd(ABREL)から紙パルプ事業のCentury Pulp & Paper(CPP)を約349.8億インドルピー(約4.1億ドル)で買収することで合意した。この買収で、ITCはインド北部Uttarakhand州LalkuanにあるCPPの工場を含め、年産48万トンの生産設備を獲得する。ITCは南インドで約100万トンの板紙事業中心に展開、CPPの買収で印刷用紙、衛生用紙部門を加え、事業規模の拡大とポートフォリオの多様化を図る。衛生用ティッシュ紙分野への参入は初めて。 インド;中国産輸入化粧板原紙に対するアンチダンピング課税中間見直しに結論 インド商業産業省は、2021年12月に中国産輸入化粧板原紙に対するアンチダンピング課税を導入し、5年間の適用期限を2026年末とし現在運用中。この課税の適用実態につき、2024年3月以降中間期調査を開始、2023年4月から翌年3月の期間に付きレビューを実施した。その結果、最大手メーカーのKingdecor(Zhejiang)社に対し、課税額が従来の$116/mtから$542/mtに見直した。Shandong Boxing Ouhua Specialty/Zibo OU-Mu社には$110/mt、その他のすべてのメーカーには$542/mtが従来通り課されることとなった。対象の化粧板原紙は米坪40-130gsm、HS Codeは48059100および48022090。中国製化粧板原紙に関しては、欧州委員会(EC)もダンピングの疑いで調査を行ない、該当メーカーに対し31~34.9%の暫定税率を課す決定を下している。
北米市況
[新聞用紙] 1月から2月の新聞用紙は、関税の導入を前にカナダからの供給が増え、米国内の荷動きも好調であった。当初米国は、カナダに対し25%の追加関税導入を予定したが、4月上旬に90日間の保留となった。USMCA(米・カナダ・メキシコ3ヶ国協定)もあり、現状これら3か国間の紙板紙の取引は、実質ゼロ関税扱いとなっており、市場の不安感は一時的に緩和されている。関税実施に備えて、一時カナダと米国のメーカーは値上げの動きも見せたが、関税措置の保留により、値上げは棚上げとなっている。 [上質紙] 1月以降出荷分に対し、メーカー各社は5-8%(約$60)の値上げを発表したが、2月に入り、約$30の値上げが受け入れられ、3月は横ばいで推移した。相互関税発動を前に、2-3月の荷動きは堅調で、特に1-2月の輸入量は前年比57%増の15万トンとなった。しかし、関税措置発動の保留により、輸入コピーでは値下げによる発注確保の動きも見られるなど、市況への混乱も懸念されている。 [コート紙] 1-2月の北米の上質コート紙の需要(見かけの消費)は前年比▲4.4%減となった。関税措置による先行き不安から、北米メーカーの出荷は前年比▲7.7%減、輸入も同1.5%増に留まるなど低調な動きとなった。2月以降の契約分に対し、大手メーカーは$50の値上げを発表、3月末までに$25-50が受け入れられた。北米市場のコート紙は、輸入紙への依存度が高く、今後の関税措置の動向次第で、市況への影響が大きく左右されると予想される。 [中質紙] 北米の中質紙生産の80%以上はカナダからのもので、カナダからの供給状況は米国の市況に大きな影響を与える。カナダ品は現状実質ゼロ関税であり、米国市場ではカナダ品が欧州品よりも有利になると予想されるため、比較的安定した市況推移が見込まれる。1-2月は関税措置発動を意識した荷動きもあり好調であった。新聞用紙同様、カナダメーカーからは値上げの動きがあったが、関税措置保留で値上げは様子見となっている。 [段原紙] 段原紙は昨年度2度の値上げ($80-100)があり、今年2月も$40の値上げとなった。段ボールの1-2月の荷動きは低調で、3月も相互関税の発動が近づく中、原紙の発注には慎重な姿勢が見られた。また1-2月のKLBの輸出は前年比▲10%減となり、特に米国と関税の応酬が続く中国向けが▲38%の激減となった。段原紙は北米からは純輸出アイテムで、今後、関税の動向による世界レベルでの貨物の流れの変化、北米からの段原紙の輸出の動向の注視が必要である。
欧州市況
[新聞用紙] 多くの契約期間が3か月または6か月であり、3月度の価格に変化は見られない。新聞用紙メーカーの稼働率は90%近くにまで改善しているが、原料古紙、電力価格の高騰で、一部の工場では操業停止を余儀なくされている。第2四半期の価格交渉では、メーカーは8-10%の値上げを提示している。米国での関税問題が影響し、カナダのメーカーから積極的なオファーが見受けられる。 [印刷用紙] 上質紙は3月で概ね€10-程度下落となった。景気の低迷と米国の関税措置の影響から、欧州市場にも不透明感が出ており、市況は軟化が加速することが懸念されている。Burgo/Sappi等の大手メーカーが4月からの価格引き上げを発表している。また、ポルトガルのNavigator/Setubal工場が、上質紙(年産18万㌧)からクラフト紙への転抄の計画を明らかにした。 上質コート紙の3月価格は横ばいで推移した。生産コストの上昇、長引く需要の低迷で、メーカーの採算の改善が求められ、Lectaが4月から6-8%の値上げを発表した。 [段原紙] TLBは2月に主要市場で€80-程度値上げ、3月は安定している。 他市場(イタリア・スペイン等)では3月に€30-50程度の値上げをした。 古紙価格高騰でSaicaなどが4月以降再値上げを発表した。 KLBはTLBの値上げを受け3月から€80-の値上げをした。 北米からのKLB供給は関税問題でユーザーに不安と警戒感がある。
中国・香港市況
[印刷用紙] 中国市場における印刷用紙市場は、3月に一部の大手メーカーが値上げ(+200元/㌧程度)を発表し、価格上昇の兆しが見られたが、月後半になると、パルプの在庫販売価格に軟化の兆しが出始め、需要も価格を下支えできるほどの力強さはないため、製品価格上昇への意向が持続できるかが不透明な状況となった。上質紙ではナインドラゴンの新しい上質紙マシンの稼働が近づき、市況の軟化が懸念される。 香港市場では、チェンミン紙業の昨年末からの操業停止の影響で、各社の値上げが行われてきたが、旧正月前後の市場低迷により、市場への影響は極めて限定的となっている。春先の本来の需要期にもかかわらず、荷動きは低調で、加えて米中間の報復関税の影響で、大手印刷会社を中心に影響が増大している。 [段原紙ほか板紙] 中国市場では、段原紙市況は低迷が続いている。原料古紙の価格も下落傾向にあることから、メーカーはユーザー側からの値下げの圧力への対応を余儀なくされている。採算悪化で原紙の値上げは急務であるが、需要が圧倒的に低迷しており、少なくとも価格の維持を図るべく模索している。米中間の関税の応酬が激化しており、この先さらに値下げ圧力が強まることが懸念される。 香港市場の箱用白板紙は、アイボリーは年末以降も引き続き値上げが画策されてきたが、春節を跨いで低調な需要が回復せず、増産の連続による供給過剰で市況に改善の兆しは見られない。 白板紙からアイボリー等への切り替えが進んでおり、需要も大幅に縮小している。
【統計】2月「出荷・輸出入・国内需要状況」(日本)
2025年2月の紙・板紙合計輸出は16万268トン(前年比5.8%減)、輸入は6万7,909トン(同8.1%増)となった。国内需要は146万3,441トン(同3.5%減)となった。 国内需要の減少が貿易バランスに動きを示した。
【統計】2月 米国輸入状況
米国の2025年2月の紙・板紙の輸入は合計54万5,342トン(前年比3.5%減)、金額は6憶146万7千ドル(同2.2%減)となった。そのうち印刷用紙合計は21万9,335トン(同4.4%減)、金額は2億4,145万2千ドル(同5.7%減)となった。 同1-2月累計は紙・板紙合計で121万4,015トン(同3.7%増)、133億3,397万6千ドル(同4.1%増)となった。
米国関税関連報道
「米国による追加関税及び各国との相互関税の問題は、紙・板紙にどの程度インパクトをもってくるのか、非常に不透明。カナダの製品に、現下は追加分の関税は免れているとはいえ、状況によっては米国のメーカーも、特定の品目で米国内の工場の稼働率を高めたり、カナダからの輸入するコスト増よりも自分たちのコストを抑えて、市場シェアを拡大するような動きも出てくるかもしれない。」
「一方、アジアの紙板紙市場では、韓国メーカーは、依然として北米への販売に暫く注力するのか、韓国国内需要増への“その辺の状況に応じて”対応していくということかと思われる。米国との間で報復関税が続く中国メーカーは、依然としてアジア各地で増販を図る(図らざるを得ない)だろうことから、市況は依然軟調に推移するだろう。アジアでも特に主要市場への影響が少ない地域、あるいはオセアニアなどに、上質紙、白板紙が攻勢をかけると考えられる。パルプ(特に米国産が殆どのフラッフパルプ)は、この関税の応酬でどうするか等が注目される。」
米国は1月30日、2月中にもコンピュータ部品、薬品、鉄、アルミニウム、胴、石油および天然ガスの輸入に対して関税を課すと発表した。これは先立って公表したカナダ、メキシコに対する25%、中国の10%の追加関税とは別のものになる。トランプ大統領はカナダ、メキシコ、中国からのフェンタニルの流入が止まらない限り課税を続けるとしている。(2/1)
ホワイトハウスのスポークスパーソンKush Desai氏は、カナダおよび他の相手国からの鉄およびアルミニウム輸入に対し、例外、除外なく25%の追加関税を課すと発表した。(3/12)
カナダは3月13日より206億ドルにのぼる米国製品に対し25%の追加関税を課すとした。それには鉄、アルミニウムのほかコンピュータ部品、スポーツ器具などが含まれている。EUは4月1日より米国産ウィスキー、オートバイ、モーターボートに対し50%の追加関税の策定を発表した。また、4月半ばから課す米国の菓子、鶏肉をはじめとする食品などの関税リストを策定した。(3/13)
トランプ大統領は4月2日から自動車、薬品、半導体製品などに対し相互関税を課すると宣言した。しかしながら、政府関係者はこれらの関税が4月2日に課されるかは流動的だと述べている。(3/24)
トランプ大統領は4月9日より100か国以上に対し第2次大戦以降最高率となる関税を発動した。
ベトナム、ラオス、カンボジアなど多くの東南アジア諸国は45%以上の税率で最も深刻な打撃をうけた。中国は84%の上乗せですべての中国製品の輸入には104%の関税率となる。
また、トランプ大統領2期以前の関税を含めた中国品の平均は125%となる。トランプチームは交渉しだいで関税の引き下げに応じるとしているが、今のところ何も達成していない。(4/9)
トランプ大統領は4月10日、およそ100か国に対する高関税を後退させた。10%の基礎関税は有効としながら、相互関税となる上乗せについては90日間猶予した。ただし、中国に対する125%の関税は「即時発動する」とした。(4/10)
数々のエコノミストは、トランプ大統領が国際的な関税の実効を延期したことにより、世界のリーダーは厳しい交渉を迫られると述べている。
二次トランプ政権による中国への関税は145%に増加し、最終的には減少の場合もあるが、すでに5,820万ドルにのぼる両国間の貿易の一部は停止の動きがでている。(4/11)
日本紙類輸出組合・日本紙類輸入組合 紙類海外動向レポートより