日本製紙と日本コカ・コーラは、8月1日付で「持続可能な社会の構築に関する協働基本合意書」を締結した。
両社は2013年秋に「森林の持つ多面的価値の保全及び地域の持続的発展に関する協働基本合意書」を締結し、今年3月まで、森林の多面的価値の保全と地域の持続的発展に協働してきた。新たな基本合意書では、これまでの取組みを踏まえてより発展的に、両社の活動対象分野を「資源の循環・保全」、「地域社会の発展」、「多様性の尊重」の3分野に拡大し、30年までの約10年間、持続可能な社会の実現に資する取組みを具体的に進めていく。取組みの骨子(概要)は次の通り。
■資源の循環・保全
①森林の保全(水源涵養機能の保全)…日本製紙の菅沼社有林の一部で森林の水源涵養力を維持・向上する森林保全活動を実施中。
②飲料容器を含む紙素材の利活用…紙素材を活かすパッケージを検討するほか、紙コップの回収リサイクルについても協働の可能性を模索していく。
③CO2排出削減…協働で取り組める分野を特定し、協力しながら実施していく。21年度は、日本製紙が間伐促進プロジェクトで創出したJ-クレジットを活用し、今秋に予定しているコカ・コーラシステム従業員らによる海岸清掃活動で、参加者1名につき1tのCO2をオフセット(上限1,000t)してCO2排出削減の啓発を推進することを検討している。
■地域社会の発展
従来の森林保全・水源保全活動に加えて、気候変動や自然災害リスクの低減、生物多様性の維持などを目的としたグリーンインフラ活動を検討し実施。
■多様性の尊重
女性の活躍推進、LGBTQに対する理解促進など、多様性を学ぶ機会となる従業員向けセミナーを開催し、啓発を図る。
チップ船の荷役クレーン自動運転の試験に成功
日本製紙、相浦機械、日本郵船の3社は、相浦機械が開発している世界初の木材チップ専用船向けクレーン自動運転装置の実荷役試験を、8月下旬に揚げ地の苫小牧港で行い、効果を確認した。これにより、木材チップ荷役クレーン運転者の負担軽減を目指す。
チップ専用船に積載している木材チップは、本船に搭載されている専用クレーンで荷揚げする。荷揚げ作業は、本船の貨物倉に積まれた木材チップを、船上クレーン装置の一部である専用グラブでつかみ、巻き上げ、上甲板に設置されているホッパー(仮受け皿)に投入する繰り返し作業。荷揚げ作業のためのクレーン操作は、本船乗組員ではなく、陸上側から派遣された専門免許所有者が行うが、クレーン運転者は通常、昼夜交代で作業し、一つの港で全貨物を荷揚げする場合、約3日間にわたって連続で作業する。
相浦機械は、クレーン運転者の負荷を軽減するため、国土交通省の「先進船舶導入等計画認定制度」のもと、クレーン自動運転の研究を進めていた。そこに、クレーン運転者の手配者である日本製紙と、以前から同装置の開発に協力してきた日本郵船が加わり、今回の実荷役試験が実現した。
クレーン自動運転装置は、船上クレーンの運転室内に自動運転操作盤を実装し、あらかじめ定められた数種類の定型荷役動作を運転者が選択することで自動荷揚げ作業が実施される仕組み。今回の実荷役試験は、日本製紙と日本郵船の長期輸送契約に従事する木材チップ専用船Growth Ringで行われ、クレーン運転者立ち合いのもと、約4時間、木材チップのクレーン荷揚げ作業を自動運転で実施した。その結果、初期目標である貨物の7割程度の自動荷役が可能であることを確認し、立ち会ったクレーン運転者からは、「誰でも運転できて使いやすい」「自動運転でも安全に荷役ができた」などの感想が聞かれたという。
相浦機械は今後、試験で明らかになった自動システムの有効性を踏まえて製品化を進め、日本製紙は各チップ船への自動システム導入を検討する。また日本郵船は、クレーン運転者の負担を軽減する技術の開発に協力していく。
株式会社 紙業タイムス社 「Future10/4号」より